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暁月の従魔士  作者: まぼろし
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4-30 中盤戦

アリたちに混ざってムカデの群れが迫る。

虫が嫌いな人が見たら卒倒しそうな絵面だ。


大人の背丈ほどもある全長で、幅は太ももくらいある。

アンジェさんから事前に聞いていた通りのサイズ。

これは厄介だ。


もっと大きければかえって戦いやすいのだけど、いちいち武器を振り下ろさないといけないので疲労がたまる。

サソリ型ルルの下や横を抜けてくるのも問題だ。


(ルルは対ムカデ用戦闘形態に変更!コウモリの対処はそのまま継続!他はアリとムカデの対処じゃ!ハイセ殿は真ん中へ!)

(は、はいです!)


ルルが巨大な鉄の板を戦闘腕に取り付ける。

対ムカデを想定して事前に用意していたものだ。

鉄板は内側に湾曲していて、それを盾にして魔物の行軍をせき止める。

対ムカデ用のラッセル車みたいなものだ。

細かい戦況の変化には対応できなくなるが、少なくともムカデが下から抜けてくることはない。


だが、正面は防げても、壁面を直接上ってくるアリやムカデは直接突き落とさなくてはならない。

その対策は、アリの匂い消しにつかった灌木の粉末だ。

ムカデは灌木の匂いを嫌うらしく、ある程度は接近を防ぐことができるらしい。

現実の世界でもムカデ除けとしてミントやヒノキが使われると聞いたことがある。

似たようなものなのだろう。


ただ、匂い消しの粉末でもムカデの接近を完全に防げるわけではない。

遠回りしてくるムカデにはそもそも効かないし、近くまでたどり着いたムカデは匂いなど無視してこちらに攻撃してくる。

ムカデは牙に毒をもっているらしいので、一撃でも喰らってしまえば即座にハイセちゃんの治療を受ける必要がある。


さらにアリは粉末など気にせず崖をよじ登ってくる。

近寄って来たものから下方のネットに突き落としていくが、徐々に魔物たちの包囲網が形成されていく。


ハイセちゃんが壁面を背にする形になり、その周りを囲む陣形で虫たちに対処する。

だが次第にこちらまでたどり着く虫たちが増えていく。

俺とリズがムカデの牙を受けてしまい、ハイセちゃんの治療を受けた。


そこでさらに魔物たちの動きに変化があった。

ユーミリアさんが石柱で遮断したはずの通路を抜けて、下層エリアのアリが集まってきたのだ。


(挟撃される。まずいぞタクト!)


アスナイさんが危険を知らせてくる。

おかしい。いくらなんでもこんなに早くユーミリアさんがつくった石柱を破壊できるはずがない。

だが事実は事実。

力を温存している場合ではなくなった。


(アンジェ殿は後方を遮断!ユーミリア殿は前方の群れを!魔法も解禁じゃ!)

(了解ですよ!)

(こっちも了解だよー。お姉さん達が頼れるってところを見せてあげよう!)


カイト爺の指示に従って二人が動きだす。

ボス戦に備えて魔法は温存しておきたかったが仕方がない。

アンジェさんは後方の壁に木の実付の矢を打ち込み、真横に成長させた木の枝で壁をつくりだす。

ただの壁ではない。

アンジェさんの操作で枝をしならせて、向かってくるアリを突き落としている。


一方でユーミリアさんはサソリ型ルルの上に飛び乗ると、右手に炎を纏わせた。

【魔闘士】の固有スキル、【纏魔】だ。


「そおれっ!!!」


ユーミリアさんが空に向かって拳を突き出すと、その手から炎の柱が飛び出して前方のアリとムカデを次々に焼き払っていく。

一瞬にして、30メートルほど向こうまでの群れが焼失した。

遠距離攻撃までできるのか。凄まじい威力だ。

熱風が逆巻いてこちらにまで届いてくる。

熱風に煽られて、下のネットまで落ちていくアリもいる。


(ユーミリア姉ちゃんすげえ・・・。)


カブが感嘆の声を上げる。

全く同感。

普段からローガンさんやカイゼルさんと渡り合うだけのことはある。


だが魔物たちはそれでも止まらない。

炭と化した仲間を乗り越えて、迫りくる。

三度にわたってユーミリアさんが炎を放つが止まることはない。

さらに崖を登ってくるムカデもまっすぐにこちら向かい始めた。

仲間を殺された怒りで、匂い消しの粉末も効かなくなったのか。

後方から迫るアリたちも徐々に数を増していく。


(これ以上この場に留まるのはかえって不利じゃな。次の接敵と同時に移動を開始じゃ!カブとアンジェ殿、ハイセ殿はルルの上へ!行くぞ!)


ルルが動きだし、ラッセル車の要領で前方の魔物を谷底に突き落としていく。

その後ろを追いかけながら、残った油壷をネットの上に投げ落とす。

ネットの上はもう魔物であふれかえっている。


(ラタ、戻れ!網に火をかけるぞ!全員炎と煙に備えよ、じゃが足を止めるな!)

(ぴうう!)


カイト爺が虫取りネットに火を放つと、それはたちまちのうちに燃え広がり、アンジェさんのつくりだした木の枝ごと魔物たちを焼いていく。


濛々と立ち込める煙の中、ただルルの後を追って走る。

焼け残った木の幹すら砕いて、ルルは進み続ける。

壁面にへばり付いていた魔物が煙に巻かれてボドボドと落ちてくるのを避けながら、ひたすら進む。

登坂路の終わりが見えてきたところで、ついに女王アリに付き従っていた近衛アリの一団が動きだした。

ネットをすり抜けて下に落ちていたムカデたちもまだかなりの数が残っている。


(このまま一気に駆け下りる!ルーネン、出番じゃ!)

(やっとね!待ちくたびれたわよ!)


ルルの上に乗っていたアンジェさんが植木鉢に魔力を流す。

ルーネンが緑色に輝く少女の姿となり、谷底に向かって飛び降りる。


(全員耳を塞げ!)


「いっくわよ!ゥ・・・・キャアアアアアアアアアアッ!!!!!」


ルーネンの絶叫が縦穴に響き渡る。

マンドラゴラの絶叫は聞く者の精神を冒し、麻痺を(もたら)す効果があるのだそうだ。

震動が虫たちにも伝わる。

現実世界の虫の多くは足を使って音を拾うらしいが、それは異世界でも同じなのか。

生き残っていた虫たちの動きが鈍る。

切り札のひとつではあったが、使うならここだろう。


動きを止めた虫たちに向けて、ルーネンは頭から伸ばした枝を鞭のようにふるって攻撃を開始する。


(あはははっ!思いっきり行くわよ!)

(俺も先に行くぞ!露払いは任せておけ!)

(あ!ずりいぞおっさん!)

(私も行きます。)


ルーネンに触発されたのか、まだ結構な高さがあるというのにローガンさんとアスナイさん、続いてリズが飛び降りる。

ローガンさんは魔力の腕を使って、アスナイさんとリズは【身体強化】をかけて基底部に飛び降りると、混乱するアリとムカデの群れに襲い掛かった。


(アスは相変わらずだねえ。それじゃあ私もお先にー。)

(ユ、ユーミリアさんまで!?仕方ない、僕たちも行こう。)

(了解じゃ!)

(ぴうう!)


ユーミリアさんまでもが飛び降りてしまったので、後に続いて飛び降りる。

彼らのような身体能力もスキルもないので、カイト爺のパラシュートとラタの風魔法頼みだ。


未だ焼け残っている虫の残骸ごと、先行した4人が残ったアリとムカデを駆逐していく。

特にすさまじいのはローガンさんとユーミリアさんだ。

ローガンさんは魔石の粉を纏わせた巨大な魔力腕を振り回して、群れごと吹き飛ばしている。

回復薬の効果でローガンさんも魔力量が増えているのだろう。

ユーミリアさんも魔法による範囲攻撃で、群れを焼き殺す。


二人とも、どれだけ魔力量を増やしてるんだ?



遅れて地面に降り立ち、彼らの攻撃から漏れた魔物を狩っていく。

だが近衛アリの一団はやはり他のアリより硬く、速く、強い。

よく見れば、背に茶色い結晶を生やしたムカデたちもいる。

それもムカデの上位種なのだろう。

一匹ごとが相当な強さだ。


魔法に対する抵抗力も高いらしく、ローガンさんとユーミリアさんの範囲攻撃でもかなりの数が残っている。

攻撃力も高い。一撃でも喰らえば大ケガだろう。

カイト爺の指示の下、そのアリとムカデたちを誘導するように立ち回り、少しずつ女王たちから引き離していく。


女王たちはまだ動かない。

ありがたい。

ここで乱戦になるのがこちらにとっては一番マズイ。


さらに遅れて、アンジェさんたちを乗せたルルが基底部に降り立つ。

同時に、アンジェさんが女王たちと群れとを分断するように木の檻を形成していく。

やった。これでなんとかなる。


そして。

俺たちはついに女王アリ、女王ムカデと向かい合う。

下層部のアリたちが予想より早く最下層に合流するというアクシデントはあったけれど、なんとか当初の予定していた通り、群れと女王を分断することに成功した。

だが、休む暇はない。


(さあ、ここからが本番じゃ。皆、覚悟はよいか?行くぞ!)


カイト爺の号令の下、俺たちは一斉に駆け出した。


お読みいただきありがとうございます!

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