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王立博物館ガイド3

「魔王はどんな存在か、ちょっと聞いてみたいんですが」


 魔王。その存在はもちろん、異世界転生アニメや小説によってなんとなくのイメージをもっている。

 この世界の魔王がすでに、僕より前に転生した勇者とその仲間たちによって3年前に倒されたことも知ってはいる。

 けれど、それ以上のことを僕はまだ知らないでいた。せっかくだから博物館に向かう前にちょっと聞いてみたい。


「魔王はどんな存在か、か……」


 記憶の糸を手繰るように、しばらく天井を見つめるリタリ先輩。


「基本的には臭かったな。あと左利きだった」


 真っ先に伝える情報それかよ!

 そりゃ魔の王なんだから臭そうだけど。


「左利きがそんなに印象的だったの?」


「そりゃあ印象的だったぞ。魔王城の魔物や魔族は全部左利きだった。どの引き出しを開けても左利き用のハサミしかなかったしな」

「魔族もハサミを使うのね。噛みちぎったり引きちぎったりしてくれないとイメージがちがう」


「私もそう思ったが魔族の人も丁寧に切りたい時があるんだろう。袋とじあける時とか」


 なんだこの会話は。リアルな魔王情報なのかもしれないがさすがにどうでもいいぞ。


「もうちょっと歴史みたいなことを知りたいんですけど。そもそも魔王というのはどういう存在なのか、とか」


「それなら、ヒロキが持ってきた資料に基本的なことがつづられているではないか」


~~勇者と魔王の歴史~~


《天上の時代》


古代魔法王国よりも遡ること遥か遠い昔 神話にて語られし世界創造の時代


美しき天上の世には、後の世の勇者となる光の者、後の世の魔王となる闇の者、左利きでも右利きでもない者の三者が平和に共存していた


悠久に等しい時が流れようやく 後に人々が住まう大地が創られた 天上の世と大地の間は雲によって遮られた


《個性の時代 あるいは右利きの時代》


三者にはわずかずつ個性や考え方の違いが生じ始めた


後の世の勇者となる光の者は「女なんて汚い。やっぱり男の気持ちがわかるのは男だけだ」と考えた


後の世に魔王となる闇の者は誰よりもはやく女を作り調子に乗った


左利きでも右利きでもない者は「最近左曲がりなんだ」と言った 以後1000年にわたり「右利きの者」と呼ばれた


《確執の時代》


個性はすれ違い、特に闇の者はお互いの考えの違いを許容せず、確執の時代をむかえた


闇の者は太古の人々が住まう地上へと去った 女を知って調子に乗ったため「誰にも頼らない。ひとりの力で生きていける」と考えたのだ


闇の者の体はひとりでに新たなる闇の者を生み出していった 闇の者が闇の者を生み その増え方はネズミを思わせた


光の者と右利きの者はときおり地上に降り 生まれたての小さな闇の者をぷちぷち潰した


《天上人最期の時代》


闇の者、魔族と魔物を生み、その役割を終えて塵となった 塵は小高い丘となった


右利きの者 闇の者を葬れる伝説の武具を作り、これを岩に突き刺し封印の呪文を唱えた


封印の呪文を聞きつけた光の者は「我が子孫だけがこれを抜いて勇者と名乗れるようにしてくれ」と頼んだ


右利きの者「先に言えよ」と言いつつもこれを承諾 呪文を唱えなおした この一件は後の神話学者たちにより「世界最古の出来レース」と呼ばれた


光の者 己が子孫が勇者となる確約をとりつけたことに安堵し その身を光と還した 光は天上の果てをつらぬき隣り合う世界にまで至った


右利きの者「左曲がりが直った」と言い 左利きの者と呼び名を改め死亡 亡骸はいろんな虫に食われた


《人の世の時代》


闇の者の子孫 魔王として覚醒す 闇の者であった塵の丘に魔王城を建造 ダンジョンや魔王軍の整備が始まる

光の者の子孫 勇者として地球に誕生 6年目の大学生活を迎えるとともに交通量調査のバイトを始める


魔王、肉体の衰えと自分自身の頭皮の匂いに気が付き壁を蹴って嘆く

勇者、バイト10年目にしてうっかりトラックに跳ねられ死亡 転生する


勇者、仲間たちとともに伝説の武具をとり魔王を倒す

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