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アカネ、怒られる

 アカネとユズハは教師に呼ばれ職員室へとやって来た。職員室の中には十数人の教師がおり、談話していた。


「こちらへどうぞ。」


 そう言って二人は職員室の奥にある、生徒指導室と書かれた教室へと案内された。


「座って下さい。」

「失礼します。」

「それでは早速ですが、何故遅れたのか理由を説明してください。」


 そう言って教師は机をトントンと指で叩きながら聞いて来た。その姿には苛立ちが見える。

 そんな様子にユズハは緊張しながらも答えた。


「実は、海外から帰って来たばかりで日付を1日勘違いしておりまして。今日が入学式だと思っていたんです。」

「入学式だったとしても遅刻ですけどまぁいいでしょう。理由はわかりました。」


 そう言うと教師はため息を吐き話を続けた。


「良いですか?ここは形式上とは言え防衛大学です。遊びの場では有りません。海外から帰国したばかりでも、入学書類は事前に受け取っていたでしょう?確認不足です。そこは反省して下さい。」


 実際にはその書類に不備があったのだが、情報屋の話をするわけにもいかずアカネとユズハはグッと言葉を飲み込む。


「アカネさん。貴方もですよ。先ほどから話を聞いているんですか。返事をしなさい。」


 アカネの態度が気に障ったのだろう。それもそのはず、先ほどから受け答えは全てユズハが行なっているのだ。


「ちゃんと聞いてますよ。」

「返事は、はいです。貴方たちは今日から一応とは言え軍属なのです。返事はしっかりしなさい。」

「はい。」

「ただでさえ世間の冒険者に対するイメージは悪いのです。ここを卒業すれば冒険者になるのでしょう?少しでもそう言ったイメージを払拭する人物になっていただきたいものです。」

「いや、先生。俺は冒険者には‥」

「清水准尉です。」

「え?」

「貴方たちが来たときには自己紹介を終えていたので名前を知らないでしょう?それに先生などと呼ばれるのはむず痒いのです。」

「分かりました。清水准尉。」

「よろしい。それで、アカネさんは冒険者になる気は無さそうな口ぶりでしたが、それでも社会に出るのであれば最低限の礼儀は必要でしょう?」


 アカネは押し黙る。常識的には清水准尉の言っている言葉は事実なのだがその()()外にいるアカネはなんと答えたものか悩んでしまう。


 そしてその隣のユズハは気が気ではなかった。昨日アカネと打ち解けたとは言えまだまだ浅い仲であり、どこにアカネの地雷が潜んでいるのか測りかねているのだ。


(清水准尉!ちょっと!その通りですけど!相手は超一級魔術師なんですよ!)


 なんて言えるわけもないことを心の中で叫ぶ。


 そんな時だった。隣の職員室が騒がしくなったかと思うと指導室の扉が乱暴に蹴り破られたのだ。

 とっさにユズハは腰の愛銃に手をかけ振り返る。そこにいたのは長身の美女が立っていた。スラリと伸びた長い足を強調するようなタイトな革ズボンに、Tシャツ。その上に真っ赤でド派手な革ジャンを羽織っていた。


 突然の登場に清水准尉は勿論のことアカネすらも呆然としていた。


 その女性はボソリと何かを呟くと目にも止まらぬ速さでユズハを通り過ぎ隣に座るアカネを()()()()()。そのまま倒れたアカネの上に乗り組み伏せる。

 ユズハは自分の後ろでアカネの上に馬乗りになった女に銃口を向けるがアカネはそれを手で制した。


 誰よりも早く口を開いたのは清水准尉だった。


「栗原先輩!何をしているんですか!」


 清水准尉は立ち上がりそう叫んだ。

 その言葉に対する返答はなく栗原と呼ばれた女は突然アカネに抱きついた。

 そしてそのままワンワンと泣き始めたのだ。大の大人が泣き喚く姿に誰もアクションを起こすことができなかった。




 暫くの間泣き続けていた栗原が泣き止むのを待ち、ユズハと清水の二人がかりでなんとか引き剥がすとソファーに座らせた。


「とりあえず説明してもらっても良いですか?」


 ユズハはアカネに質問する。質問よりも詰問と言ったほうが正しいような口ぶりで、顔は笑顔だが額には青筋が立っている。


 アカネはどう説明したもんかとさらに頭を抱えるのだった。

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