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ユズハ、正体を知る

「安倍晴明って()()有名な?」

「そうじゃの。その嬢ちゃんの言う安倍晴明で間違いないはずじゃ。」



 ユズハは、理解が追いつかないのかへー。とかほー。とか感嘆符しか出てこない人形になってしまっている。


「まぁこのことを知っとるのは今世界で三人くらいじゃから嬢ちゃんもくれぐれも他言しないようにな。」


 シリウスは何でもないちょっとした秘密のように口元に人差し指を当てそういった。

 ユズハはそんな、国家機密以上の話を好きな人秘密にしててねぐらいのテンションで言われても困惑してしまうのだが、突っ込みたい気持ちをグッと我慢する。


「ほっほっほ。聞きたいことはたくさんあるじゃろうが、まずはクラスに顔を出しに行ったらどうじゃ?今日から授業が始まっておるからの。」

「「は?」」


 シリウスの一言にユズハとアカネの声が重なる。


「なんじゃ。知らんかったのか。今日から授業じゃよ。入学式は昨日じゃ。アカネのことじゃから、入学式なんぞめんどくさくて来てないだけかと思っておったぞ。」


 シリウスはいつの間にか元の好々爺に戻っておりほっほっほと笑い声を上げる。

 ユズハとアカネが呆然としていると、ユズハの端末にメールの通知音がした。慌ててユズハがその内容を確認すると大きなため息をついた。そしてそのまま画面をアカネに見せた。


「えっと。ケイスからか。なになに。時差のことを忘れていた?日付に誤り有りだって?いや。おせぇよ。」


 アカネもユズハと同じかそれ以上のため息を吐いた。


「どうやら原因も判明したようじゃの。お前たち姉弟の教科書は今日中に家に届けさせよう。」


「後話すことはあったかの」と独り言を言いながらシリウスは腕組をしながら考える。

 ユズハはケイスに怒りの返信を送っているようで顔がかなり怖いことになっており、アカネはそれを苦笑いしながら見つめた。


「あ、そうじゃそうじゃ。お前たちに一番大事なことをいうのを忘れとった。ここの生徒のほとんどは魔法を知らん。魔法適性のある者を集めただけじゃからの。中には元々魔法を使う者もいるようじゃが基本的には知らんと考えてくれ。魔法の講義が始まるまではむやみに魔法を使わんようにな。国から監査のために送り込まれた奴もいるようじゃしな。」

「わかった。ご忠告痛み入るぜ。じじい。」

「アカネが何のためにここに来たのかわからんが、お前の好きなように生きろ。ワシはできるだけお前のサポートをするからの。」

「おいおい。耄碌したんじゃねえだろうな。そんなやつだったか?」

「ほっほっほ。まったくいつまでたっても口の減らんクソガキじゃの。」


 アカネは最後のやりとりに満足したように笑みを浮かべた。

 立ち上がると「じゃあな。」と一言だけ言うとユズハを立ち上がらせ、部屋を後にした。

 慌てて追従するユズハは部屋を出るときにシリウスにペコリとお辞儀をしてアカネの後をおった。


 ―――――――


 シリウスは一人残された部屋で天井を見つめる。そして先程までのアカネとのやり取りを思い出し笑う。

 この五年間、アカネの動向はある程度知っていた。しかし人との関わりがこんなにも人格を変えるのかと、まだまだ世界には自分の及びも付かないものがあるのだと。

 シリウスは何もない空間に手を伸ばし次元の裂け目を作るとそこから一枚のファイルを取り出した。

 その中に収められているのは、アカネと関わりのある人物たちの履歴書だ。どこから手に入れたのかは分からないが一人一人の経歴が事細かに記されている。

 一番最後の紙を取り出すとシリウスはニヒルな笑みを浮かべると、ファイルをまた次元の裂け目に戻した。


「藤堂柚葉。アカネめ。また面白い人物とか関わりを持ったじゃねえか。つまらん学長生活かと思ったがたのしくなりそうだな。」


 シリウスの大きな笑い声はその部屋から漏れることはなかった。



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