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ユズハノオモイ

 昔から私は道具だった。

 家族団欒に期待しなくなったのはいつからだろう。


「ユズハ。お前は藤堂家再興の柱になるんだ。私はその為にお前を作った」

「はい。お父様」


 父はいつも私に藤堂家の為に命を使えと教え、私はそれに従い続けた。

 その事に疑問を抱いたのはいつからだっただろう?

 壊れた藤堂家の中にあって母だけはまともだった。


「ユズハ。あなたは自分の人生を歩むのよ。何がしたい?何になりたい?夢を持ちなさい。藤堂家の中だけが世界じゃないのよ」


 小さい頃の私には母の言葉が信じられなかった。

 カゴの中の鳥。屋敷の中だけがこの世の全てだった私が母の言葉を理解した時には、すでに母は藤堂家から追い出されていた。


「仕方ない。しばらくユズハは外に出そう。有原家の学院にでも行かせるか。あそこなら余計な事は教えないだろうしな」


 そうして私は高校生にして初めて外の世界に触れた。

 そこは本当に初めて見るモノばかりだった。この世の中にはこんなにも沢山の人がいて、様々な考え方が有るなんて思いもしなかった。

 勉強に関してはそれまで実家で最高の環境で教わっていたので難なくこなせた。

 しかし人間関係だけはそうは行かなかった。

 初めて外の常識で生きてる人達と関わりを持った時私は苦しかった。


 先のある人生


 みんなが将来の夢を話す中私だけ未来がなかった。家の為に作られた私にはどうしようもなく羨ましかった。

 いじめられたりはしなかったけど、次第に人と距離を取り関わりを持たなくなっていった。

 そんな私に転機が訪れたのは3年生になった時だった。


「なんか、諦めた顔してるけど早くない?私達まだ18だよ?」


 転校生としてやって来たその子は私を無理矢理外の世界に連れ出した。

 元気にしてるだろうか?最後にもう一度ありがとうって言いたかったな。


 学校を卒業と同時に私は逃げた。今まで純粋に信じていたことが普通じゃなかったと知ったらもう戻れなかった。

 幸い魔導士としてフリーで活動してお金には困らなかった。そこでケイスさんに拾ってもらって、アカネ君に出会った。

 そう思えばアカネ君あの子に似てたな。嫌な過去を次第に考えなくなって。たった三ヶ月だったけど楽しかったな。神様がくれた休日って言うのかな?

 だからこそ皆んなには迷惑をかけたくなかった。黙って飛び出してごめんね。

 お世話になったから。好きになっちゃったから。

 だからこそ私は黙って一人で家に戻った。

 やっぱり柵からは抜け出せないね。逃げれたつもりでも思ってたより強い繋がりだったみたい。

 父は帰って来た私にやっと藤堂家の自覚が出来たかなんて言ってたけどそんな事のためじゃない。

 最後くらいは自分の為に。家の為なんかじゃなく私の意思で帰って来たかった。

 何を言っても実家だし、私の生まれた家だったから。


 皆んなに迷惑をかけない為に私は自分を殺す。


 水の巫女としての役目を果たす為に。

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