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僕は踏まれたい~踏まれるほどに強くなる~  作者: 怪ジーン
一章 踏まれたい養成所時代
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03 入所式とリック

 リックとの最初の出会いは、養成所での入所式。


 入社式(そこ)に出席しているということは、タイヤーがラーナシア養成所に合格しているということで。


 筋力測定以外に試験は二つあり、残っていたのは魔法測定とスキルの鑑定。


 しかし、魔法に関しては誰もがどんぐりの背比べで、タイヤーが抜きん出て魔法の素質があるわけではない。

 他の受験生も同様で、種火を起こす、飲み水を出す、洗濯物がよく乾くそよ風を出すといった生活で扱う程度のもの。

 この世界では、この程度の魔法は誰でも扱えるものであり、それ以上の魔法となると、扱えるというだけでかなり重宝されていた。


 つまりはタイヤーが合格出来た要因は魔法ではない。


 そうなると残すは最後の試験であるスキルの鑑定のみ。


 スキルの鑑定結果から自分のスキルの名前が判明したタイヤーは、最初、合格出来ないものと考えていた。


 それはタイヤーのスキルの名を見た若い男性の試験官から言われた心無い言葉。



「スキル名は“麦”ね。聞いたことないな、農作業系のスキルか? 兎に角残念だったね、これじゃ合格出来ないよ。キミ(・・)才能無いね(・・・・・)



 スキルの鑑定の時、暗幕を張られた薄暗い部屋で、口元を布で隠した老婆と対面した時に、



「どんなスキルが望みだい?」



 と尋ねられ、タイヤーはその場でしばらく考えると──仲間を助けれるほどの強力な力、皆と協力して成し遂げられる力を──と、明るい未来を夢見た若者らしい素直な答えを出した。


 にもかかわらず、才能が無いの一言で片付けられてしまい、自分のスキルが役に立たないものだと決めつけられてしまう。


 将来を夢見て、希望に溢れる若者に送るような言葉ではなく、タイヤーのショックは計り知れない。

 試験後、自分がどうやって帰宅したのか覚えていないほどであった。


 ところが、数日してラーナシア養成所のある首都から少し南方にあるタイヤーの住む小さな集落であるスタンプ村に一通の郵便が届く。


 それはタイヤーの合格通知であった。


 郵便を持ってきた母親と七つ年の離れた妹のルカと一緒にタイヤーは、手放しで喜んだ。

 この時ばかりは、筋力測定も魔法測定もスキルの鑑定ですら、ボロクソに言われたタイヤーが何故合格出来たのかなど、タイヤー自身考えていなかった。



◇◇◇



 そして一ヶ月が経過する。


 準備を終えたタイヤーは、これから一年もの間、寮に入らなければならない。大好きな母親や妹のルカと、そして村の村長をしている寡黙な父親に見送られて、タイヤーは村をあとにする。


 タイヤーの住むスタンプ村からは、街道を北へ歩いて半日程度の距離に、養成所のある首都ラーナスはある。


 首都に到着したタイヤーは、自分の村にある木造の建物と違って石煉瓦造りで出来た道や建物を眺めながら、歩いていた。


 どんよりとした曇り空が、先行きを不安にさせていた。翌日の入所式に備え前日入りしたタイヤーは、安い宿で一泊することに。

 翌朝、目覚めてカーテンを開き空を見ると、明るい未来を示すように晴れ渡っており、タイヤーの心も同時に晴れ渡る。 


 赤い色した煉瓦造りの建物、その前にはとても広いグラウンドに多くの人が集まっていた。ラーナシア養成所に到着したタイヤーは、関係者と思われる女性にすぐに入所式が始まると言われて、グラウンド内の中央へと向かう。


 ──あ、あの子。重量挙げで僕に向かって岩を投げつけた子だ。それに一緒にいるのは、持久走の時の──


 フラフラとタイヤーの足は、二人の方へ向かうも途中で教官に捕まり「整列しろ!」と怒られてしまった。


 残念がるタイヤーであったが、ふと、気になることがあり自分を捕まえた教官に尋ねることにした。

 それは、タイヤーに対して「キミ、才能無いね」と言い放った教官の存在である。


 養成所(ここ)に来てタイヤーは自然とあの教官を探すも見つからなかったのだ。



「ああ、あいつか。あいつならクビになったよ。何せ受験生に対して、まだ合否も出ていないというのに、勝手に無理だとか、才能無いとか受験生に言っていたようでな。苦情が沢山来ていて責任を取らされて……あれ、もしかして……君もか?」



 タイヤーは釈然としない気持ちを抑え、教官に向かって小さく頷いて肯定する。



「よく入所式に来てくれたね。ショックを受けた者の中には心が折れて合格も拒否した者もいるというのに」

「夢……夢があるから」



 俯き加減だったタイヤーは、顔を上げ真っ直ぐに教官を見据える。そんなタイヤーのやる気に満ちた眼差しを受け、教官が何度もウンウンと頷き肩を叩いて励ますのだが、タイヤーの心には一本のトゲが刺さったままだった。



◇◇◇



 ラーナシア養成所の入所式が始まり、タイヤーのすぐ後ろにならんだ人物が大きな欠伸するのが聴こえてきた。



「退屈だなー。なぁ、キミ?」

「そうだね、教官の紹介されても、実際僕らが関わるのって一部だけだしね」



 燦々と降り注ぐ日の光、真っ青な空とまさに入所日和であったが、確かに眠気を誘う陽気でもあった。

 背後から声をかけられたタイヤーは、少し体をひねり話しかけて来た人物を見る。


 自分とそう年齢の変わらない男性。さらさらとした茶色の長い髪を後ろに一つに束ね、タイヤーより頭一つ背丈の大きな男性は、よっぽど退屈なのかキョロキョロと首を動かしていた。



「うーん、可愛い娘は多いけど、どれも年齢がなぁ」

「そうだなぁ、たしかに女子は大体同年代みたいだし、年上は少なそうだ」



 男性は女性を物色しているようで、タイヤーはこの時、この男が色香漂う年頃の女性が好みなのだろうと思っていた。

 ところが男性は「えっ!?」とすっとんきょうな声を上げる。おかしな事を言ってしまったのかと「えっ!?」と同じようにタイヤーも声を上げた。



「ああ、そうか。いや、違う違う。二桁なんて論外だよ。はぁ、養成所は年齢問わずってあったから期待したけど、やっぱりいないなぁ……一桁の幼女」

「ようじょ? 君、その年で子供がいるの!?」



 茶髪の男性は、一瞬目をぱちくりさせて急に笑い始める。



「はっはっは、ようじょ違いだよ。ところでキミには、十歳未満の妹さんとかは居ないかい?」

「……イマセンヨ」

「分かりやすいね。目が泳いだよ。ね、今度紹介してよ」

「絶対いやだ!」


 

 男性はタイヤーの黒目が不自然に動くのを見逃さなかった。


 タイヤーの肩を揉みながら執拗に妹の容姿を尋ねてくるこの男性(ロリコン)こそ、リック・ベーカー(ロリコン)であった。


 そしてリックの自らの性癖を包み隠さないオープンな性格による一言が後々タイヤーのスキルの発動方法の発見に役立つのであった。

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