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僕は踏まれたい~踏まれるほどに強くなる~  作者: 怪ジーン
四章 ユーラシア教国へ
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07 時空眼

 ユーラシア教国の首都アーマイルを目指しているタイヤー一行は、足踏みをしていた。


 突如として目の前に現れたのは一匹の虎型の魔物、グレートサーベル。

両前足の異様に伸びた鋭い爪は、一本、一本が、タイヤーの持つ剣の刀身ほどもある。真っ黒な体毛に、赤い瞳が不気味に光る。動きも素早く、タイヤー達は防戦を強いられていた。



「エルっ!!」

「だ、大丈夫。大剣で防げたわ! それより、厄介なのはあの巨体よ。体重乗せて攻撃してくるから、想像以上に重い一撃よ」



 大剣を盾にして防ぐも、その手は痺れていた。


 タイヤーも参戦したいが今はこの場から動けない。馬に載せられたモブカや、ミュオを守らなければならない為であった。


 なので今はエルとフローラの二人で対処しているが、この手の相性は二人にとってすこぶる悪い。

一対一で対応するなら、エルやフローラでも出来なくはないが、如何せん、少しでも隙を見せるとグレートサーベルはタイヤーや馬を襲おうとしてくる。



「しつこいです!」



 前足の一撃を躱して懐へと入り込んだフローラは空気を大きく吸い込み、息を止めた。


 脇腹目掛けてフローラの拳が突き刺さる。


 しかし、フローラはスキルも発動させず、一撃だけ与えると飛び退いた。



「どうしたの、フローラ?」

「駄目だよ、あれだけ高さがあると斜め上に突き出す形になるもの。うまく力が伝わらないの」



 拳を突き立てた際、体を伸ばす形になる。背丈が元々低いフローラの悩みでもあった。



「じゃあ、あたしがやるしかないわね──っ!!」



 そうはさせまいと、グレートサーベルは体を預けてエルへと突進してくる。間一髪躱すことの出来た二人は、グレートサーベルの左右に別れるも、絶好の機会が訪れた。


 躱されたグレートサーベルの頭が少し低くなったのだ。



「いくわよ、フローラ!!」

「うん、エルちゃん!!」



 二人は呼吸を合わせた。エルは首を斬り落とす勢いで大きく大剣を振りかぶり、フローラも拳では駄目だと、胸を大きく揺らし、パステルカラーの水色の下着が丸見えになるほど大きく足を開き、下から顎目掛けて蹴りあげた。


 グギャアアアアアアッ! と、奇声を上げてグレートサーベルは後退する。



「くっ! やっぱりスキルを使わないと!!」

「エルちゃ~ん、蹴った足が痛いよぉ~」



 斬れはしたものの深手とはいえず、蹴ったフローラも硬い顎を狙ったことで負傷する。

それでも効果はあるようで、すぐに此方を襲ってくる気配はない。


 タイヤーも参戦しようかと前へ出るが、それよりも先に動いたのはミュオであった。



「お、おい! ミュオ?」

「大丈夫じゃ。あれだけ弱らせれば、わしでも問題ないのじゃ」



 フードを脱ぎ姿を現したミュオが、一度振り返り微笑むとエルやフローラよりも前に出る。


 グレートサーベルは、頭を振り軽い脳震盪から復帰すると赤い瞳を光らせミュオを標的に捉えた。



「ミュオちゃん!?」

「汝の身を捧げよ。その身を(にえ)として我に力を与えよ」



 互いに目を合わせ動かないミュオとグレートサーベル。異変はグレートサーベルに起こる。体が空間ごと渦を巻きながら捻れていく。


 グオオオオオオッ……! と、苦しんでいるのか四肢をばたつかせて抵抗を試みていたグレートサーベルは、やがて体がおかしな方向へねじ曲げながら小さくなり、やがて消えた。


 ポトリとグレートサーベルの居た場所に何かが落ちる。

 


「み、ミュオ? 今のは?」

時空眼(タイムアイ)を使ったのじゃ。これでまた暫くは使えんがな。あの虎の体を生け贄にして異界の道具を取り出したのじゃ。あそこに落ちておるじゃろ?」

「い、生け贄!?」



 タイヤーは、ゴクリと生唾を飲み込む。今、わかっているだけで、五つ、ひゃっはー教にある異界の道具。

それら全てが生け贄で取り出されたのかと思うと背筋が凍った。


 ふらつくミュオの体をフローラが支えるのを確認したタイヤーは、グレートサーベルの代わりに出てきた道具を恐る恐る拾う。



「なんだ、これ? 紙? いや、カードか? 見たことのない材質だな」

「何だったの、タイヤー?」



 タイヤーは、数十枚束になったメモ用紙のような紙束をエルに手渡す。



「ミュオちゃん、わかる?」

「わしは何を取り出したのか、わからぬのじゃ」



 タイヤー達はお互いの顔を見合わせる。紙には何も書いていない。もしくは本当にメモ用紙なのかとさえ思える。



「あの~、それってもしかしたらスキルカードでは?」



 梱包されたまま、馬の上で様子を見ていたモブカが声をかけてくる。



「わかるのか?」

「はぁ……。恐らくは、ですけど。聖具ではないですけど、ひゃっはー教の入団で使っていた(・・・・・)物と似ております」



 使い方を一通りモブカから聞いたタイヤーは、すぐに試してみることに。

指先を少し傷つけ血を出し、その指先で一枚取り出した紙に触れてみた。


 暫くすると、紙に文字が写し出される。


 そこにはタイヤーのスキル名である“麦”。そして使用方法。そこには「異性限定で、かつ好意を抱く相手限定、かつ興奮する相手に踏まれる度に発動」と書かれていた。



「へー、ふーん、タイヤーってあたしのこと好きなんだ。ふーん、へー」

「エルちゃん、エルちゃん。それだと私やミュオちゃんも該当する事になるよ」

「えっ……タイヤーって、やっぱり……」

「やっぱりって何さ! 別にミュオに興奮なんて……ん、他にも何か出てきた」



 そこには補足事項も書かれており、タイヤーは潔白を証明することが出来た。



「ほら、ここに“一度発動した相手は恒久的に発動可能”って! ちょっと予想外でミュオで発動したから、これからも発動出来るだけで、別に興奮した訳じゃないんだよ」

「でも、初めは興奮したのよね?」



 タイヤーは、ぐうの音も出なかった。


 カードにはスキルの効果も詳細があり、タイヤーの場合は、


青→眼力強化

黄→反応強化・強固

緑→魔法強化

赤→破壊強化

虹→生命進化


 と書かれていた。



「……えっ、何かこれから先が不安なんですけど、これ」

「破壊強化って。それに最後の生命進化もよくわからないわ。何より、さらに先よ」



 スキルは一人、一つのはずであったが、タイヤーの場合、他にも二つスキル名の欄があり、そこには???とだけ書かれていた。

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