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僕は踏まれたい~踏まれるほどに強くなる~  作者: 怪ジーン
四章 ユーラシア教国へ
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06 ひゃっはー教が出来るまで

「で、結局この眼鏡はなんなんだ?」



 リュックに梱包され首だけ出た状態のモブカがクルリと首だけ振り返ると、びしょ濡れの茶色い髪から水が滴り落ちる。

 いまだ緑色の光に包まれるタイヤーを一瞥だけすると、唇を尖らせて拒否を示すように顔を背けた。



「いいから話なさい」



 エルがモブカの顔を鷲掴みするとギリギリと力を込め始めた。



「いだだだだだだっ!! 脳ミソ、脳ミソ出ちゃう! 話す、話します!!」

(初めからエルが拷問してれば手っ取り早かったのでは?)



 あっさりと口を割るモブカを見ていると憐れみすら覚え始めるタイヤーであった。



「何でも見透かす眼鏡?」

「はい。ひゃっはー教に代々伝わる聖具の一つで、嘘やスキル等々を見破ることが出来るのです」



 恐らく残りの聖具とやらも、奪った時空眼(タイムアイ)で異界から持ち込んだ物なのだろう。タイヤー達は出来れば他の聖具も回収したいと考えていた。



「しかし、この眼鏡……なんで、鼻みたいなものが付いているんだ?」

「初めからです。取ろうにも取れないらしいのです」

「うーん。エル、着けてみる?」

「絶対いやよ! そんな団子鼻みたいなのになるの」

「だよなぁ。仕方ない僕が着けてみるか」



 何でも見透かすというならば、他の聖具を回収する際にも役に立つのではと、試用してみることに。明らかに自分の鼻より大きい、つけ鼻を被せて眼鏡をかけてみた。



「タイヤーは変わらないわね」

「まんま、タイヤーくんだね」

「おいっ!!」



 笑いを堪えているのが丸わかりの二人を放って置いてタイヤーは、まずミュオを確認してみた。

自分の右手と手を繋いでいるものの、先程まで見えなかったミュオの姿がくっきりと見える。

ただ、ミュオの周囲には赤い光で縁取られていた。



「この赤い光は?」

「それが、見透かしているものとの区別です。嘘など目に見えないものも、その瞬間に口元が赤く光ります」



 タイヤーには何処かで似たような話を聞いた事があった。



「ああ、そうか。ロリ王女のスキルだ!」



 非常に似通ったスキルと道具。むしろ、目に見えないものも見透かす事が出来ることから上位互換だとも言える。

 一般的なスキルしか持たないモブな人達で形成しているひゃっはー教にとっては、この手の道具は喉から手が出るほど欲しがるのも理解できた。



「でも、やっぱりやり方が気にくわないな。え……と、モブカさん、だっけ? ひゃっはー教って元々何なのさ」

「ひゃっはー教に興味が!? モブキチ様!」

「だから、変な名前で呼ばないで。で、どうなの?」



 言いにくい事なのか、モブカは黙りながら話すべきかを考え始めていた。チラリとエルを見ると、コキコキといつでも鷲掴み出来るように指を鳴らす。



「あの、モブキチ様には誤解されたくないのですが、今のひゃっはー教は決して違うということだけ」

「ああ、もう! だから、モブキチじゃ……! ……もう、いいや。それで、昔のひゃっはー教ってのは?」



 モブカは、何度も今とは違うことを念を押しながら、ひゃっはー教の成り立ちを話始めた。


 ひゃっはー教。近年になり拡大してきたが、そのルーツを辿ると、女神アーマイルを信仰するアーマイル教に由来するという。

 そのアーマイル教を信仰していた一部のろくなスキルしか与えられなかった者達が独立したのが、ひゃっはー教の始まり。

 独立の際、アーマイル教の宝物庫から持ち出したのが五つの聖具なのだという。当然、ひゃっはー教はアーマイル教が聖具を、手に入れた経緯を知っており、それは長年伝えられてきた。

 モブカが知っているのは、白い目をした亜人から目を奪い、利用することで聖具を得たとだけ。

 その亜人が、ミュオ達神無族なのだとは知らないということであった。



「じゃあ、迫害していたのはアーマイル教の連中!?」

「なるほど納得なのじゃ」

「ミュオ?」



 ゴルディアの街からはだいぶ遠退いた。一度姿を見られているモブカに隠す必要はないとミュオが姿を現し、相槌を打つ。



「アーマイル教は、女神アーマイルが絶対じゃ。わしら神無族がアーマイルからスキルを与えられなかった者というだけで、十分邪魔だったのじゃろう」

「だからって、迫害してもいいなんてことはないよ!」



 タイヤーにとって、今のスキルは有難いもの。何せ養成所に合格したのは、今のスキルのおかげでもあり、卒業出来たのも、“麦”のスキルの依るところが大きい。

 聖騎士と同じ討伐者(サブジュゲーター)になれたのもスキルのお陰だ。


 だからこそ、現在はわからないが昔のアーマイル教の神無族への仕打ちが許せなかった。何故、感謝するだけで済まないで、人と比べるのだと。


 珍しく憤慨するタイヤーをモブカは熱い眼差しで見つめているのをエルは横目で見ていた。



◇◇◇



 大陸の東にある、とある地でフードを目深に被った人影が、崖の上から眼下にある村を眺めていた。

 人影の口元が吊り上がると、眼下の村に向かって煌めく石を投げ落とした。



「くくくっ、さぁ、暴れろ魔物ども! あの男(・・・)の子孫が住む村を滅ぼせ!」



 人影は手に持っていた杖を天に掲げると、先程落とした煌めく石が輝きを一層放ってみせると、石を中心に身体が出来上がり、虎にも似た魔物となり、村目掛けて崖を駆け降りていった。

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