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僕は踏まれたい~踏まれるほどに強くなる~  作者: 怪ジーン
四章 ユーラシア教国へ
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05 ひゃっはー教の前身

「いきなり殴るなんて! やっぱり持っている者達は野蛮ですわ。モブキチ様はこちら側へ来るべきだと早くお気づきになられるべきです」



 繁みの中から姿を現したモブカは、奇妙な眼鏡をかけながら、タイヤーことモブキチへと近づこうとする。

すぐにエルとフローラの二人が間に割り込み邪魔をした。



「退いておくんなまし。貴女方持っている三人には用は御座いませんわ」



 いつになく強気で、退こうとしないモブカには焦りなようなものが見えた。

エルとフローラに防がれて、手を伸ばしてもタイヤーには届かないが、タイヤーとミュオが繋いだ手を引き離そうとしているように思えた。



「ちょっと待って! 今三人(・・)って言ったよね。ここには俺を除くとエルとフローラしかいない。つまり、君には三人目が見えているってことになる!」



 ギクリとまるわかりの表情でモブカは直ぐ様奇妙な眼鏡を外して後ろ手に隠す。



「さっきの眼鏡……それでミュオの姿を見ていた訳か。そんなこと出来るのか、ミュオ……ミュオ?」



 ミュオから返事がなく、奇妙に思っているとミュオはフードを脱いで姿を現す。眉間に皺を寄せ、明らかに不機嫌な表情をして。



「間違いないのじゃ。あれは、他の世界の物なのじゃ。つまり……」

「神無族から目を奪って他の世界から取り出した?」

「そうなるのじゃ」



 エルとフローラはモブカが動くよりいち早く背後に回り込む。タイヤーは珍しく険しい表情を見せていた。



「その眼鏡、何処から手に入れた?」

「さ、さぁ? 何のことでしょう?」

「エル、フローラ!」



 モブカは、あっさりとエルとフローラに両肩を掴まれ捕獲される。手に持っていた奇妙な眼鏡をタイヤーは奪い、かけてみた。


 試しに、再びミュオがフードを被り姿を消すも、タイヤーにはその姿がハッキリと見えた。



「あ、あんた……もしかしてミュオの母親から……!」



 エルとフローラの二人は、タイヤーの言葉で肩を掴む力を強める。

いくら人間ではないとはいえ、危害を加えてこない相手から目を奪うなどあってはならないと。何より迫害が許せなかった。



「何処で手に入れたの! 言いなさい!!」



 エルは語尾を強め、モブカの耳元で怒鳴る。しかし、モブカもしぶとく口を割りそうになかった。


 痺れを切らしたエルはタイヤーに寝転ぶように言う。タイヤーは馬の背に載せた荷物を解き、結んでいたロープをフローラに手渡すと地面に横になった。


 まずはミュオが踏み青白い光に包まれる。次いでモブカをロープでぐるぐる巻きにしたフローラが踏み、最後にエルが力を込めてタイヤーの顔を踏みつけた。


 緑色の光に包まれたタイヤーを見て、モブカは舌打ちする。



「モブ顔のくせにっ!!」

「顔は関係ないだろ! それで、エル。どうするつもりなの?」



 三段階目ということは魔法を使うのだろうが、今朝、宿を水浸しにしてしまったこともあり、タイヤーは少し気が進まない。



「もちろん、口を割らないなら、拷問よ」

「待って、流石にそれは……」

「大丈夫よ、タイヤー。死にはしないし、ちょっと苦しいだけよ」

「一体何をさせるつもりなんだよ」



 エルは近くの雑木林にまでモブカを肩に楽々担ぐと、身動きの取れないように座らせたまま更に木にくくりつけた。



「タイヤー、水を出して。ここならどれだけ水浸しになっても問題ないでしょ」

「あ、そういうことか……」

「エルちゃんて、時々容赦ないよね」



 フローラの言葉に同意しながらタイヤーは魔法の準備に取りかかる。魔法の使用前に、モブカに向かって口を割る気はないかと尋ねたが、否定するばかり。



「仕方ない、やるか。“ラ・ウォータ”」



 モブカの頭上に水の塊が現れる。本来なら、落ちてくる水の塊を桶で受けるのだが、今回はモブカが受け止めることに。



「あぶぶぶぶっ……ぶはっ……あぶぶぶぶっ……ぶっ……」



 滝行のように、止めどなく落ちてくる水にモブカの司祭のような祭服は、あっという間にびしょびしょに濡れていく。呼吸は出来るものの息苦しいのは変わらない。逃げ出すことも出来なく、ただ、水の塊を浴び続ける。


 雑草の生えた雑木林の地面は瞬く間に水浸しになっていき、冷えた地面に座ったまま木にくくりつけられたモブカはしきりにお尻を動かすのは、泥濘(でいねい)になった地面が、気持ち悪いのであろう。



「そろそろ吐く気になった?」



 一度魔法を止めて、エルが顔を近づけ問うが、モブカも意地なのか首を横に振る。



「はぁ……はぁ、誰が言うものですか……。あれはひゃっはー教に昔から伝わる聖具の一つ。あなた方、持っている者に災いを及ぼす為のものですからね」

「……一つ? っていうことは、複数あるのか。それに昔からっていうことは、少なくとも今いるひゃっはー教の人達が他世界から出した物ではないってことか」

「何故、それを!?」



 どうやらモブカには、絶対に言うものかと考える頭と、口が連結していないようで、ポロポロとヒントを溢す。



「今、あんたが言ったんだよ。それで、ミュオの……神無族に関して他に知っていることは?」

「知らないです。何も知りません。大陸の東側にある支部で、彼女と同じような目をした男なんて知りません」

「男? っていうことは、ミュオの母親じゃない? ん……? でも、待ってよ。この眼鏡が昔からあるってことは、その男が出した物ではないということか? そして、あんたは僕達が、何も言っていないにも関わらず目に関する言葉を最初に言った。ミュオの角には全く触れずに……」



 少なくとも、ひゃっはー教の中では、神無族に関してある程度知識があるということになる。そして、他世界の道具を聖具として敬うということは“時空眼(タイムアイ)”を奪い使用したのではないかと、タイヤーは考えた。



「あんたら仮にも宗教なんだろう? 迫害なんかして恥ずかしくないのか?」

「してません、してません。今は。ひゃっはー教になる前の話です!」



 モブカの答えにフローラは呆れ気味に「本当にポロポロ溢すね、この人……」と漏らす。



「タイヤーといい、モブ顔ってバカばっかりなのかしら?」

「それだと、僕も含まれてるんだけど……。まぁ、いいや。たしか次に向かうアーマイルは、ひゃっはー教の拠点もあるんだよね? 行ってみたら、他にもわかるかも」

「ひゃっはー教に入信を!?」

「それは、ない」



 問題はモブカである。恐らく近くに吹き飛んだモブゾウが居るはずだが、もし逃げてしまっていては、ここに置いておく訳にもいかない。



「仕方ない、連れていくか……」



 木から外したモブカをタイヤー達は、荷物同様に馬の背中に梱包するのであった。

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