08 四人目のフマレ隊
乾いた服をタイヤー達の荷物に入れ、“てれぇび”などは服を仕舞っていた穴の中へと隠すと、四人になったフマレ隊は“魔王の部屋”から出ていく。
ミュオの姿は消えたままで、タイヤーと仲良く手を繋ぎ見失わないようにしていた。
「あれ? 誰もいない……」
ミーア達が待っているはずの場所まで戻って来たが、ミーアやギル、“青雲の牙”の人達の姿は無かった。
「先に洞窟出たんじゃないかしら?」
「みたいだね。荷物もないし。あ、そうだ! ミュオ」
「なんじゃ?」
「ここに巨大なタイラントタートルが居たんだけど、ミュオは知ってたのか?」
「タイラントタートル? ああ、お母ちゃんが置いていったやつか。もちろん、知っているのじゃ」
「ミュオちゃんのお母さんが……もしかしたら、ミュオちゃんを守る為になのかな?」
フローラの意見に同意するようにエルも頷くが、タイヤーだけは浮かない顔をしており、気になったエルはタイヤーの側に行きミュオに聞こえないように耳元で囁く。
「どうかしたの?」
「うん……いや、本当にそうかなって、ちょっと思ってね」
ミュオの母親は話を聞く限りミュオに対して愛情を持って接しているようには思えず、タイヤーはここにタイラントタートルを置いた意味を模索していた。
そして、彼が出した一つの結論は、『蓋をする』であった。
(ここにタイラントタートルを置けば、誰も近づかない。誰も近づけないなら、ミュオはずっと一人だ。もしかしたら、ここにミュオを留める為にわざと……)
もしそうならばミュオがあまりに不憫だと、タイヤーは人に見つかりそうな出口付近まで、見えないミュオを抱っこしてやった。
「お帰りなさい! どうだった? 魔王の部屋はあったの?」
ミーアはタイヤー達の姿が見えると安堵して駆け寄る。他のチームも同様に西の洞窟の入り口付近で滞在してタイヤー達の帰りを待っていた。
「あったよ、けどもぬけの殻だった」
「そう……それは残念ね。けど、これで全部調査は終わったから、グルに報告に行けるわね」
「うん。それで、“青雲”の人達は?」
「ああ、彼らね。容態が良くないから、皆で馬車まで運んで一部のチーム含めてゴルディアに戻ったわ。私たちは、あなた達待ちってこと」
ミーアはともかく、おこぼれにでもあやかろうと思っていたのか他のチームの人達は、あからさまにガッカリとする。
ミュオの歩幅に合わせなければならないため、タイヤー達は馬車のある場所まで最後方をゆっくりと歩いた。
◇◇◇
ゴルディアの街のグルの前に馬車か到着する。馬車に乗っている間、大人しかったミュオは、途中休憩した時に思いっきり馬車酔いを起こしたのが原因であった。
「大丈夫か、ミュオ?」
「へ、平気じゃ」
「そうか。それじゃ、フローラとエルはミュオを連れて宿に戻ってくれ。どうやら“青雲の牙”がやられた状況を聞きたいらしく、グルに残らないといけないみたいだし」
「わかったわ。途中で、ミュオちゃんのパンツも買わないとね」
タイヤーと一旦別れたエル達は拠点にしている宿へと戻る。途中で下着屋に寄ったのだが、子供用のパンツを大人になったエルやフローラが買うとなると、周囲の視線が気になってしまう。
あの歳で、もう子供が? とかならまだしも、そういう趣味なのかと囁かれ、二人が下着屋から出てきた時には顔が真っ赤になっていた。
タイヤーの方も大変と言えば大変であった。
まずは“青雲の牙”達は、辛うじて一命をとりとめる。しかし、タイヤー達が“青雲の牙”を盾にしたのではと疑われてしまった。
幸い、ミーアやギルの信頼が思っていた以上に高く、彼女らの証言により、誤解は晴れる。
問題は“魔王の部屋”とタイラントタートルの二つであった。
通常より巨大なタイラントタートル、それが魔王の部屋を守るように生息していたのだから、タイヤーが何度も何も無いと言っても信じてもらえずにいた。
何かタイヤー達が独占して持ち帰ったのではと疑われたのだ。
(正解といえば正解なんだけど……魔王本人とは言えないなぁ)
「本っっ当に、何も無かったんですね?」
新しくグルの長官になった女性に詰め寄られるもタイヤーは、何も無いの一点張りで言い張り、なんなら自分達で確かめればと言い返す。
“てれぇび”が見つかれば疑われるかもしれないだろうが、扉を開いても、あの何も置かれていない殺風景な部屋を見て、詳しくは調べないだろうとの魂胆であった。
それでもどうも疑う長官は、一つ提案をする。それは、今後、このゴルディアの街のグルでは、タイヤー達から買い取りをしないという条件であった。
「もう、それでいいですよ。じゃあ、僕はもう帰りますよ。お腹もペコペコなので」
「あ、待って」
ミーアに呼び止められてタイヤーはミーアから麻袋を受け取った。
「これは?」
「これは、あのタイラントタートルの生核を売ったお金よ。壊れてはいたけど、タイラントタートルの亜種みたいだったし、買い取って貰えたのよ。倒したのは貴方達だけど、一割は頂いたわよ」
「そんな……。そもそも、ミーアさんが居ないと持ち帰れないものでしたし、手伝ってくれたのですから折半しないと」
タイヤーは受け取った麻袋をテーブルの上にひっくり返すと、じゃらじゃらと銀貨が転がる。
「待って、待って。半分も受け取れないわよ」
「だったら、あの“青雲の牙”の人達の治療費の足しにでもしてください。僕達は、明日にはこの街から出ますから」
「あ……そ、そうね。このグルで買い取ってくれないのなら、この街に居る意味がないものね。ごめんなさい、私達がもっと説得出来れば良かったのだけど……」
ミーア、そしてギルは責任を感じているのか肩を落とす。しかし、逆にタイヤーは、ミーア達に頭を下げて礼を言う。
「いえ、ミーアさん達のせいなんかじゃないですよ(嘘は吐いているのは事実だし……)」
「ありがとう。今回は貴方達を見て、私達ももっと精進しないとって感じたわ。そういう意味では早々にリタイアした“青雲の牙”にも感謝しないとね。わかったわ、彼らの治療費は全額私達が持つわ。そして、またお互い成長したら会いましょう。二人にも宜しく言っておいてね」
ミーアとギルと強く握手を交わし再会を約束してタイヤーはグルを出ていく。
(気のせいだろうか、何か僕達をラーナシア連合王国から離れるように仕向けられた気もするけど……)
タイヤーはグルの建物を見ながら、ふとそう思う。
同時にぐ~っとお腹がなり、タイヤーはお腹空いたなと呟きながら宿へと戻るのであった。
次回から隔日投稿になります。




