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03 マジ卍

 正面から大剣片手にタイラントタートルへ立ち向かうエルをフォローするべくフローラとギルも飛び出す。


 態勢を立て直したタイラントタートルは、甲羅の上にいるタイヤーに苛立ちながらも、エルを視界に捉えた。



「気づかれた!?」



 泡よくば、そのまま懐へと潜り込みたかったエルは、石の弾丸に備えて大剣を前に出す。



「頼むから“一ノ面”が出てよぉ、スキル“八面”!」



 エルは右手を自分の顔に持っていくとスキルを発動させて、面を被る。今回出たのは、空色の面がまるで血の涙を流しているような赤い筋が入った面であった。



「あれは、七ノ面か!? また、とんでもないものを!」



 甲羅の上からエルを見ていたタイヤーだけが、今回の面の種類を見分ける。必死にエルやエルの背後にいるフローラに指で七を作るが、誰もタイヤーを見ている暇はなかった。


 自分が何の面を出したか分からないエルは、試しに大剣を大きく振るう。



「これは!? 七ノ面ね」



 キイイイイイイィィィンと、金切り音が洞窟内に反射する。タイヤー達は思わず耳を塞いだ。



「な、なんだ!? この音は!?」



 ギルやミーアも頭の中まで響く音に顔を歪めてしまう。この場で唯一平然としているのはタイラントタートルのみであった。



「ああ、もう!! 本当に役に立たないスキルね」



 エルが仮面を脱ぎ捨てると、そのまま走り出す。タイラントタートルがそれを見逃すはずはなく、エルに標的を定めた。



「エルちゃん、危ない!!」



 フローラは近くにあったものを手に取るとタイラントタートルの顔に向かって投げつけた。



「うわああああああああああああっ!!」

「ぎ、ギルううううううっ!!」



 ギルは真っ直ぐにタイラントタートル目掛けて飛んでいく。フローラの近くにいたのが不幸であった。

ミーアは飛んでいくギルを見て魔法を使うのも忘れ叫びながら届かぬ手を伸ばした。



「ギルさん! 今です!!」



 双剣使いであるギルにとってタイラントタートルに近づく絶好の機会。フローラの声に反応してギルはスキルを発動させる。



「どれだけ傷つけられるかわからんが……“斬傷限界突破”!!」



 ギルはタイラントタートルの鼻先目掛けて双剣を何度も振るう。なるべく少しでもとタイラントタートルに激突する前に。


 しかし、悲しいかなタイラントタートルの皮膚は甲羅ほどではないが相当硬く、かすり傷を付けるので精一杯であった。


 落下していくギルは辛うじて地面との激突を軽減するべく受け身を取り、タイラントタートルから距離を取った。



「くそっ、硬えぇ!! でも、傷はつけたぞ!」



 かすり傷程度ものともしないタイラントタートルが石の弾丸を吐き出すべく喉を膨らませる。にも関わらず、ギルは余裕の笑みを浮かべた。


 ほんのかすり傷だったタイラントタートルの鼻先につけた傷からダラダラと体液を流し始める。つけた傷は、時間が経つに連れどんどんと開いく。


 ボタボタと地面を濡らす自らの体液にタイラントタートルは、足踏みを始めて暴れだす。



「おおお、お、落ちるううううううっ!!」



 タイヤーは甲羅についている尖った岩にしがみつく。突然の傷にパニックを起こしたタイラントタートルは、洞窟内のあちこちに石の弾丸を吐き出すと、壁や天井が破壊される。



「エルちゃんは? ねぇ! タイヤーくん! エルちゃんは!?」



 暴れるタイラントタートルの頭に目を奪われエルを見失ったフローラは、タイラントタートルの周りを探すも見つからない。

 タイヤーに問いかけるもタイヤー自身は、振り落とされないようにするだけでそれどころではなかった。



「いた! 彼処だ!!」



 ギルがエルを見つけて指差す先は、タイラントタートルの真横に付き、地面に自分の大剣を突き刺すところであった。



「ふんっ!!」



 エルは車のジャッキのように、タイラントタートルの足の隙間に入り、踏み潰されないように支える。



「本当にひっくり返すつもり? 無理よ、あの巨体を……」



 ミーアもエルの姿を見て、今にも潰されそうだと半信半疑であった。歯を食い縛り、エルが踏ん張る地面に亀裂が入る。


 力自慢の男でも、それは無理だとギルもハラハラと見守るしかなかった。



「どっせええええええいいいぃぃぃぃっ!!」



 掛け声と共に、一気に踏ん張っていた膝と肘を伸ばす。ただでさえ、四肢で支えているタイラントタートルの巨体は、片側の足が浮き上がると、もう残り二本の足では支えられない。

傾き始めるのを見たミーアとギルの二人は唖然と口を開いたまま固まっていた。



「あ、タイヤーのこと忘れてた」



 傾くタイラントタートルの行く末をエルは呆然と見送る。ひっくり返ることはなかったが、タイラントタートルは壁と天井に斜めに挟まってしまった。

 それでも、もうタイラントタートルは自力で戻ることは出来ずに、大事な生核(しょうかく)を剥き出しに晒す。



「タイヤー! 大丈夫なの!?」

「な、なんとか……」



 エルがタイラントタートルの背後に回り、壁とタイラントタートルの隙間を覗き込むと、そこには両手両足で“卍”のポーズを取り身動きの取れずに挟まるタイヤーがいた。

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