11 西の洞窟へ
「タイヤー、タイヤー。起きなさい、タイヤー」
「むにゃ……あと、ちょっと……えへへ……フローラのおっぱい」
翌日の早朝、タイヤーの寝言を聞いたエルは、こめかみに青筋を立てながら、タイヤーの胸ぐらを掴むなり、繁みに向かって放り投げる。
「目が覚めた? タイヤー」
「う、うん。おはよう、エル」
繁みに逆さまに引っかかったタイヤーは、顔だけを繁みから見せ、目を覚ます。
出発というのに妙に静かで、辺りを見回したタイヤーは、置いていく馬車の見張りとエル達しかいないことに気付いた。
「あれ? みんなは? “群青”の人達も?」
「あたし達が最後よ。ほら出発するわよ」
「起こしてくれれば良かったのに……。スキルの反動が解けるのを待っていてくれたのか?」
「まぁね。タイヤーと一緒にいる以上、スキルの反動という課題は避けられないもの。何せあたし達は、まだチームを組んで浅いし。それにぃ~? なんか幸せそう~な夢見ていたようだし?」
「夢? はて? なんの夢だったっけ?」
繁みから抜け、荷物を背負いながら夢を思いだそうとする。しかし、思い出せずに、ふとフローラと目が合うとすぐさま逸らされてしまった。
準備を終えて、タイヤー達は急いで西の洞窟のある山の麓を目指す。途中ある林を抜けたところで、タイヤー達は“群青の魔剣”のミーアとギルを見つけて、足早に駆け寄る。
「良かったぁ、ミーアさん達に追い付けたね、タイヤーくん」
「いや……。他の人達がいない。すいません、ミーアさん。待っていてくれたのですね」
「気にしないでいいよ。この先には魔物も出るからね、慎重に慎重を重ねただけ。人手は多いに越したことはないからな」
口ではそう言うミーアであったが、軽くウインクをして見せ茶目っ気のある態度に自分達をただ、待っていてくれたのだとタイヤー達は感じて、頭を下げた。
「行くぞ」
「待ちなって、ギル。いいかい、君達。西の洞窟に入れば当然、中は入り組んでいる。恐らくチーム分けが行われるだろう。そこで、どうだい? わたしらと組んで一チームとするのは?」
ギルは少し冷たそうであるが、ミーアはタイヤー達によくしてくれる。全く知らないチームと組まされるよりかは、断然いいと、即答して提案を受けることにした。
案の定、西の洞窟の入り口前でタイヤー達を待ち構えていた“青雲の牙”を含む他のチーム達。入り口は一つではあるが、途中三手に分かれ道があることから、三班に分けることに。
ミーアが先んじて“青雲の牙”のハヤトに、タイヤー達フマレ隊が新人であることを理由に“群青の魔剣”を含めた五人一チームとして考慮してもらえるように話をつけてくれた。
そのかいもあってか、“青雲の牙”“群青の魔剣”に“フマレ隊”を加えた班になる。
「じゃあ、準備始めてくれ。各班のリーダーは、こっちに来てくれ」
当然と言わんばかりに、タイヤー達の班のリーダーは“青雲の牙”のハヤトになる。各班が明かりを用意する中、タイヤー達も準備を始めることに。
「それじゃ、タイヤー……あっ!」
「へへん、そうそうやられるもんか……あっ!」
言葉と同時にエルの足払いがタイヤーに飛んでくるが見事躱してみせるも、背後にいたフローラに両足が揃ったところを払われ、くるりと体が横転する。
無防備で背中から硬い地面に叩きつけられたタイヤーの顔をフローラは容赦なく踏んだ。
「いてててて……おお、揺れている」
フローラに関しては下着を見る必要がなく、その豊かな胸がたゆんと揺れるだけでタイヤーは興奮する。
しかし、この日は、いつもより大きめに足を開いた為に、スリットが大きく開かれて水色がベースの白い水玉模様のパンツがタイヤーの目に飛び込んできた。
ダブルの展開にタイヤーは、思わず鼻息が荒くなる。
鼻の穴を大きくするタイヤーの顔に苛立ちを覚え、恥ずかさも忘れたフローラは、大きく踏んだ足を上げ今度は勢いを増して足を踏み下ろした。
「ひっ!!」
青白い光に包まれたタイヤーの顔のすぐ横の地面にドンッと音と共にヒビが入り、タイヤーの顔は青ざめる。
一度踏まれて動体視力が強化されていなかったら……そう思うと背筋が凍るのであった。
「変わったスキルね。常時体が光るなんて」
「ランプいらずでしょ?」
「ランプの代わりかよ、僕は。今の僕は暗闇でもちょっとした明かりだけで目が利きますから。だから、洞窟でも自分の明かりだけで、よく見える……って、やっぱりランプ代わりじゃないか!」
タイヤー達の準備が終えた頃、ハヤトが戻ってくる。青白く光るタイヤーを一瞥くべるだけで、ハヤトは自分のチームに話しかけて此方を見ようとしない。
──随分、嫌われたみたいだな。嫉妬ってやつか、何も起きなければいいけど──
ハヤトに不安を感じながら、タイヤー達は西の洞窟へと入っていった。
◇◇◇
ひんやりと肌寒い洞窟を一列になりながら少し進むと、かなり開けた場所へと出てくる。高い天井に、かなりの道幅のある三つの分かれ道。
もっと窮屈な洞窟を想像していたタイヤー達は、今居る場所だけで、かなり大きな洞窟なのではと思い始めていた。
ここまで、魔物らしい魔物に遭遇していない。
十人以上の大人が横一列になっても余裕があるくらいの道幅に、奥には大型の魔物がいたとしても不思議ではなかった。
「ね、ねぇ。タイヤー……」
珍しくエルが不安そうな顔をしてタイヤーの袖を掴んで寄り添う。すると反対側ではフローラも同じく不安そうな顔で体を刷り寄せてきた。
「ああ……一番左の道だな」
エルとフローラは同時に頷く。左の道の奥から肌がピリつくのをタイヤー達は感じていた。




