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03 スキル、発動!

「なんで、つつくかなぁ~?」

「穴があったら一度はつつくでしょうが!」

「意味がわからないよ、エルちゃ~ん!!」



 タイヤーを先頭にエルとフローラも、森の中を駆け抜ける。深緑(しんりょく)のブッシュを飛び越え、顔を真っ赤にしながら必死の形相。


 タイヤー達の背後からは、ブーーンと羽音をさせながら拳大の蜂の群れが森の木々を避けながら、迫って来ていた。


 大きさだけでも、ただの蜂ではないのは明らかで、魔物の一種、フラストビーという名の巨大蜂。常時フラストレーションが溜まっているのかちょっとの事で、すぐに襲ってくる事から名付けられた。


 尻から針を出しっぱなしのフラストビーは「何の穴かしら?」とエルの馬鹿力をもってして枝で巣をほじくり回され怒りは頂点に達していた。



「ちょっとつついただけなのに~!」

「いや、枝でグリグリと巣を潰していたからね?」

「いいから、速く走ってぇ! 前が(つか)えているのよ、タイヤーく~ん!」



 森の中では、木々が邪魔になりエルの得物である大剣では振り回すこともままならず、かといって、いくら虫の蜂に比べて大きいだけと言っても数が数。

フローラが一つ一つ拳で叩き落とすのには、一苦労である。

タイヤーもタイヤーで、スキルが発動していないと、役立たず状態であった。



「あっ!!」



 タイヤーが上手くブッシュを飛び越えられず足を取られ、枯れ葉の絨毯の上に倒れるように滑り込んでしまった。



「ふげっ!!」



 タイヤーの背中の上をピンク色の下着が通り抜ける。



「ぐへっ!!」



 続いて下着が見えることなど気にする暇なく、露になったフローラの純白の下着がタイヤーの上を通過していった。


 偶然であったが、先行していたタイヤーが倒れることで、二人に踏まれてしまい、体が青白い光を経由して黄色の光に包まれる。



「ついているわ! タイヤー、立って!! 反撃するわよ」



 エルは足を止め、(きびす)を返して肩から掛けてあるベルトを外すと、ゴトリと重そうな音をさせて大剣が地面に落ちる。エルは片手で拾い上げたあと構えを取った。

 フローラも同じように振り返ると、拳を守るグローブを装着して呼吸を整え、両手を前に構えを取る。



「でやああああーっ!!」


 

 まずはエルが大剣を真上に振りかぶったまま、フラストビーに向かって走り出し、未だに地面を這うタイヤーの背中を踏み台にして飛び上がる。無数のフラストビーの群れを分断するように、引っかかる枝葉程度などお構い無しに斬り下ろした。



「フローラは右、タイヤーは左側をお願い!」

「うん、任せて!」

「いててて……、わ、わかった」



 ようやく起き上がったタイヤーは、細身の剣を抜く。いち早く右側に集まったフラストビーを相手にフローラが突っ込んで行った。



「すうぅぅ……んっ!!」



 大きく息を吸い込んだフローラは、息を止め、普段のたれがちな目を細め鋭くする。

 息を止めたままフローラは、的確に一匹ずつフラストビーを地面に叩き落としていく。時間が経つに連れ、ただ叩き落としていた威力は、フローラの拳が当たる度に、弾けて潰れるほどの威力へと変わっていった。


 フローラのスキル“絶息(ぜっそく)の極み”。


 フローラの持つ継承系スキルであり、その効果は無呼吸で行動している時間に比例して、耐久力と攻撃の威力が増していくというものである。


 既に一分以上経過しており、フラストビーの鋭い針すらもフローラの柔肌に刺さる事はなくなり、拳だけでなく肘や額で軽くあしらう。


 まさにフローラの全身、これ凶器である。


 一方、タイヤーも負けてはおらず二段階目まで発動していればフラストビーなどに遅れを取る事はない。

 広がった視界に、フラストビーの羽の動きすら、ゆっくりに見えるほどの動体視力をもって、的確にフラストビーの胸にある小さな白色の結晶、“生核(しょうかく)”を叩き割っていく。


 “生核(しょうかく)”を叩き割られたフラストビーは、霧散していき跡形を残さない。



「あたしも二人に負けていられないわ!」



 対抗心を燃やしたエルは、自分の顔を覆うように右手を被せると、右手と顔の間にお面を出現させる。


 エルのスキル“八面(やおもて)”。


 文字通りに八種類あるお面を被ることで、様々な効果を得るエルのスキル。唯一の欠点は、エルには何のお面かが自分でわからない事と、自在に選べないという事。


 今回現れたお面は、紅白色の陰陽太極図の柄であった。



「げっ!! あれは、ヤバい。フローラ、急いでエルから離れろおおおおっ!!」



 広がった視界の端に映ったエルを見て、タイヤーはフローラへ呼び掛ける。フローラもタイヤーの声が聞こえ、エルのお面を見ると目をギョッと見開き、フラストビーなど放っておいて、逃げの一手に変わる。

 タイヤーもフローラに声をかけた直後から、直ぐ様この場を後にする。



「どっせえええいいいぃ!!」



 エルの振り被った大剣の一撃が地面に突き刺さると、エルを中心に爆発でもしたかのように突風が吹き荒れる。


 エルから近い木々は根こそぎ風で吹き飛んでいく。エルから大分離れたはずのタイヤーやフローラも、風に煽られて体が浮き、飛ばされていく。

 フラストビーなどは、最早跡形も無い。


 これがエルの“八面”の一つ、“三ノ面、弧王(こおう)”の威力である。


 その名のように、エルの周り直径十メートルには荒れ地だけが残り、そこにはエルだけが、ポツンと孤独に立っていた。

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