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双翼の剣士  作者: 成盛 渡
第二章
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第二章 1話 いきなりの戦闘

第二章、スタートです。

 荒れ果てた大地の最も暗い場所で、最も深き闇を持つ者は、その玉座にて睥睨する。


「陛下、光の民は異界より勇者を召喚した模様です」


「ほう、どおりで強い力を感じるわけだ」


 暗闇の中、声だけが明瞭に聞こえる。


「それにこの力は……」


 少し思案する仕草を見せ、直後高笑いが響く。


「異界の地で転生したか!ならば決着をつけようぞ、我が愚息よ!」







 セレンと思いを告げ合い城を後にしてから、既に夜は明けていた。日の光が指す空を俺達は飛行している。


「そういえば剣を探すって言ってもあてはあるの?」


 俺に抱かれながセレンが聞いてくる。


「まあな。大体の場所なら検討はついてる」


 俺達は今、"ライド・フェルド"と対をなすもう一本の俺の剣を探す旅に出ている。


「俺の力の一部を付与した作った物だから感覚でどの辺りかはわかる」


 "ライド・フェルド"もそうだが今探している剣は俺が前世で、日本へ転生する以前に作った物だ。理由は自分の力が暴走するのを抑えるため。


 俺は光と闇の二つの魔力系統を合わせ持っている。相反する二つの力を合わせ持っているため制御が難しかった。だからとりあえずの解決策として力の一部を剣に付与することで暴走する危険性を低くした。


 だが今のままでは闇の民の王を倒すことなどできない。剣に付与された力を取り戻し、使いこなさなければ到底無理だ。


「幸い剣がある場所の近くには町がある。一旦そこで降りよう」


 そう言った直後、


「おらっ!」


 勇猛な叫びとともに金属同士がぶつかる音が聞こえてきた。


「リヒト、あれ!」


 セレンの指差す方に目を向ければ、一人の光の民が数人の闇の民に襲われていた。光の民の方は鎧を着ているためおそらく王国の騎士だろう。対する闇の民は大した武装はしてはいないが動きを見ればかなりの手練れ、それが六人もいる。たとえ光の騎士といえどもこのままではジリ貧だ。


「リヒト……」


 セレンが悲痛そうな顔になる。正直にいってあの状況に関わりたくはない。セレンを連れた状態で戦闘などすれば万が一にもセレンに危害が及びかねない。だから余程のことがない限り闘わないつもりでいた。そのことをセレンもわかっていて顔に出すだけで直接は言ってこない。


「……わかったよ。助けてやるからそんな顔をするな」


 光の騎士を助けるべく、急降下を始める。体勢を崩し、闇の民に切られそうになる。その間に"ズドーン"という音とともに盛大にクレーターを作りながら着地した。

土煙を立てたため互いに姿は見えていない。外から「何だ!?」「何があった!?」などの焦燥の声が聞こえてくる。土煙が止み互いに姿を視認する。


「だ、誰だ、てめえ!!」


「俺のことはどうでもいい。とりあえず退け。こいつは殺させない。邪魔をするなら……殺すまでだ」


  争わずにいられるならそれがいちばんだが、俺もおもいっきり挑発してしまったからな。結果は火を見るより明らかだった。


「てめえこの状況わかってんのか?こっちは六人、そっちはお前を入れても二人。勝てるわけがねぇ」


「普通はな。でも、戦力差はそう簡単にはかれるものじゃない」


「いいだろう。お望み通り殺してやる。てめえら、やっちまえ!」


 リーダーらしき男から命令が下る。その言葉と同時にいちばん近くにいた二人が切り殺さんと接近してくる。剣を振り下ろしてくるが一歩下がるだけで回避、"ライド・フェルド"を顕現しそのまま横凪ぎに払う。

 二人まとめ首をはねる。頭部を失った体は血を噴き出しながら倒れた。


「今、何を……」


 闇の民から戸惑いが漏れる。俺の敏捷ステータスは四万を越えている。さらには身体能力強化、並みの動体視力では俺の動きを捉えることは難しいだろう。


「俺が前に出る!お前ら詠唱して待機だ!」


 リーダー格の叱責が飛ぶ。後方で指揮していたその男が納刀したままの刀を握り近づいてくる。俺の側までくると抜刀、水平に放たれた太刀は洗練された剣術居合スキル"霧咲"。俺を切らんとするそれは、空を切る。


 余裕で躱した俺は男の顔見る。

 笑みを浮かべていた。その理由は後ろの三人。詠唱が完了していた。


「今だ!」


 リーダー格が俺から距離をとりながら叫ぶ。次の瞬間、空中におびただしい数の黒い炎弾が現れた。


「この数の"獄炎連鎖"からは逃れられまい」


 火属性闇系統上級魔法"獄炎連鎖"、この魔法は闇を帯びた炎弾を数十個発生させ相手を襲う。さらに被弾する度に残りの炎弾の威力が上がるというおまけつきだ。それが三人分、普通に考えて避けることなど敵わない。捌くのも無理だ。だが、


「何をしてやがる、命乞いのつもりか?」


 俺は左手をスッと上げる。


「っ!今さらなにをしたって間に合わねよ!やっちまえ!」


 それまで空中で待機していた漆黒の炎が俺へと襲い掛かってくる。それに対し俺は笑みを浮かべ、フィンガースナップ。"パチン"という小気味のいい音が鳴ると同時に黒い炎弾が全て消える。


「てめえ、何をしやがったっ!?」


 俺の固有スキル"魔法無効化(スペル・バニッシュ)"、展開前後どの状態においても魔法、スキルの効果を消失させる。

 これは俺の魔力特性"完全なる無(ゼロ)"由来するものだ。


 魔力特性、それは誰しもが先天的に持つ力。効果の現れかたは人それぞれで、ステータスや通常の魔法・スキルに影響したり固有魔法・固有スキルとして発現したりする。

 俺の魔力特性"完全なる無"はこの世の全ての情報を存在の有無、イチかゼロに二分したときにその全てをゼロに書き換える、というものだ。そこから派生したのが先の"魔法無効化"。


 そんな事情を知らない闇の民たちは魔法が消えるという突然の事態に相当困惑している。俺はその隙を見逃さず後衛三人を切り捨てる。続け様に倒れる仲間たちに反応しこちらを振り返ろうとするがその手前で心臓を突き刺す。


「てめえ、いったい何者だ」


 血を流しながらも最後の力を振り絞り、男が口を開く。


「今から死に行く奴に答える義理も義務もない」


 そう返答したとき男はすでに絶命していた。

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