表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双翼の剣士  作者: 成盛 渡
第一章
5/21

第一章 4話 模索

 召喚された翌朝、早速本格的な訓練が始まった。昨日と同じ訓練場に呼び出された俺たち剣士組はザルムからの指示を待つ。


「昨日の模擬戦を見た感じ全員剣は持ち慣れているように見えた。だから型等はいじらずに、身体能力強化やスキルについて指導していく」


 ザルムが他の騎士団員に的を用意させ抜剣し構えた。


「まず身体能力強化だ。これは魔力を操作することによって一時的に身体能力を向上させる技だ。正直魔力操作の感覚は剣士などの前衛職は不得意とするところだが、これができるのとできないとでは天と地ほどの差が出る」


 淡々と説明しながらザルムは腰を落とし、的へと意識を向ける。その最中に何か不思議な力の奔流を感じた。これが魔力というものなのだろう。ザルムの内側で高ぶっている。


「これが最も基本的な身体能力強化だ。体内で魔力を飽和させるイメージで魔力操作を行う」


 丁寧なザルムの説明に真剣に耳を傾けていた俺たちだったが、次の瞬間ものすごい音が鳴りそれどころではなくなった。


 さっきまで目の前にいたザルムは先程用意させたまとめまで移動し剣士を振り切っていた。一拍をおき的が割れる。


「この全身を身体能力強化はバランスがよくどんな事態でも対処しやすい。まずこれから習得してもらおう」


 何事もなかったかのように説明を続けるが今の根目の前で起きたことは異常と言わざるをえなかった。


 的とザルムの距離はざっと10mはあった。それを今ザルムは一歩で縮めてみせた。他の連中も目を丸くしている。


 これが身体能力強化か。おもしろい。日本で暮らしていた頃には味わうことのなかった感情があふれてくる。さっきザルムが言っていたスキルというのも気になる。意地でもマスターしてやる。




「出来たのは二羽レイだけか……」


 朝の訓練の終わり、ザルムがそう呟いた。とりあえずの課題とされていた身体能力強化の習得はもっと難航するかと思っていたが最初の一回ですんなりとできてしまった。

 俺以外の奴はなかなかに苦戦していたらしく、また俺だけ出来てしまったことにひどく落ち込んでいる。


「そう落ち込むな。普通は一回でできたりしない。これは二羽レイが異常なだけだ。かく言う私も苦労の末やっと身につけた。お前達はこらからだ」


 ザルムが励ましの言葉を送っている。俺への発言だけひどいものだと思ったが、異常なことなのは重々自覚している。


 昨日の剣術といい何故か俺は戦いかたを知っている。剣術に関してはステータスの技能欄に載っていたからその影響なのだろうと勝手に思っていたのだが、今日の身体能力強化の件で違うのがわかった。絶対に違うとは言い切れないがステータスだけだ原因ではないのは確かだ。


「午後からの訓練も継続して身体能力強化をやってもらう。二羽レイには別メニューを考えておく。それでは解散」


 深く考え込んでいるといつの間にか 朝の訓練は終わり、自分の部屋へと戻り始める奴らが目に入る。俺も慌ててついていく。

 この世界に来てから妙に力が湧き出る感覚がする。剣術だけじゃなくもっといろいろなことが出来そうだ。ステータスにも人に聞けないような技能があった。手探りで出来ることを確認していこう。




 昼食をとり終えた俺はこの城の図書室へと来ていた。セレンに利用許可をとりにいったところ好きに使ってくださいとのことだった。


 何故俺が図書室に来ているのかと言えば、魔法やスキルについて調べるためだ。ザルムに聞いたところ剣士のような前衛職は基本的には魔法を使えないらしい。もちろん例外はあるのだろうが通常の魔法は使えて初級や中級までらしい。

 しかしこの世界にきてから抱いた既視感は剣術や身体能力強化だけではない。魔法も使えそうな気がしているのだ。そうは言っても感覚だけでは使えるわけもなく、人にも聞けないため仕方なく自分で調べることになった。しかし、


「それで図書室で何をするの?」


 図書室へ行く道すがら佳奈とばったり出会ってしまった。どこに行くのかと聞かれる答えると私も行くと言ってついてきてしまった。あまり人に見られたくなかったのだが仕方ない。それに佳奈の職は確か魔術師だった。魔法の行使―――魔術に長けている職、魔法を使う感覚だけでもそれとなく聞いて見よう。


「魔法とかスキルとかこの世界ではどういう扱いになっているのか少し気になってな。それを調べようと思ってな」


「でもレイって剣士でしょ?魔法は使えないんじゃ……」


「完全に使えないわけじゃないらしい。それにスキルを使うにしても魔力を使うらしいから。知識を持っていても損はないだろ?」


 本当は違うのだが答えたないのも怪しまれる誤魔化しておく。


 そうは言っても魔法を使いたいの本当だが。


 少し調べてわかったことは魔法は決められた詠唱をすることで魔力を媒介として消費することで事象を引き起こし、スキルは詠唱こそ必要ないものの魔力を消費発動するらしい。

 佳奈にも感覚を聞いたがまだ学び始めたばかりで習得はできてなかったようだ。頼りになるのはここの本だけだった。今日の夜にでも一人で魔法を試してみよう。




 夕方の訓練を夕食をとり、俺は城の外の森に来ていた。月が上り夜空には無数の星達が輝いている。星についても日本で見ていたもの違い否が応でもここは異世界なのだと改めて感じさせられる。


 適当な場所を探して歩いていた俺は森の中に開けた土地を見つけたのでそこで魔法を試すことにした。


 今日の夕方の訓練ではザルムにスキルの使い方を教わった。この世界において魔法とスキルの違いは属性があるかないかだけだ。魔法には火・水・風・土の基本属性と派生属性というものがあり発動するときに魔力をなんらかの属性に変換するがスキルにはそれがない。つまりスキルは無属性の魔法ということになる。剣術や体術と言った技能のなかにそれ特有の技能があったり、そもそもスキルが技能欄に載っていたりと種類は様々あるらしい。


 スキルの使い方も無事習得し魔力といものの感覚を掴めた。とりあえず初級の魔法から使ってみることにした。


「火よ汝が威光をここに示せ」


 お約束の通り魔法を使用をする際には詠唱をしなければならい。恥ずかしい台詞を言いながら手を前に掲げ魔力を込めるとサッカーボールくらいの火の玉が飛び出した。これが火属性の初級魔法"火球"だ。

 魔法を使えたことに感動しながらも、やはり魔法にも既視感を感じる。この世界にも見覚えがあるし俺の夢やその中に出てくるセレンのこともある。異世界に召喚されるという事態も十分におかしいのだが、おかしなことばかり起こっている。


 それにしても魔法発動する時の詠唱をどうにかしたい。恥ずかしいのもあるが戦闘のときに詠唱が隙になる。練度が上がれば詠唱を短縮できるらしいが詠唱しないのがいちばんいい。普通は無詠唱で魔法は発動できないらしいのだが俺のステータスの固有技能欄に詠唱過程消去(ゼロスペル)というのがあった。仰々しい名前だがこれがあれば無詠唱で魔法を発動できるかもしれない。


 今度は詠唱をせずさっきの火球をイメージし魔力を集める。そうするとさっきと同じように火球が発動した。やはり無詠唱で発動できた。そうなればもっと試したい魔法もある。幸いどういうわけだか俺の魔力は無限にあるらしい。心置きなく魔法を試せるというものだ。


 


 初級から上級までいろいろな魔法を試して俺は自分の部屋へと戻って来ていた。一つわかったのは魔法の発動も疲労を伴うらしい。魔力が無限にあるといっても好き放題魔法を発動できるわけない。だがこの世界での戦闘の幅が広がったのは確かだ。できるだけ身を守る術を確保しておきたい。



 それにしても一つ不思議なことがある。この世界に来てたから例の夢を見なくなった。今までは毎日のようにみていたのに、今はさっぱりだ。やはりこの世界に召喚されたことやセレンにあったことが関係しているのだろうか。機会を伺ってセレンと少し話でもしてみよう。そうすれば何かわかるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ