表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双翼の剣士  作者: 成盛 渡
第一章
3/21

第一章 2話 召喚とステータス

「ようこそいらっしゃいました勇者様方。私はセレン、この国の国王代理をしております」


 見知らなぬ森でそう彼女―――セレンと名乗った銀髪の少女は告げる。何故彼女ここにいる?俺は一瞬これはまた自分の夢ではないのかと疑ったが、すぐに違うと判断した。今まで夢の中にクラスの連中がいたことなんてなかったし、俺たちはさっきまで教室にいたはずた。


 これは夢ではなく現実。なんとなくそれだけはわかった。


「急にこんなところに移動させられて混乱されていることとは思いますが、まずは落ち着いて聞いてください」


 不思議と引き寄せられる声音だ。男女関係なく聞き惚れていたことだろう。まだ不安な顔をしている者も多いが、話を聞けるくらいの落ち着きを取り戻している。それが計算してのことだったのか彼女が話の続きに入る。


「皆様には、我々光の民を救っていただきたいのです」


 クラス連中がどよめく。何をさせられるのかという疑問から不安が強まったのだろう。斯く言う俺も少し不安になっているが、不思議と冷静を保っている。


 おそらくここは俺たちがいた世界とは別の世界――――異世界だ。先程から周囲を見渡して見てもほとんどが見知らない植物だ。日本どころか地球中にもないようなものまである。それだけで決めるのは早計かもしれないが、ほぼ間違いないだろう。


 とにかく今情報が必要だ。セレンと名乗った彼女のことも確かめたいが、この先何があるかわからない。先の彼女の発言も気になる。一番効率がいいのは本人から話を聞くことだろう。とりあえず話しかけてみることにした。


「光の民を救う、とはどういうことでしょうか?国王代理殿」


「それについては……っ!あなたは……」


 俺を見るなり彼女が目を見開く。そして悲痛に顔を歪めた。俺が何かしたのだろうか。


「いかがいたしましたか?」


「いえ……何でもありません。それよりも我々を救っていただく件について、でしたね。説明して差し上げたいのは山々なのですが、まずは城へと参りましょう」


 そう言われてよくよく見ると少ししたところに大きな建築物があるのが見える。あれが城なのだろう。まさに西洋の城といった感じだ。


「それでは私について来て下さい」


 彼女が背を向け城へと歩き出す。その後ろ姿はどことなく悲しげだった。




森を歩いて数分後、俺たちは城門前へと辿り着いた。


「こちらです」


 銀髪の少女――――セレンに案内されるがまま門を抜け城内へとはいる。そしてそこには御伽噺の中だけだと思っていた光景が広がっていた。豪奢な装飾が施された城内は仕事中と思しき召使いや武装をした騎士たちで埋め尽くされていた。


 その光景にクラスメイトの大半が圧倒されているが、俺は割と冷静だった。それどころかこの光景になぜだか懐かしさを感じている。安心すらしてしまうほどだ。


「皆さん。勇者様方をお連れしました」


 静かだがよく通る声でそう言い放った。城内が静寂に満ち多数の視線がこちらへと向けられる。そして次の瞬間、


「うおおおおおおおっ!」


 城内にいた者たちが一斉に歓声を上げた。あちこちから

「勇者様万歳!」「これで俺達は救われる!」などの声が聞こえてくる。

 

 勇者とはなんだ?それに俺達に対するこの反応も気になる。この世界では何が起こっているというんだ?そんなことを考えていると


「セレン様!」


 前方から筋骨隆々で少し強面の男と眼鏡のインテリ風な男が歩いて来た。


「スタード、ザルム!ちょうどよかったです。これから勇者様方に今後のご説明をしようと思いまして」


「ちょうどよかったではありません!護衛もつけずに外出など!それに勇者召喚の儀などもっての他です!」


眼鏡の男の方が怒声を飛ばす。セレンが申し訳なさそうな顔になる。謝罪をしようとしたのか口を開きかけたが


「硬えこと言うなよザルム。セレン様も反省してるみたいだしよ


「しかし……」


「それによ、召喚された直後に俺達みたいなのに囲まれてたら勇者達も混乱するだろ?セレン様が一人で言ったのはそいうい意図だったと思うし、結果的に正しかったと思うぜ」


 強面の男の言葉によってザルムと呼ばれた眼鏡の男は言いくるめられてしまった。ザルムは少しの無言でいたが、


「はぁ……分かりました。しかし今後無茶はなさらないように」


 ため息をついてそう言った。その言葉にセレンは深く頷いていた。そして俺達の方へ向き直り話の続きをする。


「謁見の間で事情を説明いたします」


 そう言ってまた歩き始める。ついて来いということなのだろう。スタードと呼ばれていた男とザルムがセレンの後を無言で追随する。俺達はその後ろをついていった。




 案内されるがまま俺達は謁見の間へと到着した。俺達のクラスは三十人ちょっとの人数なのだが、俺達全員が入ってもあと何百人と入れそうなほどこの部屋にはまだ余裕がある。改めてこの城の大きさを実感した。


「事情を説明いたします。そうですね……まずはこの世界の情勢からお話いたしましょう」


 セレナが再び話し始める。俺達に今最も必要なのは情報だ。セレンやこの城の奴らがまだ信用できるわけではないが、とにかく何も分からない今の状況は危険過ぎる。だからセレンの話を聞き漏らすわけにはいかない。


「この世界の人間は二つの民族に分けられます。一つは私達、光の民と呼ばれている民族です。そしてもう一つは闇の民。名前の通りこの二つの民族は対をなし、遥か昔から争ってきました。皆様にはこの戦いに参加していただき、光の民を勝利へと導いて欲しいのです」


 クラスメイト達がどよめき出す。しかしそれは無理もないだろう。俺たちは今戦争をしろと言われたのだ。それで混乱しないなど平和な現代の日本で暮らしてきた俺たちの中には一人としていないだろう。しかし、


「一つ質問があるんですがいいですが?」


 気になることがあり俺はそう口にした。


「言葉は崩してもらって構いませんよ。私達は救っていただく身。例えば国王代理といっても皆様の方が位は上です」


 今まで国王代理ということでそれ相応の口調で接してきたが、その国王代理にそう言われたのならお言葉に甘えよう。


「じゃあこんな感じで話させてもらう。何故光の民を救う勇者とやらが俺たちみたいなガキなんだ?」


 これは誰もが思っていることだろう。俺達はただの高校生だ。急に戦えと言われても戸惑うし、そんな力も持ち合わせていない。


「それは皆様、異界の方々はこの世界の人間よりもステータスの平均値が高く、他にも特殊な能力をお持ちだからです」


 セレンが言ったことは俺が大体予想していた通りのことだった。


 誰にも言ったことはなかったが趣味で今の状況のような創作物は一通りよんでいる。だから異世界に召喚されたということも、今のセレンの発言もスッと理解できた。


「これは見てもらった方がいいですね。皆様、"ステータス・オープン"と唱えてみてください」


 そう言われてクラス連中が次々と呪文を唱え始める。俺は人前で呪文を唱えるのがなんとなく恥ずかしかったので、一人のときにステータスを見ることにした。


「この世界の民の初期ステータスの平均値は生命力が五千、それ以外のステータスが少し千を上回るのに対し、皆様はそれを軽く越えます」


 セレンの言うことが正しければ、俺たちはこの世界の人間より単純に強いということになる。


 周りを見てみるとクラスの連中はファンタジーな要素と才能があると言われ、少しテンションが上がっているようだ。


「ステータスの項目に魔力系統というものがあると思います。私達光の民には"光"、闇の民には"闇"と表示されますが皆様には"無"と表示されます。これは魔法的なスキルに付随する力でこれが相反している相手には魔法等による攻撃の威力は大幅に削られます。しかし皆様の系統は"無"です。皆様は闇系統の攻撃をもろに受けてしまいますが、攻撃の威力を落とさずに当てることができます」


「つまりは俺達が闇の民を倒せる、光の民を救う最後の希望というわけだな」


 セレンの話に割って入る。話の流れから推測すればそんな感じだろう。


「はい。皆様、いかがでしょうか。光の民を救うために戦っていただけないでしょうか?」


 一瞬場が静まる。一拍をおいて、


「おっしゃー!みんな、やってやろうぜ!」


 雄輔が一番に雄叫びをあげた。雄輔に続いて他の奴らからも賛同の声が上がり始める。昔から雄輔は調子に乗る奴だか、クラスの奴らもというのは予想外だった。

 しかしこの異質な状況で浮かれるのは非常に危険だ。雄輔には後で注意しておくとして、俺だけでも冷静でいよう。


「皆様ありがとうごさいます!」


 セレンが歓喜して少し涙ぐんでいる。それほど追い詰められていたのだろうか。


「これからのことは後々お話しさせていただくとして、お一人ずつお部屋を用意しております。食事の時間までごくつろぎください」


 使用人達によって各部屋と案内される。


「レイ!お前ステータスどうだった?」


 雄輔がいつもの調子で話しかけてきた。


「俺はまだ見てない。後で見るよ」


「何だ。まだ見てないのか。俺は凄かったぜ!生命力が一万越え、あとが大体八千ぐらいだった。本当にこの世界の人間より俺達の方が強いんだな!」


 雄輔が自分のステータスをカミングアウトしてくる。だがあまり他人にステータスを教えない方がいい。雄輔に少し注意しておこう。


「おい、俺だからいいが、あんまりこの世界の奴らにステータスを言いふらすのは止めておけ。何が起こるか分からないからな」


「そういうもんか?まあいいや。また後でな」


雄輔はさっさといってしまった。まったく分かっているのかいないんだか。また後で注意しておこう。




 用意された部屋へと入る。部屋に入るとすぐさまベッドで転んでしまった。数時間しか立っていないが、このドタドタのせいでものすごく疲れていた。


 俺はまだ見ていなかつた自分のステータスが気になり"ステータス・オープン"と呟いた。すると目の前に数値――――――などの情報が見えてくる。


 少しワクワクしながれ見てみると、次の瞬間には目を見開くことになった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

リヒト(男)

クラス:剣士 Lv:?

○生命力:63400/63400

○筋力:49650

○敏捷:41230

○魔力:∞

○魔力系統:光・闇

○魔力特性:完全なる無(ゼロ)

○技能:剣術・全属性適性・全属性耐性・状態異常無効・魔力操作・魔力感知・気配操作・気配感知・威圧

○固有技能:光翼の顕現・闇翼の顕現・超越する光(オーバーシャイン)超越する闇(オーバーダーク)詠唱過程消去(ゼロスペル)魔法無効化(スペルバニッシュ)無色(ノーカラー)・スキル生成・言語理解

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 いったいどうなっているんだ?このステータスは異常にも程がある。セレンが言っていた異世界人のステータス基準を明らかに逸脱している。しかも俺達の魔力系統は"無"のはずだ。それなのに俺の魔力系統は"光"と"闇"両方だ。

 他にも色々と思うところはあるが、一番ツッコミたいのは名前だ。誰だよ"リヒト"ってのは……。


 今日一番の混乱が俺を襲った。とりあえずセレンや雄輔にステータスのことを聞いてみよう。


 そうして俺は俺は思考を放棄し、眠りへと意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ