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デビルソング  作者: らっきー
11/25

影山家

黒いレインコートの男は和傘をさしながら歩きづつける。今さっき暗殺した男の返り血で濡れた手は雨に流され、

防犯カメラ対策のための妨害電波を帯びた特殊な素材の黒いフード付のレインコートはほとんど重さを感じさせないが、雨も血も完全に防いてくれる。


(あの男は何人目だっただろう)


一瞬、殺した男の事を思うが、意味のない事だと思い直し暗殺された男の顔は闇に消えていく



影山三目は子供の事から雨が大嫌いだった


ミツメは物心ついたときから、不快な臭いに悩まされていた。思い返せば生まれつきかもしれない。


生臭いような 血なまぐさいような 鼻につく不快な臭いだった。


しかし、雨の日だけはこの臭いが薄れる。雨がこの臭いを流い洗してくれるのだろうか。


ミツメの父親は内戦で戦死していたために 既にいなかったが

母親はミツメの異変に気づくと嫌がるミツメを連れて、沢山の病院を回り病気を治そうと必死だった


ミツメは小さい頃から雨の日になると病院に連れて行かれる。 そんな日々が続いた。


ミツメが小学四年ほどの頃に母親はようやく息子の病気に理解があり、治療法を見つける可能性がある人物を見つけだす。



木村三郎という遺伝子の研究をする研究者であり、人工血液などの精製に携わる医者でもあった。


母親は得体のしれない治らない息子の病気はもしかしたら、呪いのせいかもしれないと 科学医療では息子を救えないと半ば諦めていたときに、この医者に出会い 希望の光にすがりついた。


呪い


母親がこの病気は呪いのせいではないかと考えるのには根拠があった


影山家には秘密があった


影山家には代々受け継げられた家宝があった。


血桜である


血桜は番傘の仕込み刀で 影山家が脈々と受け継ぐ暗殺剣術に用いられる暗殺刀だった。


白い番傘は何人もの返り血を浴びて赤く染まり血の桜が咲いているようだった。



影山流は居合い術と突き技を主に構成された剣術で、戦で使われるような剣術ではない


路上での斬りつけ打突 室内での小太刀での居合い、打突を目的とし、暗殺術として生み出された剣術だった。


血桜は路上での暗殺に使用された影山家に代々受け継げられた魔剣であった。


とくに影山家が活躍したのは幕末である。


暗殺が暗躍した幕末には、主を持たない傭兵ような影山家は、幕府側 反幕府側、両方から雇われ 血桜を用いて数多くの暗殺を行う。



明治維新後、影山暗殺術は活躍の場を失い 表舞台から姿を消したが暗殺術の技法と家宝血桜は脈々と受け継げられたきた。


母親はこの歴史上にも存在しない影山家の呪いが息子に得体のしれない病気をもたらしたと怯えていたのだった。



ミツメは母親が小さな希望の光を見つけたころに初めて血桜を握る。


代々受け継げられた影山流だったがミツメの母親の代で男子が生まれず、母親は婿養子を取ったが、この婿に剣術の才能はなく、 影山流暗殺術を修めることが出来なかった。


そして、婿は影山流暗殺術をこのまま絶やすことを良しとしなかったが、まだ生まれぬ我が子に暗殺術を伝える事も正しいのかと悩み


暗殺刀血桜とともに正確に記した影山流暗殺術のデータを自宅の地下の道場に道場ごと封印する


そして403事件が起こり、自衛隊勤務だった婿は親日軍鎮圧のために出兵するのだった


出兵時に婿は自分の精子を冷凍保存し、内戦終結数年に生まれたのが影山三目であった。



ミツメは嗅覚の障害のために外出するのが苦手であった。


雨の日は比較的に臭いが弱まるために外出しやすかったが、母親の連れて行くのが病院ばかりなので


雨の日は憂鬱だった。



それなりに財のあった影山家は学校にも行きづらかったミツメに金をかけ個人教育をさせたためミツメは無知な人間ではなかった。


そんなある日、ミツメは長い自宅生活に飽き飽きしていた頃、没頭できる生き甲斐を見付ける。


当主が戦死した影山家は古物商を生業とするため大きな屋敷の一部を改装する事があった。


まだ小学生ほどのミツメは大きな物音を立てる改装に興味をもち、その中で、今まで気づかなかった封鎖された地下室への入り口を発見する


誘われるように地下室に入ると、ミツメの目に広がったのは薄暗い道場であった


そして、魂抜きがされた神前に置かれていたのが


血桜である


ミツメはためらいもなく、この暗殺刀に近寄り仕込み刀を抜刀する。


鈍く光る刀身に心を奪われる。


ミツメはそれから毎日地下の道場に忍び込むようになる。


血桜に会うために


小学生高学年ほどの頃だろうか


地下の道場に血桜とともに飾られた掛け軸に目がいく。生首の掛け軸は恐ろしく不気味であまり見たいものではなかった。


しかし、気づく生首の血の涙を流す右目に何か埋め込まれている。


影山家暗殺術のデータであった。


ミツメはデータを解析し理解した


血桜が何に使われ、この地下の道場が何をする場所なのか


それからミツメは毎日、毎晩、血桜を振りづつける事なる


母親はミツメの異変に気づいたがこれまで見た事のない息子の生き生きとした目に息子を止める事が出来なかった。


ミツメはデータから作り出したホログラムをAiに操作させ、それを師匠に暗殺術を徐々に修めていく


影山流は十の太刀技から構成され、


高校生ほどになる頃には九の太刀技まで会得する。


最後の十の太刀だか、コレが謎でデータには

代々影山家が持つ東北の奥地にある山が記され、その山にある洞窟までの道が示された地図があるだけだった。


ミツメは意を決し、雨の日を選び血桜を抱え、地図に記された山に向う。そして、、、



時には戻り、ビジネスホテルの路上裏通りで暗殺を成功させたミツメはいく程か歩き、用意された黒いワンボックスカーに乗り込む。


黒い車には見張り兼隠蔽工作担当の仲間の上下黒いスーツで黒いネクタイの三人の男が既に乗っていて、ミツメの帰りを待っていた。



黒いワンボックスカーは都心の道を雨の中、何事もなかったように消えて行った。








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