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異世界転移 〜神様からの招待状〜  作者: 菜月 水仙
序章 従者達の鎮魂歌
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第6話「理想は程遠く」

ごたついて更新遅れました

第6話「理想は程遠く」


「あの馬鹿そこまで愚かだったか…」


アラヴィルが苦々しくそう呟くとスラヴァはそれに同調する。


「誠に申し訳ございません!!このような暴挙に出させないのが私の役目でしたのに…」


「スラヴァ殿、今回は仕方ないでs」


「黙れケアル、殺すぞ」


「なんでこう当たりが強いのかなこの人たち…」


ショボくれてるケアルを放置し報告された

『ファルスによる評議院内での里長不信任案提出』

これを対処すべくアラヴィルとスラヴァは話し始めた。


「一層の事ぶん殴りたいがあの連邦が後ろ盾なら話が別だ。それこそ橋を叩いて歩くぐらい慎重に行動しなければ」


「なら連邦を襲撃するとかは?」


「本末転倒だろ…彼の連邦には少なくとも5国は絡んでる。しかも魔法の具現者エルフ、武を極めしウルフ…あの2種族が援助しているらしいしな……せめて奴の掌が全てわかれば」


いい案は1つも出てこずそこから15分経った。


…この15分で最善の案とは言えないが奴の行動を把握しその通りに動けばボロを出す案を思いついた……アラヴィルの隠密は時間がかかり過ぎてダメだし、スラヴァの交戦は最悪里内からの追放だし…それならケアルの不正はいい線…待てよそれらを応用すれば!


「閃いたぞ!最善かはさておきいい案が思いついた!!」


首脳陣であるアラヴィル、スラヴァ、ケアルに作戦を教える。もっと手際よく策士ならできるだろうが策士なんて呼ばれたことはない高校3年までの知識を有する俺の案だ。乗らなくてもいい、ただこいつらの作戦の要素を考えさせる起爆剤になれれば。


「…なるほど、どちらかというとケアルの案に近いですな。ですが結末は?」


「わからない」


「はぁ?」


お、アラヴィルのこの表情はなかなか見れないものなんだな。だって周囲もびっくりしているもんな。


「わからない、長く近くにいた人の行動理念とかはわかるけどファルスとやらの細かい行動理念はわからない…だからこそのわからないだ」


「ということはファルスの動きがわかれば…」


「いや違う、スラヴァは対立者として接しているだろ?俺が欲しいのは親しい人物との接し方。そうしたら理念も自然にわかる」


「ぁ…」


会議場…と言うには流石に貫禄がない商管連の広い玄関に広がったのはセルツが溢した声だった。


「何か知ってるのか?」


「いえ知ってるとかではなく…ファルスにいつもくっついている奴が評議院にいる」


「あぁ、あいつか…だかあいつは喋らんぞ?」


「いや知れるなら知りたい。そいつの名前は?」


「テセルマ…スラヴァも言ったけどほんとに何もしゃべらないんだよ……」


無口……ね。まぁ候補の一人にしておこう。他はさっきからだんまりのミニレ?って言う奴とセルツか、あと一応スラヴァもだな。


「どうかされましたか?」


アサヒがそう聞いてくる、その顔は不信の一言で片付けれる。


「いや、なんでもない。ところでさっきの繰り返しで申し訳ないがこの『不信任案提出』での採決はこの里の民なんだよな?」


「えぇ、この里では個人を尊重しています。たとえ評議院での提示であっても私の提示であっても全て里の民が採決します」


「だからこその自信か…」


投票をすでに操作しているから自分の勝ちだと…しかもスラヴァの話じゃあんな馬鹿な方法で勝ったと確信しているらしい……ぐうの音も出ないって言う日が来るとはこれまた滑稽だな。


「んじゃその路線で行くか」


少し作戦の誤差とか考えたかったから帰って練り直そうとしたがそういや俺の家じゃねーんだよな。


「あ、祖先様」


そりゃそうだよな、どこ行くんだって言う話だよな。


「このあとすぐ採決ですよ?」


「…はぁ?」


「アサヒ、最後まで言ってやらんとダメだろ。採決は提案された日の正午または深夜って」


「てめーだよ!熱苦しいおっさん!!!」


玄関で放たれた怒鳴り声は虚しく反響して徐々に力を失っていった。



ーーー



クソ…プランがすでにズタボロだよクソ……決めつけでの行動はやっぱりやめた方がいいか…


ぶつくさ歩きながら道に石があったら蹴るグレた男はこの里の入り口にあった広場に連行される。


「やぁやぁ里長殿、先程ぶりですな」


「会ってから2時間後に不信任案提出するうつけはお前ぐらいだろうよ」


「喧嘩腰なのは今だけだぞ?」


「化けの皮を剥がすのが早すぎるぞ?三下」


既にバチバチしてる当事者達を放置して俺はアサヒとミツキについていく。


「こういう採決って前にも会ったのか?」


「えぇ、あれは評議院メンバーを決める際でしたね。今みたいにあの2人だけ争ってましたよ」


「へぇ、てことはファルスとかいう馬鹿でもここでは最終選考まで残れんだな」


「いえ、単純に運ですよ。票を操作したと本人は思っていますがあんなザル操作、父さんが気づかないはずがない」


…やっぱそこ考えるべきか。


「当時の候補者は?」


「あの五人だけです。定員も同じ数でした、毎年少し多いんですがね…」


「ふーん、そういえばアサヒが会話したことない人っているの?」


「ずいぶん話が変わりますね。そうですね…父さんが行う家庭調査の際に里全員の家に行くのでいませんね」


「なる、ほどね」


いや厳密にはいる、1人だけ。なぜ頑なに喋らない?可能性としてはそれがかっこいいと思って斜に構えてるか、精神的トラウマが今尚あって喋れない、最近この里にやってきた、または…


「アサヒ、武器の携帯ってしてるか?」


「?えぇ、この採決の際でも戦闘できるように武器は常n」


「しまっとけ」


間髪入れずに命令するがアサヒは疑問しか浮かばなかったのかこちらを見返してくる。


「できれば武器を持ってないことを演出したかったが、そこら辺に置いとけ」


「一応なぜと言わせてくれますか?」


「いやダメだ、多分傍聴されてる。ただいつでも斬れるようにしてくれ」


会話が終わると同時にアサヒは目の前に剣を突き刺し以後喋らないでくれた。喋っちゃったらボロ出そうだったからな、そこの配慮は嬉しいな。


「さてと…策略通り物事は進んでくれるかな」



「さて、全員集まったようですし開始しましょうか里長殿?」


「あぁ、さっきと始めろ。テメーのミスが致命的なものってわからせてやるよ」


「チッ…イキれるのは今のうちだぞクソ長……」


「その化けの皮が民衆に聞かれなくてよかったな?今は安泰だろうよ」


「…では!これより採決を開始する!!」


罵倒の応酬から始まった採決はまず説明から入った。里長に対して続投して欲しい者はスラヴァへ、解任して欲しい者はファルス、決められないので延期て欲しい者はミニレ、解任しなおかつ自分がその候補になる者はセルツ、無効投票でいい者はテセルマ。


それぞれの評議員の前に所有物を置くという方法だった。もちろん俺は部外者だから見学だ。


「さぁ!並べ!!」


民衆三万人、軍部一万人、役人一万人が…総勢五万人が一気に物を置いていくんだ。そりゃ圧巻だしなによりシュールだった。



ーーー


「嘘だ…そんなはずはない……軍部の者は動かずとも少なくとも民衆の半分と役人の票は…」


結果は続投一択だった。ファルス信者だとされる者達は物を置いていたが多くとも百行けばいい方だ。それに比べ隣のスラヴァのところには他全ての四万九千九百近くの物品が置かれていた。


「どうだ、俺の人望の厚さ」


「嘘だ!そんなはずはない!!貴様に人望と呼べるものは何1つない!」


軽くドヤ顔のアラヴィルと半乱狂のファルス。


完璧な作戦ほどその通りに動くはずはないんだ。だって行動には偶然起きる要素が必ず1つはある、それを操作するのが前提条件…完璧ってことはその全てに狂いがないってことだ。まぁー無理だろう。

そもそもお前の作戦がクソすぎるからな…


「運要素ではこっちの勝ちだ。次は…」


俺が呟くと次に用意していた策が動き出す。


え?お前それブーメランじゃねって??

その答えは冒頭に言っただろ?結末はわからないって。完璧な作戦ほど縛りは無いからまだそこまでに運びやすいんだよ。望んだ答えになるのが三割ならいい方だよ。


「ファルスさんの家に怪しい書類があったよー」


走りながら笑顔のその少女は、ミツキは片手にたくさんの書類を掲げ広場に向かってくる。

それをすぐさまアラヴィルに渡すとこちらに走ってくる。


「あんなのでほんとにあの鼠動くの?」


「観察した結果ではな」


さて、アラヴィルの隠密を使ったし次は茶番でもしてもらおうかな。



ーーー



「何故私の家に入った!?不犯侵入だぞ!?」


「民間と商管連から不正の調査依頼が来ていた。そのタイミングが重なっただけだろ」


「……クソ…」


「ところで長、その書類を見ても?」


ドヤ顔状態で煽りまでし始めたアラヴィルに会ってから無言を貫いていたミニレが確認を催促した。


あいつ、良い声だな。同じ部類かと思ってたのに…いやあいつ男だしそっち路線でも無いよ?けどこれでケアルの不正を実行できる。


「あぁ、正義を掲げるお前に見せた方が早いだろう」


「待て!そいつが嘘ついたら我g」


「俺がいつ不正をしたって?」


いやイケボで脅しボイスはちょっとご褒美判定…


「武器の流失、商業地区での不正売買のリストか…なるほどなるほど。言い分はあるかファルス評議員」


「誰かの陰謀に決まっているだろう!」


「それが貴様の正義か?なら長との言い合いでもするか?やめておけ。貴様の正義は薄っぺらい、そして何よりもそのビジョンを本人が見えていないのが問題だ」


「ハァ!??おのれミニレ!あの方の敵になる気か!!」


「ファルス評議員、貴様のような愚図もこの評議院の1人だ。そしてスラヴァ評議員もな。この2人の正義は少なくとも正しかった、だからこそ評議院内での言い争いを止めなかった。どちらも先を見通し将来を考えていたからだ。だが今の貴様はどうだ?あの方とやらに気に入られたいなら動いているようにしか見えない。そいつもこのリストでわかるがな」


「クソ!テセルマ!!あの紙を燃やせ!」


「……」


ミニレ諸共狙われた火の魔法は対極である水によって相殺されてしまう。俺じゃないよ、だって俺無力だもん。


「スラヴァ!!貴様かぁぁぁぁあ!!」


「評議院内での中立が動いたんだ、こちらも動くに決まっているだろう」


アラヴィルと評議院全員がいる壇上では攻撃が使用されたためミツキが誘導避難を開始する。

俺は見てるだけだよ。


「セルツ!貴様はどっちに付くんだ!!」


「ぼ、僕は…恩のあるアラヴィルさん…か、な?」


これでファルスも終わりだろう。そこまで強そうじゃないし三下っぽいし、何よりミニレを直接攻撃できない時点で察したがな。


そんな考察を練っている俺を嘲笑うかのように状況が一変する。


「やっと機は熟したか…」


言葉を零したのはテセルマだった。直後、ファルスへ向け魔法陣を杖で描く。発動したのか魔法陣が輝くと光を放ちファルスへと飛んで行く。真後ろから放たれたその魔法を交わすことできずファルスは直撃しその場に倒れ込む。


そもそもおかしい点があった。何故あのテセルマは魔法を発動できたのだ?対抗したスラヴァは咆哮から発生した水によって対応したのに奴は明らかな魔法陣が空中に浮かんでいた…


確か連邦の援助にいたよな…森人族(エルフ)が……


「基本的に大人しい竜人を竜種と同じ生態レベルにするにはやはり怒った時に弄った方が成功率が良いのよね」


咄嗟にアサヒの方を見て声を荒げてしまう。


「結局はスラヴァの戦闘案か!アサヒ斬r…」


しかし荒げた声が持つはずであった力は無くなり唖然としてしまう。アサヒも同様の顔を壇上に送っていたからだ。


強者が、ましてやあの化け物と遭遇しても引けを取らなかった男が余裕を無くしている。それがどれだけ恐ろしいことか。少なくとも今アサヒは困惑と恐縮をしている。


一体誰に?そう思い壇上へと振り返る際に声が聞こえた。


「貴方だったんですね…私の祖先の大切なお宝を奪ったのは……」


声は確かにミツキだ。ミツキなのだが…怒気を身に纏い、いつものふわふわした様子はない。

ましてや髪は翠ではなく黒に近くなり激昂しているのを表現しているのがわかる。


「あーこれ?とても使いやすいわ。魔法を扱うものなら誰もが欲しがるでしょうね、貴方みたいに」


いつもフード越しのテセルマ…いやそれは偽名だろう、以降エルフと呼ぼう。そもそもエルフの目的は?あの武器が欲しければ撤退しているはず。ならそれは序の口ということだ。真の目的は…


「アサヒ!丸腰のミツキとおっさん一人じゃどうしようもない!!お前も参戦しろ!」


「いえ…どちらかというとこの里そのものの護衛をした方がよさそうです…」


「はぁ?」


「いつも天然なミツキですが魔法に関しては誰も横に並べないくらいの天才です…ましてやそこで止まらないで独自魔法まで形成してしまうほどに…」


「…ならその魔法の威力は?」


「一つ打てばこの里を吹き飛ばせれるかと…」



ここにきて作戦そのものの崩壊ですか?わかりましたわかりましたやってやるよこんちきしょうめ!!


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