27話 復活の……
リーフ街の北側にある小高い場所の一角に墓地があり、
リーフ街で亡くなられた人たちの遺体は、この墓地に埋葬される。
サーベルウルフに殺されたバムの遺体も、ここに埋葬された。
アス村から帰ってきた冒険者パーティー【インダルジ・バトル】の
私とミウラは、バムの墓石に花が多く置かれ、
お別れをする人たちの列が続いていて、リーフ街に留まっていたホォイと共に、
その列を見ながら、話をしていた。
「バムの人気はすごいな。これだけ慕われてる男なら、
バムも天国で微笑んでいるだろうな」
私は、並んでる人たちを見ながら、ミウラの言った言葉に対して
「何を言ってるの! 私たちを置いて行って……微笑まないと思うわ!」
その言葉に、
「お前たちを残したのは、心残りだろうが、魔物と最後まで戦えて、
死ねる……俺もバムの様な生き様にあこがれる」
ホォイは、そうでありたいという気持ちを込めて言い、
悲しむようにバムの墓の方を見ているミウラは、「そうだな」
と言って下を向き、悲しい目でホォイを見つめる私は、
「あなたが居れば……魔法で攻撃が出来るあなたが……
涙が目を潤ませて、零れるのを指で拭きながら、
「ごめん、何度も同じことを……」
「いいさ、俺も依頼など受けずに居れば良かったんだ!!
バムとスゥに遠慮しなければ……」
ミウラは、ホォイの肩に手を置いて
「先が分かれば……神様になれるが、俺たちには分からない。
だから、後悔しないように生きていかなければならない」
ミウラを睨んで
「アス村を急に飛び出して、イチャイチャした人は、
後悔なんてしないでしょうに!!!」
私は、激しく言い。ミウラは困ったような顔をしていて、
「俺にもよく分からないんだ!! なぜ、此処に来たのか!!」
「わからない? あなたの女の所に行くのに??」
ホォイが間に入って
「そういう時もある、マーチネル、あまり言ってやるな!!!」
「わかったわよ!!」
拗ねたように私は言い、バムの墓の方を見ると、
並ぶ列も途切れてきて、私たちは、バムの墓の方へ
歩き出しながら……
「ドラゴンは、近衛騎士団に退治されて、しばらくは脅威がなくなるな」
「そうね、【アポロ】の坊やたちが、きちんと足止めしていればね」
と言って、クスっと笑っている私を見ながら、
「大丈夫だろうよ。俺たちはCクラスだが、あいつらはAクラス。
簡単にやられることはないだろうよ」
「そうだけど、アケミやキョウコが足を引っ張りそうな感じだけど……」
クスクスと冗談ぽく笑い、ホォイは首を傾けながら
「? アケミ? 【アポロ】のメンバーは何人なんだ!?」
「3人よ! アケミは……不思議な魔術師ね」
「アケ……不思議な……か。足を引っ張ることはないだろう。
マーチネルは、女には厳しいな」
私は、斜め下から眺めるようにミウラを見て、
「なぜ、アケミと言おうとすると止めるの? あの銀髪女と何かあったの?」
「俺……おかしいか。アケミは普通の魔術師だし、何もなかった!!
お前が出ていった後、マスターたちと少し飲んで、すぐ此処に
来たからな」
その言葉に、更に不思議そうに、
「普通ね? 居なかったから仕方がないけど、
アス村で、魔術師たちが回復出来なかった人たちを
簡単に治す光景を見て、恐怖を感じたわ!」
「才能だろ。それで良いじゃないか」
考えずに、簡単に答えるミウラに、
「ミウラ、あなた、やっぱりおかしいわよ! 私は、あの銀髪女は
魔物だと思うの?」
「魔物!? 俺もそうかなぁ!」
「フッ……あなたが!?」
引き気味に驚いて、
「俺は、特殊な魔法が使えるからな。今度見せてやる!」
呆れた感じでミウラを見た後、聞こえないように、
「あなたでは無理よ、良い魔物に……は」
ミウラの横を通り超えて行く私は、チラッと後ろを見ると、
「あれ、何だったけ、俺の魔法???」
と頭を抱えながら、しばらく止まっていたが、離れて行く私たちを
見て追いかけて、私たちはバムの墓の前に着いた。
バムの墓には、多くの花が置いてあり、私もその場所に花を置いて、
膝を地面に着きながら、墓を見つめて、
「私も、あなたと共に戦いたかったわ……
「なんだ!? この墓地に俺たち以外の人の気配がない……」
ミウラが叫び、私、ホォイも周りを確認し、眺めて見ると、
「変ね、なぜ急に……」
空を見ると、真っ暗になっていて、
「おかしくないか? 空気が……」
ホォイも叫び、私は、この感じを知っていると思い、
マジックボールをポケットから出して握りながら、周りを見渡していると、
バムの墓の周りが急に光だし、天に上るように舞い上がり
バムの墓の土が盛り上がり、
「なんだ!?」ミウラが墓を見て言い放ち、
「光が空に……え!
「今から復活させるから、マーチネルからバムに話してね」
と私の頭の中で聞こえて、
「明美さま! 話って、アス村に居たので……
空に向けて叫んでいる私に。
鞘から剣を抜き出し身構えているホォイが、
「マーチネル!! 何を言ってる!??」
と叫び、ミウラは、
「俺は……頭が……い、いたい!!!」
剣を放り投げ、両手で頭を押さえて蹲り、
「俺は……お、おれは……アケミにド、奴隷にされた……転生者……」
苦しんでいるミウラを見て、
「ミウラ、何を言ってる!! 警戒を……」
剣を中段に構え直して、ホォイは周りを見渡し、
バムの墓の土がより盛り上がり、そして、土が爆発するように
空に上がり、土が雨のように地面に落ちるなか、土煙の中から
人影が現れ、
「お、お……れ、し……死んだは、はずじゃなかったのか……キョウコに!?」
土煙から現れた男を見て、ホォイは、
「バム!!! 生き返ったのか……?」
妻の1人である私は、
「人を簡単に生き返らしてはいけませんよ……
でも、感謝します」
と跪いて、両手を重ねて、顔を空に向けて言っているのを。
「マーチネル!! どうしたんだ!!」
頭を手で押さえているミウラが、私の肩を揺すり、
「ミ……ミウラ! 何が?」
「跪いているから……
私は立ち上がり、
「神に、感謝をしていただけよ……
ホォイが
「バム!! バムの今までの行いが……神が認めてくれて
蘇らしてくれたんだな!!!!!」
バムに向けて叫んでいると、
「王都にいるはずのお前が、なぜ此処に!?」
その言葉に、「えッ!」と言って動きを止めた後、バムは墓から起き上がり、
ミウラに手で引っ張られ、墓から出た後、服や鎧に着いた土を手で
払いながら、3人の前に立ち、その後、景色も戻り、周りにいる
人たちの姿もあり、先ほどの光景が嘘のように、
時間が動いてる感じであった。
ただ、バムの墓は無くなり、置いてあった多くの花も無くなり、
歩いている人たちなど、バムが生き返ったのを驚くもなく
何事もなかったように、生活をしているような感じであった。
先程のバムが言った言葉に、ホォイは、
「バムは俺と一緒に、近衛騎士団を此処で待っていたんだろう?」
バムはホォイに迫りながら、
「俺、1人でだ!! お前は王都で、俺の女性たちと
子供を見ていたはずじゃなかったのか?」
「何を言ってる!? 一緒に、この街にいただろう?」
その言葉に、ホォイは困惑しているようで、
ミウラは、バムとホォイの間に入り、2人を離してから、
「バム、ホォイ……俺たちは、記憶、経験、全てが書き換えられている」
「ミウラ、何を言ってる。説明しろ!!!」
バムの怒声で、俺は冷や汗を大量に流しながら……
「バム、バムが死んで、鎧もそのままで埋葬されたんだが、
左胸の鎧の穴は、何で出来た!!」
バムは、左胸を見て
「これは、キョウコのダガーで刺された跡だな」
その言葉を聞いて、バムのキュイラスの刃の跡を確認して、
「バム……サーベルウルフの牙に刺された跡よ! ダガーの跡では無いわ!」
そう言われ、再度、確認をしているバムをミウラは見ながら、
「バム、バムが亡くなった理由が違っている!!!」
突然の叫びに、バムは振り向いて、「違う? どいうことだ!!」
「思い出しながらでいい、刺された経緯を話してくれ!!」
目を閉じて、思い出すように、
「ああ……突然、アケミが俺に魔法をかけ、体をボロボロにされ……
キョウコに、胸を刺され……」
「そうか、俺たちの方は……サーベルウルフの群れが、この街の北門の方に
襲来して、バムが、1人で戦って……」
バムは、俺の話を聞いた後、目を開けて、俺に向き、
「確かに、違うな!」
私は、ミウラに、
「ええ、そうね。バムの言ってることが本当なら、なぜアケミやキョウコに?」
「ああ、そこは思い出せんな!」
バムの言葉や仕草に、疑問を持つように
「……そう」と私は言い、
「これで分かったと思うが、神が俺たちの記憶などを書き換えた!!」
呆れた感じで俺を見るバムは、
「!?……王や皇帝などが神を見たとか、神託があったとかは、
よく聞くが……記憶を書き換えるなんて、聞いたこともないぞ!!」
私は、バムの言う通り、書き換えなど在りえないので、
「ミウラ、あなた、頭は大丈夫なの?」
帰って来た答えが想定内だったのか、フッと鼻で笑ったミウラは、
「そう思うのが普通だな。だが、事実だ!
書き換えられたなど、普通は判らないが、
今回は、判ったから言える!!」
ミウラの言ってることは、なぜか分かるけど、
「それで、何がわかるの? 証明できる?」」
「出来るさ! たった1日前のことで、違う内容が2つもある
と言うことが証明している。
これが半年、1年なら記憶が曖昧で、異なる可能性はあるけどな!」
確証高く言い、親指くらいのボールを見ながら、
「もし、そうだとしたら、何のためだと思う?」
私が手に持っているボールを、ミウラは気にしながら、
「推測でいいなら……マーチネルもそうだが、王都には、バムの妻の1人、
タールオル公爵の娘、イルエカがいる。
公爵が王に進言して、明美や恭子を討つために動くだろう。
あの2人なら、バムのように、騎士たちを容赦なく殺すだろう。
だから、これ以上、2人が殺さないように換えたんだろうな」
「そう……ね。バムの話が本当なら……」
親指くらいのボールを触りながら答えて、ミウラは気になるのか、
私に声をかけようとしたら、バムがミウラを睨みながら、
「ミウラ……あの2人のために、神が、なぜ換える!?
キョウコが強かろうが、騎士の数で倒される。死人が出るのは
仕方がないだろう!?」
「落ち着けよ!
顔を近づけてくるので
「近いって……
「早く答えろ!!!」
バムから少し距離を置いて、襟を正して……
「今から言うことは事実。信用してくれ!!」
「「 わかった!! 」」
私は、何も言わず、3人を眺めていて、
「俺は、昨日の夜、銀髪女の明美と話をした。明美は
異世界人で、俺とは違い、女神などの恩恵で、この世界に
来たんじゃなく、自分自身の力で来たと言っていた」
「お前も、異世界からか……?」
「そうだ!! 俺の場合は、前の世界で亡くなり、
この世界に来る前に女神と会い、特殊な力を与えられ、
記憶も引き継いで、この世界の人として赤ん坊から育った!!」
「と言うことは、記憶だけってことか?」
「そうだ!!」
ミウラは、神妙不可思議な話を真剣に聞いてくれているのが、
うれしいのか、笑みを見せていて、
「あなたは亡くなって、この世界に来たのは記憶だけで
この世界の人で、いいのね?」
私の問いに、「そうだ!!」と強く言い、
「キョウコやアケミ……ふた……【アポロ】のメンバーは
全員、異世界から記憶だけじゃなく、そのまま来たっていうの?」
「そうだ!! 女神の恩恵もなく、転生でもなく、自分自身の力でな!!」
バムが、ため息をつきながら……
「で、お前は、あいつらをどう思ってるんだ!
まさか……神とかいうなよ」
「そうさ! その通りだ!!!」
ミウラの言葉に、2人は驚いているが、私が驚いていないので、
「驚かないのか?」
「ミウラ……アス村での負傷者の回復で見ていたから、納得しちゃって……
腕を肩に着けながら、右手の手のひらを上に向けて呆れた感じで言った後、
「それじゃ、Fクラスなのに、Sクラス以上だと思えたのは……」
バムの言った発言を聞いて、
「「「 Fクラス!!!??? 」」」
「バム、あいつらはAクラスだぞ!!」
「そうだ! Fクラスじゃない!!!」
バムが、ミウラとホォイの発言を聞いて驚き……
「ち、違うのか? 会ったのは1ヶ月前で、駆け出しで……」
バムの発言で、ミウラは
「冒険者ランクまで変えて、力を見せないように来ていたんだな。
だが、俺にバレて、俺は明美の奴隷にされてしまったが……」
ミウラの不機嫌な顔を見てから、
「奴隷って……だから、アケミに対して言えなかったの?
でも、今は言えてるけど、どうして?}
「多分、バムの復活の影響で、奴隷は解除されていないが、明美に関することは
言えるようになったみたいだからな」
「良かったわね。でも、これ以上殺すことを止めさせたければ、
元の世界か神の国? に強制的に帰還させればいいでしょうに!!
書き換えなどすることもないわ!」
私の発言に、バムが、ミウラが言うのを制して、
「この国での俺の人気、この世界の冒険者としての実力を考えて、
キョウコに理由もなく殺されたままでは、この世界にとっては
損失と神が思い、サーベルウルフに殺されたことにして、俺を英雄にして、
この世界を安定させたいとかだろうな」
「そうね……バムは、ジーク王にも気に入られてるから」
「ああ、そうだ!!」
ホォイが腕組みしながら、
「で、なぜ生き返らした? バムを英雄にしようとした神が!」
「ホォイ……バムが必要になったんだろう。明美たちを討てとな!」
どや顔で言うミウラに、
「でも……英雄のまま死んでいた方が良かったんじゃないの」
ミウラは一呼吸してから、
「明美たちを擁護したいんだろうが、お前もバムの妻の1人で、
生き返って嬉しいだろうに」
「それはね……でも、討つ理由が……
「簡単さ、あいつらは、遊びで来て、好き勝手に
魔物も人も殺す。バムの様に非がない者をな!!」
「おいおい、遊びで? 食堂で値の張る物を食っていたのも
人を殺して、お金を奪っていたからか?」
ミウラを見ながら、ホォイは語り、
「ああ。そうだ!!!」
と、ホォイにミウラは力強く答えた。
バムは、私たちを見ながら……
「遊びで来た奴らは、今はどうしてる?」
「バム、昨日の夜は、私とミウラが居たアス村に滞在して、
今日の朝には、ドラゴンがいると思われるウエーザー山脈に
向かったわ」
「ドラゴンの足止めだったな。Fクラスの時は無理だと思って、
俺もと思ったが、Aクラスいや、神のあいつらなら、ドラゴンなど
簡単に仕留める」
「ああ……アス村でも、マスター達から討伐を希望されていた。
ただ、Aクラスとしてな……」
付け加える様にミウラは言い、
「近衛騎士団は?」
「先ほど、この街に来たけど、すぐ出発して、アス村に向かってるわ。
100人の騎士団よ」とバムに私は答えて、
「100人か。第2の方か……」
呟くように言うので、
「バム? 」と、気が付かせるように言い、
それを聞いて、軍の編成など詳しくない私たちに、
「第2は、貴族の者たちで固められた先鋭部隊。装備も一級品を
所持するものばかり、実力はAクラスという者ばかりだ!
ただ経験が少ない。今回のドラゴンの討伐で箔をつけるつもりだな。
あいつらには足止めをさせて、弱ったところを……」
バムは、顎を手でさすりながら、しばらく考えて
「俺たちも、アス村に行くぞ!!!
もし、あいつらが、ドラゴンを退治していたら、
近衛騎士団と戦うことになる!!!」
その言葉の意味に分からずに、
「なぜ……?」
「マーチネル、わからないか? 依頼内容は足止めだ!!」
「……ミウラ?」と意味が分からず言い、
「なるほど、討伐されたら依頼内容が代わり、報酬が出ない!
怒った奴らが、騎士団と……か」
その言葉を聞いて、それくらいでと思い、
「ホォイ……倒してくれるなら、報酬出せばいいでしょうに!!!」
真顔で言ったので、3人は、女性だなと言う感じで私を見た後、
冒険者ギルドの建物に向けて、歩き出し……
「で、どちらの味方に付くの!?」
「マーチネル、何を言ってるんだ!」
私やミウラの声に振り向かずに、徐々に早歩きになっていくバムは
「近衛騎士団を助ける! 俺が生き返ったのは、あいつらを倒すためだ!!」
「どうやって、勝つんだ!!!」
ホォイは、バムの横に並んで聞くと、ミウラが、
「バムが生き返った時に、俺のように、何かしらのスキルを得たハズだ!
それが……あいつらを倒す武器になるはずだぁ!!!」
その言葉を聞いて、右手を握りながら、
「そうか、俺にそんな力が……
バムは、前を向きながら、大声で、
「確認するぞ!近衛騎士団は、アス村に今日の夕方には着くが、
あいつらは、ドラゴンを探して、足止めか討伐しても
アス村に帰るのは、明日以降だ!!!」
「そうね。いくら神様と言っても、地の利が無いんだから、
すぐ見つかるわけもないし、倒すのだって……
そうよね……ミウラ?」
私は、マジックボールを握りしめながら、
後ろから付いて来るミウラに問いかけ、
「ああ、多分な! あいつらは、馬車でアス村に行ったんだ!
移動系の魔法は無いだろう。探索してアス村に帰るには、
時間がかかる。バムの言うとおりだ!!!」
バムが大声で、
「ここからギルドまで遠いが、走っていくぞ!!!」
その叫びを聞いた人たちは、俺たちに振り向き、手を振ったり、
声援を送る人たちの中を、ぶつからないように、全力で走って行った。
汗も額から大量に流れ、息も荒くなり、息切れしそうになりながら、
冒険者ギルドの門が見えてきて、受付嬢のティーナが、
門の前に立っているのが見えた。




