20話 出発……
夜も明け、朝日が昇り、霧が立ち込めるアス村で
冒険者たち、魔術師たち、村の人々、商業ギルドの面々が
寝から覚めて、活動し出す時、ギルドマスターの俺は、
食事の手配、ギルド職員への指示で慌ただしく動き出す。
「シチューの用意は……」
「材料がまだありますので、朝は人数分あります」
ギルド職員が言うのを聞き、川に魚を釣り行った者たちを確認して
「魚も釣れたら、魚も焼いて出すように……」
ギルド職員が、調理するために動き出し、手際よく野菜などを切り、
ウルフやウサギなどの肉類を捌き、薪をナタで削って出来たクズを
即席で製作した20個のかまどに置いて、火の魔法で火をつけ、
薪を入れていって、20個の鍋に、具を入れて行き……
作業が順調に進んでいると、幌荷車が並んでいる広場に、
職員と商業ギルド【ジータア】のマスター、テードルと揉めていた。
駆けよって、職員に、
「どうした!」
「マスター、昨日と、同じことを……」
職員をテードルから離してから、
「テードルさん、我々のギルドの馬車には、バネ付きは
無いと……
「それは聞いた! 改造して付けろっと言ってる!!」
構造的に無理ですよ。
あなた方の馬車から部品を取るにしても、
ドラゴンによって、すべて破壊されて、使い物になりません……
「……バネ無しの馬車で行けというのか。体が跳ねたりするのだぞ!!」
と唾を飛ばしながら怒り、
「王都のあなた方のギルドから、商隊が、もう出てるはずです。
途中で合流すれば、乗り換えが出来ますから……」
「……これだから、田舎は」
フンと言いながら、唾を地面に吐きながら、怒りが収まらないのか、
まだ、ブツブツと言ってるが、無いものは無いのだから、
我慢してほしいと思っていると、テードルが、勝人や恭子が
幌荷車から、テント用の帆を降ろしてるのを見ながら、
「昨日来たのは。あれか……男は奴隷で剣闘士、女はわしの……」
「テードルさん、この国では奴隷制度は廃止ですよ。それに他の国でも……」
「そうだったな。すまんすまん」
子声で、王の……献策して、伯爵の地位を……と言ってるのが
聞こえて、王都では、廃止になってないのかと嘆きつつ、
広場から門に向かう道の途中で、冒険者たち、魔術師たちが集まって
歓声が上がってるのを聞き、明美が見せているアイテムに
驚いてるのだと思いながら……
…………夜も深まり、見回りの冒険者たちは、魔物の気配もなく、
テントや幌荷車で、横になる者が多くなり、
たき火の周りいる、明美、リョクフォンと俺のみで、
夜警で寝ずにいたが、リョクフォンが眠り出して、
俺と明美の2人だけ起きている状態になり、
明美が、皮袋からゴソゴソと物を出して……
「その透明の袋に入った物は?」
「サンドイッチですよ」
「お前の世界の物か?}
「具をパンとパンで挟んだものですよ」
明美が、袋を破り、その中の1つを差し出した物を、
手で受け取り
「柔らかいなぁ……
口に入れて、モグモグと食べて
歯ごたえはないが、食えるな」
「それは、タマゴサンドで、これなら先生は好むかな?」
受け取りながら、「俺は先生と言う名じゃないんだが……」
クスっと笑う明美に戸惑いつつ、
手に持った物は、肉が入った物で、口に入れて、
「これは、良いな。歯ごたえもあるし、肉もいい。
これは?」
「カツサンドです。豚の肉を油で揚げたのを、パンで挟んだ物ですよ」
「油で揚げるか……贅沢だな」
とカツサンドを眺めながら言うと、明美は、皮袋から、どんどん
サンドイッチを出して、座っている丸太に置いて、1つずつ破いて
食べ出した。
食べてる光景を見て、どこにそれだけ入るのか驚きながら
皮袋から、透明の容器に入った水を取り出し、飲んでるのを見て
「その皮袋は、便利だな。俺たちにも分けてもらえないか?」
「ダメですよ。これは……」
「いや、冒険者たちの手荷物が減るし、移動も楽になるだろう」
「それは、わかりますが……
この世界に存在したらいけないものなので……
代わりに、これは? 」
明美が、皮袋から小さい球を出して…………
今度は、治療用のテントの所で、強大な魔法の波動があり、
マジックボールの実践が終わって、次に怪我が治りきっていなかった
冒険者、魔術師、村の人々、商業ギルドの面々を治したと思ったが、
嫌な予感がしたので、明美の周りに集まっている者たちを、かき分けながら
明美の所に出ると、怪我が治った者が、テントから出て来て、
仲間と抱擁したり、握手をしている光景を見て、明美の神の力の凄さに、
「凄いな……
と言葉を漏らして、感心していると、
「街の魔術師より……どこで習った!」
テードルなど商人たち、作業をしていた魔術師たちが集まり、
「ええっと……
困った顔をして、俺の方を見るので、
「明美の魔法は、ウエーザー山脈の未開の地で
発見された遺跡から得たものですよ」
と大ウソを言って、
「そうなの! 先生と一緒に……
俺の方に駆け寄って来て、手を取り、目を潤ませながら上目使いを
する明美に、ドキドキしながらいると、
「……先生? ツヴァイセル、いつから冒険者の弟子を取ったんだ?」
トトアポが絡んできて、俺の横に来たので、小声で、
「話合わせろ!」
「本当のことを言えばいいだろう」
俺とトトアポが揉めていると、
「Dランクになった時にだろ!!」
と俺やテードルたちはその声の方を見渡し、
「トーラント!! 居たんだぁ!!!」
「ああ……居たよ。ソリュート王妃さ……
と言おうとすると、トーラントの仲間のベターラが
横腹に肘を当てていて、
「もう! 未開の地、探索以来ね」
ウインクをしているベターラに、
「と言うことだ!」
テードルが、
「幼い子がなぁ……
明美をジロジロ見てから、
「私専用の魔術師にならんか? 待遇は良くするが」
と言うので、俺が言おうとすると
「私は、ツヴァイセルの所で、
先ほどから、手で持っているマジックボールを見せて、
「このボールを売るから、ツヴァイセルの所で買ってもらって、
使えばいいわ」
「お前の魔法と、どれくらい違うんだ!?}
「同じではないけど。何個か同時に使えば、助からない人でも
直すことが出来るわ。ねぇ! お兄ちゃん」
と言って、俺に振り、先生と言われるより良いので、
「身寄りのない明美を、この前から妹にしたから、
俺のところで買ってくれ!!」
テードルたちは。「相場は?」 「価格は」「独占か」など、
俺に寄りかかりながら言うので、
「出る前に、決めようか」
と進言して、村長の家に向かった。
テードルたちの話もついて、マジックボールは、俺のギルドで売る価格の
4割引きで卸すことになったが、製作者の明美のことを言えば、命が無いことと
取引中止を盛り込み、来週から取引をすることになった。
遅くなった朝食が終わり、
王都に向けて出発の準備をしている商業ギルドのメンバー、雇われた冒険者たち、
そして、ウエーザー山脈への道順を、地図を広げて職員に聞いている勝人。
その仲間の恭子の所には、準備の合間に、アイテムのマジックボールの使い方を
聞きに、冒険者たちや商人が熱心に聞いていた。
そのマジックボールは、我々、冒険者ギルド【スラヴァ・リーフ】の独占の
商品になり、定期的に明美が、この世界に来て渡してくれる話となった。
明美から説明を聞いて、問題点を挙げ、決まったことは
3か月以内に使用しないと消滅する。攻撃系は無し、防御系、治療系のみで……
それでも、魔術師にとっては死活問題になるレベルなので……
値段は、金貨1枚(日本円で100万円くらい)にしたら、
日焼けのあと、髪の荒れなど、魔術師の魔法よりも効果があり、
明美や恭子が、肌や髪の荒れや傷などを治していると聞いた
女性冒険者や女性魔術師たちから、
「「「 安い!!! 」」」
と言われ、早速、職員が注文を取り始めていた。
どの国でも戦力になる物で、我々ギルドに近づいてくる者もいるだろうが
俺とボブ(ボブレスト)には、攻撃系も使え、死者復活も出来、消滅期限なしの
無料提供でマジックボールを渡すので、それで対処してくださいと言われ、
渡される物は、現在使用しているマジックボールより強力らしい。
明美には、定価の3割の手数料が支払われ、その中には神の世界で黙認して
もたうための賄賂をいや、手数料を12柱に支払うらしい。
さらに、
「世界の王になれるね」と言うが、ギルドの運営だけで精一杯なので
冗談でも言ってもらっては困る。
まず、出発するのは、商業ギルド【ジータア】の商隊。
我々ギルドの幌馬車10台で、王都へ行く途中で、王都から来る
商隊と合流し、ギルドの幌馬車はそこで別れ、リーフ街へ戻る予定だ。
その間に魔物が襲ってくる可能性もあるので、各幌馬車の御者に
マジックボールを20個、冒険者や魔術者たちに各5個を渡している。
これだけの数を、明美が短い時間の間に製作し、それを見ていた魔術師など
人外の力というものを感じて、恐れていた者、あこがれた者、お姉さまと言う者で
明美は困っていたな。
次に出発するのは、我々ギルドの隊で、いつまでもティーナだけでは
受付も大変ということで、受付嬢は全員帰還で、事務処理などする者の
3分の2を帰還させる。今日もリーフ街から、昨日戻った職員や冒険者が
来るので、アス村の復興は進むだろう。
リーフ街に戻る隊にも、マジックボールは渡され、御者に20個、冒険者や
魔術師たちに各5個、職員たちも戦える者、魔術師はいるので、
各5個渡してある。それに、注文も入り、
ギルドに置くためのマジックボール100個を積んで行く。
最後に出発するのは、ドラゴンの足止めするために来た明美たちだ。
幌馬車に積んでいる木の樽に水を入れ、干し草や草を集めて、
幌馬車に積み込んでいた。
「準備は出来たか?」
その言葉を聞いて、明美が
「お兄ちゃん! 完了よ。今からだと昼前には着くけど……」
と言って、俺に近寄って、小声で
「場所と場所を歪ませてつなげる魔法のワープ・コネクトで
行き来するので、昼過ぎに戻ってきます」
「ああ、わかった。ドラゴンを探してる冒険者には
誤魔化しておくよ」
御者席に乗った勝人が「それじゃ行きます」
出発した幌馬車の後ろから、明美、恭子が手を振っていたので、
俺も手を振って答えていた。
残った俺たちは、村の廃材を1ヶ所に集めたり、
家を解体したりして、明美たちの帰りを待ち、
その後、俺は、明美たちと一緒に、ギルドに戻る予定だ。




