12話 ようやく……
冒険者ギルドの正門の前で
魔物のアクセルソレルホースが
長いシャフトで幌を付けた荷車に繋がっていた。
その前で、私、勝人、恭子とティーナ姉さま、そして
ボブヒルトが最終確認をしていた。
アクセルソレルホースが私の顔に寄せてくるので、
アクセルソレルホースを撫でているのを、ティーナ姉さまが見ながら、
「まずは、アス村に行って、資材を降ろすのが、
今日の仕事です。馬とじゃれてないで、
聞いてますか?」
ムッとしながら、ティーナ姉さまを睨んで、
「聞いてます! この子……かわいいんだもん!」
アクセルソレルホースに向けて笑顔を見せると、舌で舐めてくれるのを、
「もう、私だって……
されたいと言う感じで言うティーナ姉さまを
ボブヒルトは優しく見ながら、
「スピルも気に入ってるようだ」
私も直ぐにという気持ちを抑えて、
「そうですね!! ボブヒルトさんからは
何かありますか!?」
「うむ……アス村には日が落ちる前には着くだろう。
魔物や動物に遭っても、スピルがいる。
じょ……アケミもいるから心配ないだろう」
恭子や勝人は、「「 えッ…… 」」と私を見て。
「ある程度は話したから……
「 ……いいおじ様だから?}
「年上は好きだからなぁ……」
ボブヒルトは素敵な方とは思うけど、
「もう、お兄さま一筋だから……そんなんじゃないです!!!」
と頬を膨らませながら言ったけど、
皆が笑ってるのを見て、「もう……そんなんじゃないもん」
と拗ねた感じで、さらに言って、
笑っている皆を見渡して、
「行きましょう! まずは、私たちを待つアス村へ!!」
勝人は御者席に座り、私が幌荷車に乗ろうとしたら、ティーナ姉さまは
手紙を見せて、
「重要なことが書いてあるから、絶対、ぜったい読んでね」
「はい、読むわ……」
私は、手紙を受け取って皮袋に入れて、干し草をクッション代わりに
敷いている幌荷車の方へ恭子と共に座った。
「それじゃ、行きます。連絡はしておいて下さい」
勝人は、ボブヒルト、ティーナ姉さまに向けて言い、
「ええ……しておくわ」
「ティーナ義姉さまは何時までいるんですか?」
ボブヒルトは、ティーナ姉さまを見て、
「義姉さま?……気が付かなかったな……
手で髪をかきながら、「……何人いるんだ」
小声で言っているのが聞こえたが、
「王都から来る騎士団の到着を待って、秋人さんの所に帰るわ」
勝人、恭子、明美を乗せた幌馬車は出発し、その後姿を
見ながら、
「あんたら4人以外に何人いるんだ!!」
ティーナが歩き出そうとした時に、行かせないように言い、
「何のことです?……
「……ドラゴンより強いやつだ!!!」
「……世界は広いですから、わかりません」
ティーナは敷地内へ歩きだして、自分の仕事場へと向う後姿を見つつ、
「世界か……神の世界か、それとも違う世界か……
ワシが若ければ修行して、戦ってみたかった……」
自分の仕事をしに、馬小屋の方へ歩いて行った。
西門に来た俺たちは、門番兵にギルドカードを見せ、
行き先を告げると
「アス村から、リーフ街に戻ってくる場合は、ドラゴンについての
情報をギルド以外では他言しないよう……破れば重罰などの
刑がかかりますので、気を付けて下さい」
恭子は、
「ありがとう。報告には戻るので、忠告は真摯に受け取っておくわ」
笑顔を見せて、門番兵は、
「では、道中の御無事を祈っています」
幌馬車は、西門を通過して、
街道の分かれ道で、
右に曲がって、
北にあるアス村へと進みだして……
明美は、周りに誰もいないことを確認して、勝人に幌馬車を
止めるように言って、皮袋(アイテムボックス型、盗難防止付き)
から、ビデオカメラを3台出して、前、後ろ、左に設置して、
「さあ。動画アップ用に、広がる田園をとりましょう!!!」
明美は、両手を広げて叫び、
「ようやくね。街道は整備されてるけど、バンプがあるから
手振れ補正で補正はするけど、編集で直すから気にせず撮りましょう」
私が注意を言った後に、
「そうね……本当は、サスがあった荷車がギルドにあれば良かったんだけど
なかったから、せめて幌は付けたわ」
それを聞いていた勝人は、
「俺たちの雨対策じゃなくて、カメラのためか?」
「ええ、そうよ。レンズに水滴が付かないためにね」
「人間よりもカメラか……」
勝人は、ため息をつきながら馬車を進めた。
しばらく進み、恭子は、ティーナ姉さまから譲ってもらった
寿司桶3人前の寿司を食べている私の姿を見ながら、
「ティーナさまって、どこで食事するつもりだったのかしら……」
「適当に、どこかで食べるでしょう、義姉さまは……」
「そうね……見て見たかったわ……周りの驚く様子を」
穴子を食べ終わってから、
「びっくりするでしょうね……今度やってみようかな」
恭子は少し考えてから、
「フフ……喧嘩になりそうだから、止めといたほういいわよ」
「そうかなぁ……」と思いながら、
ペットボトルに入ったお茶を飲み、
残りの寿司を食べて、私が食い終わった時に
前方から、こちらに来る幌馬車が見えた……
ティーナさまも気にいってるみたいね。
うん……浩太は……どう?
眷属にすれば、浩太の存在は消えるけど……
ボブでもいいけど、浩太って、優しいもん……
頬を染めながら言い、
やはり、勝負して、私の連続攻撃に耐えられれば……
沙良! 手加減はしてね
次回
第13話 変わるの……
私は、去年の15歳になってから、お父さまの
子会社と言う感じで、会社を立てたけど、AKFって、
ええっとね……アス、ううぅん、アケミ・キョウコ・ファクトリー
の略よ!
ほんと、レースアニメ好きなんだから……
私は副社長! あのマシンに乗るぜ!!
下記は、この話の中で出てきた用語の説明です。
バンプ 凸凹のこと。
サス サスペンションの略。




