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時かける少女  作者: 大橋むつお
87/90

87・アルルカンのアルターエゴ

時かける少女・87スタートラック 

『アルルカンのアルターエゴ』  


 



 コクピットに、アルルカンが実体化していた……。


「それは、アルルカンのアルターエゴよ!」

「分身……これが?」

「違うよ。これがオリジナルさ。いま船ごと蒸発したのがアルターエゴ(分身)さ。けっこう気に入っていたのにね」


 分身は、まるで百歳のお婆さんだった。


「もう、二三体アルターエゴを作っておけば、こんな無様な姿を晒すこともなかったんだけどね。まさか王女様自らお出ましになるとはね」

「わたしは、予備役だけど軍人なの。ベータ星の危機は見過ごさないわ」

「その正義感が命取りだね……この船も、わたしの船のようにしてやる……」

「させるか……」

 

 マーク船長は、ワープスイッチをCPUとのリンク無しに入れた!


 目的地を入力していないワープは、亜空間に投げ出される。つまり、現実世界ではない宇宙の狭間に。


「どないや、これで、この船を破壊したら、バアサン、元の世界には戻れんようになってまうで」

「もともと戻ろうなんて気はないよ。水銀還元プラントもダウンロードの最中。アルターエゴを作り直すには、あたしの残り時間は少なすぎるからね……ただ、あんたらを生かしておいちゃ気が済まないんでね……」


 ビューン バシッ!


 耳障りな音がした。


 コスモスが自分のコスモエネルギーを破壊モードに変換。アルルカンにぶつけ、はじき返された音だ。


「残念だったね、コスモス。シールドを張ってあるんでね」

「残念……」


 バタ


 エネルギーを使い果たしたコスモスは棒のように倒れてしまった。


 ビリ ビリビリビリビリ……


 船が振動し始めた。


「この船には意志があるんだね。破壊の思念に抵抗している……」

「そうさ、破壊される前に、あんたの命の灯が消える」

「舐めちゃいけないよ、このアルルカンを……!」


 ヒイイイイイイイイイイ


 アルルカンの思念が、さらに強力になり、船は悲鳴に似たきしみ音をたてる。


「くそ……!」

「あと十秒も持たないだろうね、へへへ……」


 そして、船のきしみが分解寸前に達したとき、いきなりアルルカンの首が飛んだ……!


 ズバ!


 首が離れたアルルカンの体がドウと倒れると、その背後には意外な人物がコスモセーバーをはね上げた姿勢で立っていた。


「マグダラ……」


 それは、女宇宙海賊のマグダラであった……。



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