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時かける少女  作者: 大橋むつお
86/90

86・さよならアルルカン・2

時かける少女・86スタートラック 

『さよならアルルカン・2』     


 



 アルルカンの特技は、心の先を読むことだ。


 人の心も、アンドロイドの行動予測も読めた。

 そして……自分の心さえ。

 だから、街角の占い師から、十年の歳月をかけて、地球の銀河連邦大使の地位まで上り詰めた。


 そのことは問題ではない。


 問題は、アルルカンの欲である。


 地球や銀河宇宙のために使おうというのであれば、多少のことは許される。宇宙に完全な善などは存在しない。みな自己保全と、自分だけの成長が……煎じ詰めれば存在目的である。しかし、たいていの者は自己保全と成長が目的であるとしても、表面は銀河宇宙の安定と平和を願っている。いわば擬態である「善」の顔で付き合っているのが銀河連邦なのだ。


 その中で、アルルカンは違った。アルルカンは銀河連邦の覇権を握ろうとしていた。大使というのは、そのための最後の擬態であった。


「感じる……アルルカンの心を」


「アルルカンの船には、まだ100パーセクもあるねんで。それで読めるか?」

 クルーのみんなも同じ気持ちだった。

「わたしの、ほとんど唯一の特技です。読むことと隠すこと。ただアルルカンのように先は読めません。今が見えるだけ」

「で、あいつの今の心は……?」


 ファルコン・Zのクルーは、マリア王女……マリア近衛中尉に注目した。


「危険です……ベータ星の水銀還元プラントは設計が盗まれています。設計は、すでに地球に送られ作られ初めています」

「地球の水銀を金に還元するんやな」

「しかし船長。水銀は還元の過程で1/100になります。地球中の水銀を金に還元しても、ロックフェラー級の金持ちになれる程度です」

「……投機に回したら、一時的やけど、地球の経済は大混乱やろな」

「それが、アルルカンの狙いです。その隙に地球の指導者になり、その先は……銀河連邦の支配です」

「銀河連邦の支配!?」


 一同が驚いた。


「連邦を支配できれば、わがベータ星の水銀もアルルカンの手に金に還元して盗られてしまいます」

「銀河連邦と言っても、その範囲は100光年の球状に過ぎない。たかが銀河の10%。その先は未知の宇宙同然。たとえハンパでも連合していなければ、これからやってくる危機には耐えられないわ」

 ミナホが、啓示を受けたように言った。

「ミナホちゃんも、なにか担わされているようね。すごいオーラを感じるわ」

「それより、どないすんねん、アルルカンは!?」

「破壊しましょう、船ごと」

「でも、あの船のバリアーは、コスモ砲でも打ち抜けません」


 コスモスが冷静に解析する。


「わたしのソウルを同期させます」

「下手したら、死ぬで!」

「皇位の継承は妹を指名してあります」

「マリア……」


 船長以外のクルーは言葉も無かった。


「わたしも、同期します」


「ミナホ……」

「バリアーは破壊できても、シールドがあります。瞬時に破壊しないと反撃……アルルカン自身が、この船に乗り込んできます」

「ミナホ、お前には重要な任務が……よう分からんけどあるねんぞ!」

「わたしにも、うっすらと分かってきてます。ミナコちゃん、力を貸して」

「え、あたしが!?」


 ミナコが、素っ頓狂な声をあげた。


 マリアと、ミナホ、ミナコが手を繋ぎ、ファルコン・Zをバージョンアップする。コンピューターのメモリーを増設したような感じがした。


「反重力砲コンタクト、コスモ砲に転換……完了!」

「照準完了まで、5秒、4,3,2,1,ファイア!」


 ドゴーーーーーーン!!


 アルルカンが、コスモ砲の発射に気づいた瞬間に、着弾。バリアーもシールドも船ごと一瞬に吹き飛ばされ、蒸発してしまった。


「やったー!」

「しまった!」


 ポチの歓声と、マリアの傷みの声が同時にした。


「やってくれたわね……」


 コクピットに、アルルカンが実体化していた……。



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