84・ベータ星滞在記・2
時かける少女・84
『ベータ星滞在記・2』
監視されている様子はなかった。
幽閉という言葉が似つかわしいが、ミナコたちも、あまり外へ出てみようとも思わなかったので、ファルコン・Zのクルーは、とても中途半端だった。
外へ出てはいけないと言われているが、建物ではない。首都ベータポリスから出てはいけないということだけだったので、ほとんど自由と言ってもよかった。
「今朝は、納豆定食にしてみました」
まかないのメグさんが、ワゴンで朝ご飯を運んできた。
「うわー、なつかしの水戸の納豆だ!」
ミナコが一番喜んだ。あとのみんなもそこそこメグさんの料理は気に入っている。
「ゲ、納豆!?」
「嬉しい! メグさんのアイデア?」
「いいえ、ファルコン・Zに相談してお料理しています。今朝の納豆は難しいんで、ファルコン・Zが合成してくれたものですけど、明日からお出しするお味噌やお醤油はレシピを教えてもらって、あたしが作ったものが使えそうです」
「船の中じゃ、こんなの食べたことないわ!」
「ファルコン・Zも、ここに来てから余裕みたいですね」
ミナホが、楽しそうに納豆をかき混ぜている。
「船のCPUは航行中は、運行と警戒で手一杯ですからね。遊び心が出てきたんでしょうね」
「で、オレの嫌いな納豆か?」
船長がボヤク。
「マーク船長にファルコン・Zから、メッセージです」
「なになに……この際、嫌いなネバネバ系を克服しましょう。おせっかいなやっちゃ」
「ねえ、AKBのフリ覚えたの。見て!」
メグさんの娘メルとパルがやってきて、上手に歌って踊って見せた。
「あ、『恋するフォーチュンクッキー』じゃん!」
「うん、街で流行りかけてるの!」
「なんで、そんなん知ってんねん?」
「ファルコン・Zがネットで流してるわよ。他にもいろんなこと教えてくれる」
「あたし、今度は『大声ダイアモンド』マスターしたいな」
「『フライングゲット』が、いいな」
「ね、キンタローバージョンてのあったけど、なあに?」
「あ、あれAKBの準構成員。あんまり真似すると首とか腰いわすわよ」
「うん、じゃあ、オリジナルをマスターしてくるね!」
フォーチュンクッキーを口ずさみながら行ってしまった。
「可愛いお子さんですね」
「どっちかが男の子だったらよかったんですけどね」
「メグさん、お若いから、まだまだでしょう」
早くも食べ終わったコスモスが親しげに言った。
「三人目は……とても難しいんです。この星じゃね」
メグさんは、軽くため息ついてお茶を注いでいった。
「どうしてなんですか?」
ミナコは、大昔の中国の一人っ子政策を思い出した。
「水銀のせいなんです……」
「水銀……?」
そこに、メイドのメナが急ぎ足でやってきた。
「みなさま、王女殿下のお越しです!」
そして、ラフなチノパンにシャツジャケットの姿で王女が現れた……。




