48・女子高生怪盗ミナコ・14
時かける少女・48
『女子高生怪盗ミナコ・14』
その階段を、つづら折れに降りると、目の前にとんでもないものが目に飛び込んできた!
そこには、なんと戦艦大和が、古武士が蹲踞するように鎮座していた。
「これって、どこかの映画のセット、かっぱらってきたの!?」
「それとも、ご趣味でお作りになった実物大のレプリカでございますか!?」
ミナコとミナミは、それぞれの趣味と感覚で驚いた。こういうところにも育ちが出るものだと爺ちゃんは思った。
「これは、宇宙戦艦大和だ」
「宇宙戦艦……」
「ヤマト……?」
二人で一人前の質問をした。
「見ればわかるだろう。あんなカタカナのプラモデルのようなものではない。外見は、あくまでも旧日本海軍の誇り、無用の長物とも言われた戦艦大和だ。わしは坊津沖で、無惨に撃沈させるような愚はおかさん。こいつは、パパブッシュのころにアメリカの公文書を手に入れ、脅しあげて、宇宙人の死体を借り受けた」
「死体なんて、どうしたの?」
「なあに、ヤツラは死んだふりをしとるだけだ。アメリカに技術を与えんためにな。わしらは、そのへんの情報はキチンと掴んでいる。ここに来たら、すぐに蘇生させた。そして、地球を救うために、彼らに協力してもらって、この大和を作った」
「よく、世間に漏れずに作れましたね?」
「池之宮の先々々代も、宇宙人の手を借りておられた。そうでなければ、あの時代にイ007号のような潜水艦はつくれん」
「宇宙人の協力があれば、もっとすごいものが作れたんじゃございません?」
「日本は、一度敗れる必要がある。池之宮の先々々代は、そう考えておられたようだ。それが正しかったかどうかは、もう少し時間がたたなければわからんだろうがな……」
それから、ミナコたちは大和の周りを一周した。青灰色の艦体は圧倒的だった。戦うという機能を極言にまで追い求め、カタチにすれば、これ以上のものはないだろう。
「お爺ちゃん、少し本物のニオイがする……」
「わたくしも、艦首と主砲のあたりに……」
「さすがだな。艦首の最前部と、主砲は本物を流用している」ど
「つまり盗んできたのね」
「ばか、生き返らせたんだ。さあ、中に入るぞ」
中は無人かと思ったが、人の気配がする。艦内の通路の向こうに人が居た。
「あ……」
その姿形は、ミナコそっくりだった。ブリッジに着くまでに、五人出会ったが、服や階級章の別はあったものの、みなミナコにそっくりで、ミナミなんか、吹き出し掛けていた。
「彼女たち、アンドロイドなんですね」
「ああ、船の保守点検には、どうしても人型のロボットが必要なんでね」
「でも、あたしソックリにしなくったって。なんだか気持ち悪い」
「その秘密はな……」
「艦長、お待ち申し上げておりました」
一人だけ、ミナコとは違うタイプのアンドロイドが敬礼した。
「紹介しておこう。副長のフサコだ」
爺ちゃんは、きまり悪そうに、頭を掻いた。
「ミナミちゃんとミナコちゃんね。あなたたちには、両舷の火器の管制をやってもらいます」
「はい……声、聞き覚えがある」
「そう、それは嬉しいわ。わたしはね……」
「いや、わしから言おう。このフサコは、ミナコの婆さんの若い頃の姿がモデルなんだ」
「え、お婆ちゃん!?」
「ここでは、副長と呼んでね。艦長も」
「宇宙人が、アンドロイド一号を作るときに、艦長の補佐役で、もっとも適任な人間をモデルにしたら、わたしになったわけ。ちなみに、この人の情報もみんな、わたしのCPUに入ってるから」
「艦の中じゃ、艦長だろうが!」
珍しく、爺ちゃんがムキになった。
「で、乗り組みのアンドロイドを作るときは、わたしの計算。ミナコのタイプが一番だと分かってね」
「なるほど……」
他人のミナミは、すぐに理解できたが、ミナコ本人は、やっぱり納得できなかった。
――あたしって、もう少し可愛くって、プロポーションいいと思うんだけど――
「では、大和発進します!」
副長が、そう言うと、お爺ちゃんは頭の上がらないカミサンに命ぜられたように、でもカッコだけはつけて頷いた。
「大和発進ヨーイ!」
爺ちゃんの沖田艦長のような声が響いた……。




