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時かける少女  作者: 大橋むつお
24/90

24・プリンセス ミナコ・6

時かける少女・24 

『プリンセス ミナコ・6』        


 昭和二十年四月、前月の大空襲で肺を痛めた湊子みなこは、密かに心に想う山野中尉が、沖縄特攻で戦死するまでは生きていようと心に決めた。そして瀕死の枕許にやってきた死神をハメた。死と時間の論理をすり替えて、その三時間後に迫った死を免れたのだ。しかし、そのために時空は乱れ湊子の時間軸は崩壊して、時のさまよい人。時かける少女になっ。てしまった……今度は2013年の大阪から始まった。なんとミナコはプリンセスに!



 勢いで決めたことは、後で何倍も禍根を残す(死んだひい祖父ちゃんの格言)


母:「お父さんと恋に落ちたのは後悔していないわ。人間は、やった後悔よりも、やらなかった後悔の方が深刻だっていうもの」

ミナコ:「だから、簡単に子ども作っちゃうし、って、あたしのことやけど。お父さんもできもせえへん皇位継承権の放棄なんか言い出したわけやね!?」

真奈美:「そやけど、そのおかげで、どう見ても異民族にしか見えへん同士の姉妹ができるし。まあ、これは『美人姉妹』という共通項でくくれるからええけど。家庭環境的には、ガチややこしい」

母:「お母さん、ミナコの決意は尊重するわ。ただね、ミナコは、これから起こることにビビリすぎ」

ミナコ:「なあ、お母さん、どんな問題が起こると予想する?」

母:「それが、この問題のおもしろいところよ。なんたって……全然! 予想もつかないんだから!」

三人:「「ア……アハハハハ!」」


 爆笑するしかない、親子であった。


 で、問題は、すぐにやってきた。


 ダニエルが工作した、MNB48の松下リノ説が、あっというまにひっくり返ってしまったのだ。


「王室としては、なんとも申し上げられません」


 女王のお祖母さまはは、凛と胸を張ってトボケていたが、電車オタクがアリバイを見破ってしまった。


 松下リノが写っていた写真の車体番号の一部から、乗っていた電車が準急ではなく快速に使われた車体であることを見破ったのだ。


 信太山の駅に快速は止まらへん(;'∀')。


 ツイッターで投稿されると、あとは早かった。イコカの乗車記録から、乗った電車が特定できると分かり、リノの否定が営業用のハッタリでないことも明らかになった。


 そして、さらにミナコ自身のシャメが流出してしまった。


 信太山の帰り、ターミナル駅でミナコをカワイイと思ってたまたまシャメった大学生が、ミナコの素顔をユーチュ-ブで流してしまった。それも30秒の動画で。


 明くる日には、朝早くから、テレビや雑誌の記者が東成区の下町に殺到した。


「お母さん、えらいこっちゃ! 家の周りマスコミだらけ!」


 真奈美が、歯ブラシをくわえたままリビングに飛び込んできた。


「真奈美、お尻掻くんやない!」

「え……?」

「テレビに映ってる!」


 ハッシ!


 母と姉が、床にへばりつきながら注意した。


「あ、あのカメラや……コラー!」


 テレビの画面は、真奈美が吐き散らした歯磨きとツバキでまだら模様になったかと思うと、ノイズと共に天地がひっくり返った。


 ガッシャーン!!


 洗面所の窓から撮っていたカメラマンは脚立ごと後方二回転した。


 レポーターが、カンペをチラ見して、ミナコの本名といきさつを説明しはじめた。


「どないなってるんや、日本の放送リテラシーは!? うちは、まだ未成年やで!」


『ただ今、ミナコ王室から正式に発表されましたので、ここからは実名で報道させていただきます。現場どうぞ!』


 同時に、家の前が騒がしくなった。


「ダニエル、約束がちがうわよ!」


 お母さんは、スマホでダニエルに抗議した。


『それについてはだね……』


 あとは、近づくパトカーのサイレンが、テレビと、家の前とスマホから一度にして聞き取れなかった。もう上空ではヘリコプターの爆音さえしている。そのときドアが叩かれ、ダニエルの声がした。


「開けて下さい、奈美子さん。ミナコ王室がお迎えにきました!」


 親子三人は、怒るヒマもなく、迎えのリムジンに乗り込んだ。


「済まない。日本のオタクとマスコミに対する認識が甘かった。これから、事態は急展開する」


 カーン! 


 事態急展開のゴングが鳴った。


 お母さんが持ち出した洗面器で、ダニエルの頭にかましたのだ……。



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