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DH  暗闇の手 序章(第一部)  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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(1)  完成と、未完成の対立②

「アースプログラム」


その名の通り、地球という名を冠したプログラムである。


藤原の作ったこのプログラムはメディア特化型プログラムで構成されている。


あらゆるメディアに運用が可能で言葉、デザイン、心理、音の4つの要素を混ぜ合わせ、知らぬ間に人の行動を変化させることが出来るため、その使用には危険レベルというものが存在し、取り扱い説明書すらまだ完成されていない代物だ。簡単に述べればその恐ろしさがより実感する。例えば、ここ最近のCMによるサブリミナル効果というものが話題に上がっているが、アースの場合はサブリミナルの働きを1とした場合、1000の働きをすると表すことが出来る未来というよりも、現在においても使い方次第では非常に恐ろしいプログラムだ。


例えばアースを使用しCMを作成する方法を説明しよう。


まず基本的なCMを作成する。


そのデータベースをアースの中に入れて、癒しという変換を押す


すると現在におけるあらゆる癒しに関するデータベースで構築されて癒しに特化したCMが出来上がる。


言葉で言えば、セリフが変化し、デザインで言えば文字や形そのものも変化し、心理で言えば脚本そのものも少しの変化を生み、音はその3つの要素の最後に選択される。


そして、新しく構成されたCMがデータの中で出来上がるのである。


芸能人の顔の太り具合を修正を掛けて、頬や足を削り、画像編集するある意味変換されたCMとは違い、そういう部分の修正などは全くない


上記の要素で構成されるため、する必要がない


しかも音に関して言えば、CMに使われる曲自体に変化そのものはない。


耳では聞こえない周波数を使用しているわけでもないのだ。


その理屈は藤原にしか理解できないが、この研究所のデータでも音の部分だけを除く変換と、音を入れた場合の変換では歴然の差がデータとして出たために、この核となる音の部分の理屈を理解できない渡部という天才は世界一の天才でなくなってしまったことを付け加えたい。


それが何であるか渡部ですら分からないのである。


プログラムの中の構成を見ても、その原因を掴めなることはなく、アースプログラムという代物自体がまるで幻のような存在であるかのようにそれでも存在しているのである


潜在意識の中で働くのではなく、あらゆる要素を含め、そのすべてが誰の目にも気付かれることなく、癒しというキーワードによって変換される。


サブリミナルのように誰かに暴かれることもなく、そのCMを見てしまったものは癒しというものを脳内だけでなく体中で感じ、そして何事もなかったようにCM終了とともにその癒されたという感覚すら忘れてしまう。


サブリミナル効果のように潜在意識の中に置いたままにしないということと、その効果に身を置いていたことすら忘れてしまうということで、ごく普通の生活の営みの中でごく自然に流れてゆく時間の流れのようなプログラムではあるが、あらゆる感情を導き出すことも出来、サブリミナル効果変換を含めて、使用可能であるということを忘れてはいけない。


これがセキュリティの限界を示せとは別に設けられたもう一つの募集要項の課題だったが渡部ですら作成するものが現れるとは思っていなかったアースプログラムの簡単な概要である。


1.サブリミナル効果とは異なるものを作れますか?


2.作れるとしたら、どのようなものですか?


3.あなたはそれを作れるとしてどのような運用を考えていますか?


この1の部分では、はいと記入したものが数名いたが、やはりサブリミナル効果の一部に特化したものかそれ以下のものしかなかったが、アースという未完成なプログラムを持参したのが藤原であった。この時のアースにはベースとなるデータが収められていたがまだ細かな部分は出来上がっておらず、癒しだけに特化したものであった。そのプログラムの全容が明らかになったことで、研究所のすべてのスタッフを総動員してわずか2週間で仮アースシステムが藤原の知らぬまま稼動していたのである。怒り、悲しみ、絶望、崩壊、争いなどの負に特化した変換機能も追加され、その持続時間すらプログラムの中で計算され、付与されてしまっていたのだ。


場面は渡部と藤原の会話に戻る


「どのシステムの稼動の権限も私にある。それよりも、新しい選択ボタンも作成したのだが、どうにも効果薄いのだが、どこが悪いのか理屈が見つからないのだが、見てもらえるかね」


その時、最上級権限でしか入ることの許されないこの部屋の自動扉が開いた。


「WRお前帰国したのか」


扉の開放とともに金色の髪がなびく、青い瞳の少女が立っていた。


「お父様、お兄様、ただいま戻りました」


WRとは、隠語である。


A-Zまでを1-26の数字に変換し、1818番目でRRとなる。


Rの文字が2つ重なったことでWRという名前が付けられた実験体の名称で付け加えるとするなら、試験管培養によって生まれた新人類である。


この研究所では特に大したことではないが、試験管ベイビーという存在が現実のものとして公表されたなら、今の世界では大きな衝撃をもたらすと同時に多くの問題を抱えることになる。


人権や倫理の秩序バランスが重視される今の世界にあって存在してはいけない神や悪魔に匹敵するものがこの新人類である。


世界中の政府機関の中でも最重要機密であるこの情報は権力中枢の内部でも知るものは少なく、決して外部に漏れることはない。


無論漏らそうとする者の存在自体も抹消されてしまうからである。


渡部自身も経済産業省の責任者の1人として表向きの顔を持っているがその部署の人員は渡部と藤原の2名のみ。


渡部の承諾がないと入ることの出来ない特殊部署であり、その個室からこの研究所へと繋がる直通のエレベーターで2人は行き来している。


この研究所と平行して、世界中の地下深くにこのような研究所が多数存在し、世界各国で近未来の技術革新を担っている。


表世界にその技術が出るのは早くても1世紀前後にはなるが、表世界での試験運用の中でたまに目撃されることもあり、UFOや宇宙人だと騒がれることもある。


地下での試験運用には敷地としての限界があるためにこの部分だけは他の手段が見当たらないのである。


話をWRに戻すと、1818という番号は世界で製造された中の1818番目という意味である。


世界中のあらゆる天才といわれる脳の細胞の一部から培養されている新人類ではあるが、WRと名づけられたこの少女は世界中の研究所の中でも特別な扱いを受けている。


一つは


悪魔の刻印数字といわれる666を2つ重ねて持つ存在で生まれてきたこと。


そして


天才と名高いアインシュタインの脳を用いて、世界で初めてその培養と成長に成功した実験体なのだ。


18が何故666に関係するのか


これも隠語ではあるが 6+6+6=18


新約聖書のヨハネ黙示録にある666の獣が1つになった数字が18である


そして、その18を二つ記されたWR


現在1818通称WRはこの組織にとっての象徴のような存在として扱われている少女なのである。


「イザベル、おかえり」


渡部と言い争う構えをだった藤原の表情が少し和らいでいた。


「渡部所長、アースシステムの試験運用に僕が反対なことに変わりはありません。ですのでお手伝いは出来ませんので、そちらでお好きなようにされてください」


「分かった。君はDHの開発のほうに力を入れてくれたまえ。アースの修正はWRに頼む」


「お兄様が嫌なら、私もお手伝いできません」


2人の方を睨み返しながらも、声を押し殺して渡部の声が聞こえた


「分かった。この件は2人には頼まん。」


「それよりWR,いい加減に藤原のことをお兄様と呼ぶのは止めろ。アインシュタインと同じ特殊遺伝子をもっている同人種ではあるが、新人類であるお前と旧人類である藤原とは全く異質の存在だと何度も言っているだろう。」


「それならお父様も私のことをWRではなく、イザベルといつ呼んでくださいますか?」


「僕なら構いませんよ、渡部所長。こんな可愛くて世界一の頭脳を持つ妹の兄がわりになれるなんて機会ありませんからね」


「それなら構わないがWRはWRだ。それでいいなWR」


「分かりましたお父様」


「それでは今日は私は地上での職務に戻る。今日はもう降りないがお前たちも地上での存在を欠かさぬようにな」


自動扉が解放し、渡部はエレベーターへと向かっていった。


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