した側の結末
前回同様。頭空っぽにしてお読み下さい。
僕は会長親衛隊の副隊長である篠沢です。
ただいま。平親衛隊員の潤平くんと一緒に昼休み中の会長さまとその恋人さんを密かに見守っている最中です!
「はぁ……会長さま。本当に良かった」
「あんな下半身が緩い風紀委員長と別れられることが出来たのも、あの生徒のおかげだな」
僕のうっとりとした溜息に同意しながら、クールな表情を崩さない潤平くん……うん、いつも通りの日常風景だ。
つい、この前までの惨事がなつかしく思えるくらい。
僕が敬愛してやまない会長さまに恋人が出来たと隊長から聞いた時は、本当に心の底から祝福した。
この学園内で誰も愛そうとしない会長さまを心配していたからこそ、それが出来たんだと思う。
もちろん親衛隊の中には悔しがり、相手に制裁を加えようと企む隊員も少なからずいたけれど、会長さまのお相手があの風紀委員長とだと知ると、それもすぐに取り止めたようだった。
……あの恐ろしい風紀委員長にかなう相手なんて、一人か二人くらいじゃない?
けれど、まぁこれで会長さまが自由に恋愛を楽しめることが出来るなと、この時の僕は愚かにもそう安堵してしまっていた。
○
「卓が……浮気をした」
会長さまから相談の指名があって惚気話でも聞かされるのかな?とちょっぴりワクワクしながら会いに行くと、涙を両目いっぱいに溜めながらふるふると子犬のように震えている会長さまのお姿が。
一体何があったのかと問い質すと、恋人の風紀委員長……卓が自分の管理する親衛隊と毎夜毎夜と身体を重ねているという衝撃の事実を聞かされた。
「そんな!会長様は怒らなかったのですか!?」
「お、怒った……けれど、聞く耳を持ってくれなくて………」
それからが、僕ら親衛隊と会長様の心労が絶えない日々となった。
会長親衛隊の内部は少し荒れた。
風紀委員長と会長さまを別れさせよう!
やっぱり風紀委員長なんかに会長さまの恋人は務まらなかったんだ!
風紀委員長親衛隊に制裁を!!
こんな感じで。
けれど、荒れた部分が“少し”っていうのは、実は潤平くんの力が大きく関係している。
『勝手なことをしてみろ。お前ら明日の朝日が拝めないと思え』
う~ん。正直なところ潤平くん怒らせると色々怖いからねぇ。
親衛隊隊長は使い物にならないし、ただのお飾り隊長だし……。
結局僕と潤平くんで親衛隊の問題は大事にならなくてすんだけど、それでも僕らでもやっぱり腸煮えくりかえるくらいに怒っていたし、風紀委員長の浮気のせいでどれだけ会長さまが傷付いたか思い知らせてやりたかった。
けれど……会長さまが僕達に言っていたんだ。
『俺が出来るところまであいつに……卓に尽くしたいんだ。だからどうかこのままにしておいてくれ。我が儘でごめんな。もう暫くその我が儘に付き合ってくれないだろうか?』
……って。
だから僕と潤平くんでやれるだけのことはしてきたし、フォローだってした。
そうして会長に訪れた“救い”。
それが会長さまの新しい恋人……上崎 章平だった。
平凡な顔をしているけれど、とっても会長さまを大事にしてくれている。
ほら、今中庭のベンチでラブラブしている会長さまと上崎くん。
とっても幸せそう………。
「はぁ……以前の会長さまには見られなかった満面の笑顔……良かったぁ………」
「何回言うんだ。それにまだ問題は残っているんだぞ、油断している……あ、」
「え?なに、潤平くん……あっ、」
あ、ああっ!
風紀委員長の卓!
中庭のベンチでイチャついていたお二人の間を割って入った!!
ちょっ、なにあれ図々しい!!
上崎くんの胸ぐらを掴んでものすっごく威嚇している!
「潤平くん!もうあの卓ってヤツを放っておく必要ないよね!?だったらさっ、」
「分かっている。会長からもお許しは出ているんだ。こうなったら思いっ切りやってやろうか」
「うんっ!」
○
この計画は結構えげつないってことは理解していたよ。
けれど、好き勝手やっておいて、また更に好き勝手を重ねるっていうんだったら僕達は容赦しない。
幸せなそうなカップルを……それも敬愛してやまない会長さまとその恋人の邪魔をするっていうんだったら、ちょっと恐ろしい“メ”にあってもらっちゃう。
まずは情報の提示からだよね。
「風紀委員長に恐れず、さらには襲い掛かっても誰も文句を言いそうにない凶暴な相手を割り出した」
「へぇ……風紀副委員長だけじゃなかったんだ」
「副委員長は上下関係の上ではかなりキッチリとした性格をしているらしいからな。この作戦には気乗りしそうになかったのでリストから外した」
「ん、そっか。で、その相手っていうのは?」
「素行が極度に悪い生徒ばかりのFクラスに在籍している……この付近で有名な暴走族総長の涼 泰斗。この生徒を使って風紀委員長をこらしめてみようと思う」
「じゃあ、手紙は僕が制作するね」
「頼んだ」
ふふふ……涼 泰斗っていったら超ワイルドイケメンのピアス耳にジャラジャラつけてる不良さんじゃん。
体格も卓のヤツより良いし、きっと抵抗とかできっこないよね。
「すんごい扇情的な手紙を書いて、あ・げ・る♪」
○
涼っていう不良の下駄箱に僕の書いた手紙(差出人はもちろん風紀委員長)をこっそりと入れて、卓の方には会長が話があるから待っているよという嘘を伝えて、二人の待ち合わせ場所に指定した空き教室には、僕と潤平くんが予め設置しておいた盗聴器が幾つかあって、そしてさらに隣の空き教室には僕と潤平くんがドキドキしながら待機していた。
……ふはぁ……これからどうなっちゃうんだろう。
会長さまに酷いことをしていた報いを受けろといわんばかりに、僕の心臓は高鳴った。
○
そして、ついに待ち合わせ時間丁度。
盗聴器から聞こえてくるのはガラガラと教室の扉を開ける音と一人分の足音。
後に静寂が続いた。
次に聞こえたのは急いでいるような足音と、誰かの荒い息遣い。
きっと走ってきたのかも。
最近は風紀の仕事が忙しいって副委員長が言っていたから、多分仕事をしてから来たのかも……。
ノイズ混じりの会話が、僕と潤平くんの耳に入ってきた。
『おい、ここに胡衣のヤツ――』
『アンタか、こんなジョウネツ的な手紙寄越したのって………』
『ハァ?何言って……』
『ふぅん………まぁ、タチっぽそ……というか、あの“噂”の風紀委員長サマだモンな。とうとうネコにまで興味が出たか?』
『テメェ……あの“噂”のってなんだよ……』
『あぁ?セックス依存症で下半身事情が緩みきってるって……そうそう、確か脳内下半身とかいうアダ名付けられてもいたっけか』
『なっ―――――!?』
うん、それは事実。
だって風紀委員長親衛隊内部でもそのアダ名流行ってるもんね。
『ま、なにはどうあれ……こんな手紙を俺になんか出してくんだ。俺がここまで来てやったんだから、手紙に書いてあるプレイは全部やってやるから安心しな』
『えっ、ちょっ……なにを――――――ッ』
盗聴器から聞こえてきた風紀委員長の絶叫は、僕と潤平くんの心に穏やかさを与えてくれた。
○
『……うぁ、……グゥッ………ぅ………』
『ハッ、声出しても良いんだぜ?』
『だ、れが……こん、なぁ………ぅッ……』
『つぅか、お前って痛みで感じてね?どんだけ好きモンだよ』
『ひぃっ、あっ、あっ、あぁっ……!やめっ……』
『やめろってさ、心にもねぇこと言うなって』
『それ、ホントにやめ、やめやめっ……!あ”あ”あ”ぁ”――――――ッ!!』
『イッてやんの』
うわぁ……声聞くだけでもかなり酷いことされてるって分かるぅ。
ま、僕が書いた手紙の内容を思い出せば、だいたい今やってること分かるんだけど……それにしても本当にアレをやるなんて……総長さまって結構恐ろしいんだなぁ。
目線で潤平くんが『何を手紙に書いたんだ?』って訴えてくるけど、僕はそ知らぬ顔でいようっと。
潤平くんの中にある僕のイメージを盛大にぶっ壊したくはないしね。
『おら、今度はこの穴ん中攻めてやっからよ……』
『そこっ、チガッ……違う違う違う違うってぇ……!!あ、や………漏らす……漏らすからッ、漏らすからッ!!ひゃっ……ひぎゃあああぁぁ…………!!』
……プシュッ!……ジョボボボ……………。
何かの液体が盛大に飛び散っている音をBGMに、僕と潤平くんは空き教室を後にした。
廊下に出た途端に感じる涼しげな風が、今の僕の心情を正確に現していた。
○
それから数週間が経った。
あれから風紀委員長が会長さまに付きまとったりする姿は一切見えず、また風紀委員長親衛隊も暫くして解散になっていた。
そこの親衛隊の隊長とは少しだけ会話くらいはする間柄だったから、それとなく聞いてみたところ。
「あぁ、なんかね。飼い主が見付かったからって、青い顔しながら俯いて僕達に解散宣言をしたんだよ」
「へぇ。飼い主……ねぇ………」
「ま、生徒会長にしつこくしている姿を見て、幻滅してた隊員ってけっこういたからさ。今回の解散宣言はこっちとしては逆に助かったっていうか」
「親衛隊隊長の言葉とは思えない台詞だよね、ソレ」
「セフレも暇じゃないってことで」
「ひっどぉい」
……青い顔してたってさぁ………。
風紀委員長はもしかしたら気付いていないのかもしれないけれど、セックス依存症で誰とでもセックスしてないと我慢出来ない性癖だったって話……あれってただ単に根っからのネコ体質だったから、タチだと身体が満足していなかったからそうなってただけじゃない?
涼って不良に好き勝手されてた時の声。
嫌がってるわりには感じまくっていたようだし。
M気質っぽかったし。
今のところ風紀委員長が誰かに手を出したって話も聞かないし、もしかしたら多分……総長と上手く行き過ぎてるかもしれないね、これ。
今日も今日とて中庭でイチャイチャしているお二人を上の階の窓から見下ろして、僕は満足の溜息を吐く。
この中庭を見下ろせる科学準備室は僕と潤平くんのお気に入り。
隣もあまり使われていない教師用仮眠室だけど、こっちの準備室の方が良く見るんだよなぁ。
「おい、隣の仮眠室に誰か入ったようだぞ」
「へぇ……珍しいね。誰だろ一体……」
ガタンガタンと音がしたと思ったら、今度は聞き覚えのある声が会話をしていた。
『ホラ、ズボン脱いで俺に見せてみろよ』
『………………』
『バイブ、また授業中にスイッチ押してやろうか?』
『ひッ、わ……分かった。ぬっ……脱ぐ……から……それだけは』
『おったてて言う言葉じゃねぇな』
……あれ?これって……まさか今からエッスーでエッムーなプレイをする気じゃ?
……そのまさか、だ。
視線で潤平くんと会話。
えぇ……ここでかぁ。
まぁ僕達の聖域に被害が及ぶ訳じゃないから別に良いんだけど。
それにしてもどんだけマニアックなプレイするつもりだよ。
っていうか涼ってどんだけ大人の玩具持ってるんだよ。
『ひぐ、ぅ……あ”……あ”ぁ”!!』
『良い声で鳴くなぁ……今度はこっちもやってみるか』
『ひぃ……!い”……ぐぅ………』
『へぇ!こんなんでお前はイク訳か。ド変態野郎だな』
『ひゃ、ひゃっへぇ………』
『もう呂律回らなくなったのか?へばるなよ。まだまだお前の身体を堪能しきれてねぇんだから』
言葉責め……総長さんってサドのお人だったのかぁ。
というか、何だか二人のプレイ最中の声聞いていると……こぅ……こっちの方も何か……ムラムラと…………。
「ね、ねぇ……潤平くん…………」
「……ハァ………俺らも、するか?」
やった!
潤平くんと久々のセックス……身体の芯から疼いちゃうよ。
「最近忙しかったもんね……」
「俺達だって恋人と一緒にいたらすることはしたいしな」
甘い甘い恋人との時間に浸りながらふと目を窓の外へやると、会長と上崎くんがチューしているところだった。
なんだろ。
まぁ上手く纏まり合ってくれたってことで。
「これにて一件落着?」
「ま、それで良いか」
見つめ合った僕達は、悪戯が成功した子供のように微笑み合った。
END.
オマケ
「それにしても、篠沢って何で俺みたいな平凡顔を好きになったんだ?」
「平凡顔じゃないと思う……というか、僕は潤平くんの野獣な一面に惹かれたっていうか……」
「とりあえず篠沢もM気質だったってことか」
「そこは認める!」
「男らしい………」
少しでも楽しんで頂けたのであれば幸いです。




