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21.合流のちに潜入

「斧だけに、オーノー」


 たった一言で、これほど印象の変わる台詞ってあるだろうか。いや、ない。それくらい、私の中でミクの印象がガラリと変わった。


「あんなに物腰が丁寧だったミクが、こんな……」

「たった一言の駄洒落でこんなに!?」


 なんて冗談は程々にしておいて、浮遊する巨大ゴーレムの頭部を追い掛けようとした私とティアは、先ず攻撃に使ったものの外れてしまった、ティアの斧を拾いに行くことにしたのだけど……。


 その先で、こうしてミクとヒナタのコンビと合流することができたのだ。


「お姉様、お隣の方はどなたです?」

「ん? あぁ、はじめましてだっけ。えっと――」

「ちょっと待った。見知らぬ少女よ。もう少し言い方を変えられない?」

「え? ……あぁ! こほん。お姉様、隣の方は一体お姉様のなんなんです!?」


 そんな茶番をやっている暇はないのだけど。


「こっちは幼馴染のティア。こちらは、妹分のヒナタ」

「どうも」

「どうもです」

「そしてムードメイカーのミク」

「私の紹介の文言がユニークに!?」


 自らの茶番は棚に上げるとして、別れてからの詳細を話し合うと、なんとなくではあるが状況が飲めてきた。


「何ともまぁ、誘導されている気がするね」

「モカさんもそう思います? 私たちもそう思って、なんとか神殿から脱出してきたんです」

「怪しいのはクエスト斡旋所、ね。ゴーレムが向かっているのなら、中身がそっくりそのままクエスト斡旋所って訳ではないと思うけど」


 確かめてみれば早い。そう結論付けて、私達はゴーレムの頭部を追うようにして、街の中を駆けていく。


 頭部のスピードはなかなか遅く、その軌道から攻撃を当てることは難しいが、追い越すことは容易であった。


 神殿に出たという犬のゴーレムを見当たらないし、室内専用なのだろうか。それもこれも、これから向かう場所で明らかになるのかどうか。


 辿り着いたクエスト斡旋所は、外観は草原の街と大差ない様子だった。違いがあるとすれば、壁に刻まれた石畳と同じような文様の装飾か。


 こうした特色が各街にあるのだとしたら、たどり着くまでの過程も楽しめるかもしれない。そんな冒険を夢見ながら、私は代表してそっと扉を開けて中を覗いてみた。


 ――直ぐにそっと閉じたけどね。


「あれが、ミク達が見た犬のゴーレムか」

「あ、居たんだ。あれ、攻撃すると仲間を呼ぶから厄介なんだなぁ」

「ミクさんがやたらめったら銃を乱射するので、撒くのに苦労しました」


 本当に、イメージがガラリと変わったなぁ。


 丁寧な物腰は動画配信がきっかけで産まれたキャラらしいから、この変化がそちらに影響しなければ良いんだけど。


 そう考えると、私ももう少し料理的なキャラ付けを心掛けたほうがいいのだろうか。例えば、あの犬のゴーレムは麻婆豆腐のように苛烈だ。みたいな分析をしたり。


 それとも、ミステリー好き活かす?


 だとすれば、是非とも隠し通路を探したいものだ。隠し部屋とか、意味ありげな人形とか。もしかしたら時計に細工がなされているかも……。と考えたけれど、本題のゴーレムはどちらかと言うと幻想的。


 その解決は、果たしてロジックがアドベンチャーか。


「中はどんな感じだった?」


 ティアの問い掛けに、私は思い出すように少し上空を視線を上げた。


「吹き抜け、って感じだったかな。で、地下に向けて空間があって、扉の先は日の字に繋がる通路って感じ。まさに格納庫だねぇ。ベルトコンベアーみたいに、地下を身体が流れていて、天井から降りてきた頭部がドッキングする感じか」


 こちらに向かっている頭部が到着すれば、丁度この玄関の先で目線が合うだろう。


「それなら、あの頭部がここに来る前に制圧すればいいわけだ」

「ミク達が手に入れたメモみたいなのに、何かヒントはなかった?」


 ティアの問い掛けに、ヒナタが手に入れたメモを隅々まで確認をする。


「駄目ですねー。地図に丸印が記されているだけです」

「てことは、入ってみなければ分からないか。せめて内部の見取り図があれば良いんだけど」


 どこに向かえばいいか分からない状況なら、犬ゴーレムとの戦いは避けられない。けれど、攻撃をすれば仲間を呼んでしまう。


 逃げるにしても、隠れられる場所を知っていないと追い込まれるだけになるかもしれない。


 大事なのは、犬ゴーレムにバレないように中に侵入すること。それか……。


「少なくとも、上は吹き抜けで何かがあるようには見えなかった。あるとすれば地下。となれば……」


 ちらりと、ミクとヒナタを見る。


「……まさか、穴を掘る気?」

「なるほど、ゴーレムにはゴーレムを。という訳ですね!」


 そういうことだ。


「こちらも犬型のゴーレムが作られるなら、うまくカモフラージュに出来るかもしれないけどね」

「ぶっつけ本番で試すのはちょっと怖いね。ミクとヒナタは試さなかった?」

「ああいう状況では銃の乱射が正解な気がして」

「ヒナタはあまり、魔法は使わないのです」


 なんで? と問い掛ければ、魔法を使うカナタが格好良いからと惚気られる。


「前衛を張るユキは格好良かった?」

「背中で語るような奴に思える?」


 うーん、誰かを護るという男気よりも、そうした方が良いという打算のような、効率的な考え方が見え透くような。


 そんなことはさておくとして、先ずは穴を掘ることが可能かどうか、が肝心だろう。


 広場で試してみたが、街を傷つけるのは不可能なのか、これは無理であった。では、穴を掘れる場所はないかどうか。クエスト斡旋所の周りや、広場を重点的に捜索してみる。


 すると、程なくして穴を掘れる場所が見つかった。


「花壇の土なら、穴が掘れるみたいだね」

「ダイワームのゴーレムが通過できるくらいの大きさだし、ここから掘るのが正解かも」


 ティアと頷き合い、さっそくゴーレムを使って穴を掘る。暫くして、操作するゴーレムの頭部に付属したカメラが広い空間を捉えた。


「やっぱり、地下に色々あるみたいだねぇ。さしずめゴーレムの生産工場ってところかな?」


 材料となる土の保管庫だろうか。さすが、土属性の魔法なだけある。幸い、見張りのようなものは見当たらない。


 隠し通路の有無は、見た限りでは分からないか。出入り口であろう扉があるだけで、まるで堆肥舎のように土が寄せられている。


「どう、モカ? 侵入できそう?」

「出来そう。でもどうする? 陽動と侵入で分けたほうが、侵入もしやすそうだけど」

「陽動が増やした犬ゴーレムが、侵入部隊を拒むかもしれないでしょ。みんなで侵入。喉元に食らいついてしまえば、後はきっとどうにでもなる」

「お姉様の幼馴染さんは、なかなかワイルドですね」

「私の尻を叩く役でもあるけどね」


 そう笑うと、ちょっぴり顔を赤くする思春期だった。

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