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18.VSマキシマムゴーレム①

 街に入って頭に浮かんだ感想は、どこか見覚えがある。そんなところだった。


 それは、建ち並ぶ家に既視感を持つからだろうか。私はまだ草原の街しか知らないのだが、それと似たような造りだとすぐに感じ取れた。


「家の造りっていうのは、どこも変わらない感じ?」


 ミクに訊いてみると、答えはイエス。


「この大陸は一つの王国が治めていて、建築物は全て統一されているようです。所々で統一戦争という単語を知ることができるので、おそらく勝者の文化が反映されたのかと」


 その反面、石畳に独特の細工が施されているのが見て取れるため、すべてを上書きしたとまでは言えないのだろう。


「それにしても、明るいですね」


 キョロキョロと周囲を眺めるヒナタを習って、私も周囲を確認する。


 天井は砂に覆われているのだろう。それがドーム状になっているのが分かる。明るいのは……発光体が浮いているせいか? 蛍のような光がふよふよと辺りを漂っていて、それが空間を照らしているのだろうか。


 門を背にして進んでいくと、しばらくして十字路が見えてきた。おそらく、街自体の構造も、多くが同じ様な形をしているのだろう。


 ミクとヒナタが右の方に視線を向けた。

 背後からそれを見ていた私は左を向く。


「っ、走れっ!」


 私の声に驚いた二人は、私の視線の先にいた存在に目を見開いた。そして、私の言葉の通りに、前方に向けて走ってくれる。


 私は、声をかけることに意識を逸らされて駆け出す準備は出来ていなかった。それでも冷静に、目の前の状況を正確に捉えようとする。


 巨体が、とてつもないスピードで接近している。

 正方形、長方形、球体を組み合わせた、ずんぐりむっくりなモデル人形のようなそれ。

 クエスト斡旋所と同じくらいはあるだろうか。見上げるような巨体が、アッパーカットのように拳を振り上げようとしている。


 これはもう……避けられないな。


「ぐっ!?」


 せめて体を横向きにして、ガードの体勢を取ってみる。奇跡的にタイミングは完璧だったようで、視界の隅に表示されている私の体力ゲージは、半分ほどの減少で済んだ。


 おすすめだと言って、ガードのステータスを高くした素材を用意してくれたカナタ、グッジョブ!


 最悪な状況なのにも関わらず、思わず笑みが漏れてしまうが、視界に入る光景はそう呑気にはしていられない。


 身体は弾き飛ばされて、天井を間近に見る場所まで打ち上げられていた。痛みがないのがゲームらしいが、この高さからの落下は、流石に恐怖を感じてしまう。


 その恐怖を打ち消すかのごとく、驚愕の光景。


「あの巨体で、跳ぶのかよ」


 宙に浮かぶ私を捉えるかのように、跳び上がった巨体が剛腕を振るおうとしている。


「打落っ!」


 慌てて強制落下を伴う必殺技を使用すると、思惑通りにその剛腕を回避することができた。


 着地もスムーズであり、巨体が着地をする前にその場を離れる。あれが何なのかを調べるのは、離脱した二人に任せることにしよう。


 ※


 モカから離れたミクとヒナタは、十字路をまっすぐに進んでいき、神殿の前へと辿り着いた。


「神殿には小さな図書館があるのが一般的なので、おそらくここにもあると思うのですが……」


 中に入り、受付のようなカウンターに視線を向ける。すると、テキストが表示されたディスプレイが表示された。


 ミクはそれを操作して、案内図を呼び出す。


 このゲームでは、視界に現れる『調べる』というコマンドに視線を向けることで、情報などが得られるのだ。


「図書館がありました。内部の構造も、他の街と変わりないようです」

「あの、情報収集に二人もいるのかな? 私だけでも加勢に行ったほうが……」

「いえ、モカさんはソロ向きの戦闘スタイルですから、無理に戦闘に加わるほうが邪魔かもしれません。ヒナタちゃんは前衛に寄っているし、私は後衛。別行動するならこれが理想です」


 確かに、ヒナタは誰かと一緒に遊ぶことが多かったため、特化したステータス構成となっている。納得して、ミクの案内で図書館へ移動した。


 図書館と言っても、神殿の中の一室にある小規模なもの。小学校の図書室と大差なく、蔵書のほとんどは歴史書のような物が多かった。


 残りの大半は、ある一つの魔法についての研究の資料らしい。


「これ、ゴーレムの資料が多いみたいですね」

「あ、こっちにもありまよミクさん。えっと、……精霊とゴーレムを融合?」

「精霊って、転生の際に選べる種族ですよね?」


 精霊は魔法の属性に対応した物があり、好きな属性を強化していくために選ばれる種族なのが、二人の認識だった。


「なるほど、種族も世界観に関係しているのですか」

「ヒナタの獣人も、なにかあるんですかね?」

「そういうのを調べるのも、なんだか楽しそうですよね」


 好奇心を満たしたい欲求もあるが、今はまだその時ではない。そう気を引き締めて、ミクはゴーレムに関する資料を読み込んでいく。


 ヒナタが読む資料には、魔法が得意な精霊にゴーレムの長所である攻撃力と耐久力を獲得させるための研究が記されていた。いまモカが戦っている存在とは無関係ではないかと思い、そっと閉じる。


「なるほど。ゴーレムというのは基本的に、モデル人形みたいな姿形をしているようです。それに特徴を持たせて機能を発揮させる」

「あれもゴーレムなんですか?」

「ですね。マキシマムゴーレムというもので、攻撃力と耐久力を大幅にアップさせたものらしいです。けれど、あまりの重さに動かせなかったみたいですけど」

「……」

「……」


 見つめ合う。


「動いてましたよね」

「動いてました」


 頷き合う。


「弱点とかはないんですか? 耐久力がアップってことは、ちょっとやそっとじゃ倒せませんよね?」

「うーん、ちょっと待ってね。……あった。緊急停止用に、首の部分が脆い素材になっているみたい」

「あ、そこに部位攻撃を仕掛けるわけですね」


 ならば、それを早く伝えに行こう。本を閉じ、図書館の扉を開けた二人。しかし、その一歩が踏み出せなかった。


 何故なら……。


「……」

「……」


 二人は、それと見つめ合う。

 正方形と長方形、球体が組み合わさって出来た犬のようなものと。


「これ、一気にゲーム内容が変わってませんかーっ!?」


 ヒナタの叫び声が、神殿に響いた。

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