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16.武器の強化を学ぼう?

「はぁ、ちょっと休憩」


 手頃な岩に腰掛けて、私はインベントリにしまっていたカフェオレを取り出した。


 三日坊主、なんて言葉があるけれど、同じことを三日も続けるのは凄いことだと思う。それくらい、私は三日間に渡ってモンスターを倒し続けたのだから。


 ……ちょっと盛った。経験値目的の討伐だったために、それほどモチベーションが長続きせず、クエストによって獲得できる経験値を当てにしていたから。


 レベルは現在四十を越え、山岳エリアの適正レベルには既に達している。これ以上のレベルアップを目論むなら、適正にあった場所に行かなければならないのだけど――。


「私の担当は、草原の街だからなぁ」


 ため息をついて、残ったカフェオレを飲み干す。


 草原、砂漠。それ以外のエリアに行きたいのなら、せめてこのエリアのエクストラクエストを見つけて手土産にしなければならないだろう。


 どうよ。私はもう終わったんだから、後はガイアとロンドのターンでしょ? と。


 でも、その間に強くなることを放棄するのも、なんだか勿体ない。そう思って、装備の強化に挑戦してみたのだ。


 先ず、クラフトで装備を二つ作る。この時、素材の違うのにするか、同じものにするかは手持ち次第。


 そして片方をベース、片方を素材として合成をする。すると素材とした装備のステータスの一割を、ベースが受け継ぐことが出来る。


 これが強化の基本的な流れであって、装備を作るために素材を集めて、クラフトで作って、合成して、装備製作の素材がなくなったら素材を集めて……と、結局は経験値も貯めてるよね? となるわけだ。


 勿体なさすぎるよなぁ。山岳エリアにいけば、経験値も増してレベルアップも捗るし、素材のバリエーションも増えるため、装備の製作も幅が出るのだから。


「よっこいしょ」


 立ち上がって、私は街へと向かって歩き出した。


「と言うことで、何かいい手はないかな?」


 クエスト斡旋所を訪れ、暇そうにブラブラしていたカレンを捕まえて質問をする。にこやかに対応してくれた彼女は、そのにこやかな顔のまま、適切なアドバイスをしてくれたのだった。


「人に任せるのが、一番いいと思いますよ。合成は素材の一割を受け継ぐので、物凄く合成をした装備を素材にすることで、一気に今の装備を強化させることができるんです。合成するごとに受け継ぐ割合は低下するのですけど、一回にまとめれば上昇率の低下は無視できますから」


 なるほど。つまり、誰かに素材となる装備を作っておいてもらえばいいと。


「合成屋と言って、有料で素材作成を請け負ってくれる人達も居ますので、彼らに頼んでみたらどうでしょう」

「あー、なんかティアにもそんな話を聞いた気がする。コツコツやるのは嫌いじゃないと思ったけど、体験すると、やっぱり他人任せにしたくなるよね」

「ですね。結構儲かるそうですよ。ゴールドがあれば家を買ったりも出来ますし、手っ取り早く稼ぐならお勧めの方法でもあります」


 お抱えになったら、安泰だ。


「で、頼むとおいくらぐらい?」

「合成した回数と、素材集めの手間によって変わります。素材の持ち込みなら多少は安く抑えられますけど、それなら完全に任せてしまって、クエストでお金を稼いだほうが楽でもあります」


 あ、把握した。つまり、合成してあげる代わりにお金を稼いできてね、みたいな契約なのか。


「露店にいけば店を開いている人も居ますし、斡旋所三階のフリースペースに行けば、プレイヤー間で交流が図れる掲示板があります。そこで探すのも手ですね」

「じゃあ、露店でも回ってみようかな。エレベーターとか、ないんでしょ?」

「あればよかったんですけどねぇ」


 ゴーレムを利用すれば、なんて考えてしまうけれど、ないものを強請っても仕方がないか。


「あ、それと一つ気になっていたことがあるんだけど」

「なんです?」

「ビキニな鎧って、なに?」


 カレンがキョトンとした顔をする。


「知らないんですか? あの、ビキニ水着のような形状をした鎧です」

「あー、あー。なんか見たことあるかも。でも、なんでそれの実装で揉めるの? 装備はプレイヤーがデザインできるんだから、実装するしないは関係なくない?」

「ないですね。でも、デザインするためのスケッチブックって、結構貴重な品なんですよ。クラフトで作るのも手間ですし、手に入るクエストで指定されたモンスターの討伐もなかなか強い。レートも高くて高額になる」

「あー、初心者には手が出づらい訳か」

「そうです。最初からお気に入りの装備で、という人には、合成によって作成できるのは素敵なのです。でも、今のところ実装されていないので」


 だから、その鎧を実装してほしいと要望が起こる。


 けれど弟さんからしたら、その様なチャラチャラ? した様な装備は認められないのだろう。勝手に作られるなら受け入れられるけど。


「……こういう対立をしたいから、あえて実装してなかったは深読みしすぎ?」

「ノーコメントで」


 何となく、ファンツインという会社のことが分かってきた気がする。笑顔のカレンがその証拠だろう。


 彼女に別れを告げて、私は露店に向かった。相変わらず賑やかで、店も客も多い。休日だから、尚更か。


「ミクは、居ないか」


 動画の編集でもしているのだろうか。エクストラクエスト探しに役立つかもしれないし、今度じっくり観賞しよう。


 それにしても、人が多い。犬の耳のようなものが生えている人もいるけれど、あれはアクセサリーなのだろうか。……じっと見ていたのに気が付かれたのか、その人がにこやかに話しかけてくる。


「これ、気になります? 転生すると、種族を選べるようになるんですよ。種族によってステータスにボーナスが付きますし、クラフトに特化した種族もあったりして」

「へぇ、そうなんですか」


 顔立ちからして年下だろうに、なかなか詳しい。それに転生はレベルが百を超えたら出来るものと聞いていたから、なかなかのベテランなのだろう。


「ふふーん。何でも聞いてくださいな。ヒナタは詳しいのです」


 なかなか人懐っこそうなタイプらしく、その耳の形から、どことなくウーフの面影が見て取れた。性別は違うだろうけど、きっと、ワンコ属性だ。見ず知らずの人に対してこの距離感。……これが若さ?


「えっと、お勧めの合成屋とか」

「ワンダフル! 今ちょうど、友達が合成屋をやっているんです。ナイスタイミングですよ」

「ナイスタイミング?」

「えぇと、ちょっとこちらに」


 促されるまま、露店を離れて人けの少ない路地裏に入る。


「その、初対面の人にこんなことを言うのは、ちょっとどうかと思うのですけど、その彼、クラスの男子達と誰が一番露店で稼げるかを勝負しているんです。それで、一気に稼げる合成屋を選んだんですけど、結構口下手な人で、あんまり客引きができなくて」

「その子のこと、好きなんだ」

「はい……えぇっ!? い、いや、違います。ただの幼馴染で、その、家が近所で、その、相談とかされて私も任せているんですけど、もっと稼がせてあげたいなー、なんて、というか、すっごく優秀なのでお姉さんの為を思って!」


 これが若さか。


「そんな人に、女の人に紹介して大丈夫?」

「……え?」

「あ、冗談冗談。私、あんまり年下には興味ないから」

「ですよねー。そんな気がしたので提案したんです。もー、冗談がお上手」


 めっちゃ目のハイライト消えてたから。このゲームってそんな機能があるの? ってぐらい消えていたから。


「じゃあ、案内しますね。ヒナタに付いてきてください」


 この選択が吉と出るか凶と出るか。私はおっかなびっくり付いて行き、円形の広場から少し離れた位置でシートを広げていた男の子の下へやってきた。


「カナタくん。お客さんですよ」

「あ……。えっと、依頼、ですか?」


 物静かな雰囲気が感じられる、可愛らしい男の子だった。


「そうなんですよ。えっと……」

「モカです」

「そう。モカさん。カナタくん、こう見えて結構強いんですよ。学校でもスポーツ万能で」

「へぇ、運動部なの?」

「……帰宅部です。その、ゲームが、したいので」


 それでスポーツ万能って、神様ってどういう基準で才能を与えているんだろう?


「あの、それで……どの様なコースがご希望でしょう?」

「カナタくんの店は、オールおまかせコースと、素材持ち込みコースとがあります。その他、いろいろカスタマイズが出来るんですよ。ただ合成するだけとか、特定の能力を付与させるとか」


 まるでアシスタントだ。


「じゃあ、オールおまかせコースで」

「予算設定はどうします? 期間での指定も出来ますけど」

「あ、それじゃあ先ずは三日間でお願いしていい? それくらいで幾ら掛かるのか把握したいから。自分が幾ら稼げるのか、も」

「承りましたー。三日なら、だいたい討伐クエストを十個くらいクリアできれば賄えると思いますよ。休日以外は大抵、夕方くらいからいますので、そのくらいにお越しください。ほら、カナタくん」

「あ、……ご利用、ありがとうございます」


 将来、カカア天下になるのかもなぁ。そんな古臭いことを考えながら、私は二人に見送られながら広場を出た。 

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