大切なはなし
由妃さんとは、ほとんどケンカをしない。
だって、好みがめっちゃ合うからさ。
もうさ、たまに元カノに似てるなっておもう部分もあるけど、でもそれは似ているだけであって、オレは由妃さんが好きなのだから、なんの問題もない。
それから数年後、オレは由妃さんにプロポーズをした。
由妃さんは、オレのプロポーズを受け入れてくれた。
晴れて婚約成立。
でも…なぜかプロポーズしたとき、一瞬由妃さんの表情が少しくもったようにみえたんだ…。
気のせい…なのかな?
その後の由妃さんは、いつもとかわらずだったので、一安心した。
婚約してから、初めてのクリスマス。
由妃さんは、結婚する前にお伝えしないといけないことがあります。
と、真剣にオレをみた。
やっぱり…
やっぱりプロポーズした時に、表情がくもったのは、見間違いではなかったようだ。
そうだよな。
こんな美人女性が、トントン拍子でオレとスピード交際して、ストレート結婚なんておかしなことだと思ったんだよ。
でも、この先…
いったい何が待ち受けているのだろう…
やっぱり結婚できません。かな…
こんな時に、オレは一瞬元カノのことを思い出していた。
元カノと別れるとき…元カノ泣いて別れないって言ってたんだ。
でも、オレは別れを選んだんだ。
泣いて…
オレはいまさらだけど、少し後悔していた。
もっと話し合うべきだったのでは?
きちんと納得してくれるまで、話し合ったほうが、よかったのでは?
と。
でも、もういまさらだ。
今ならわかる。
あの頃の元カノの気持ちが。
ごめん。
…
「あの…実は…」
由妃さんが、話しだす。
艶々な口紅を塗った由妃さんのくちびるをオレはじっとみたあと、由妃さんの目をまっすぐに、みつめた。
受け入れてやる。
今から由妃さんの言うことをさ‼︎
さぁ、こい‼︎
「大丈夫だよ。オレ、受け入れる自信ある。だから、話してほしいんだ。」
由妃さんは、頷いた。
それと同時にサラサラの髪が、スルスルっと揺れた。
「実は…はじめてあった数年前のクリスマス…あれは、実は…偶然ではありません。」
と。
⁉︎
「えっ、それは…いったい…」
「わたし…わたしは…ずっとあなたが好きで、ずっとずっと後悔して…だから…」
…
「えっと…では、以前どこかでオレたちは、あっていたと…?」
「はい…」
…どこでだろう?
こんな女性、一度みたら忘れないよな?
「壮太、あのね…わたし…瑞希なの」
⁉︎
「えっ⁉︎瑞希って…え、全然違う…よね?顔も背格好だって…」
…
「わたし、頑張ったの。肌質もかえることだってできるの。わたし…ね、頑張ったよ?どうしても壮太とやり直したくて…痩せたし、化粧もかえて、ふたえだって毎日頑張って…内側も頑張って…だから…」
…
「そっかー。なるほどなー…オレさ、言わなかったけど、ちょいちょい瑞希に似てるなっておもうところが多々あったんだよ。それでなのか。」
「ごめんなさい。ウソついていて…ずっと、ずっとごめんなさい。いつか言わなきゃ言わなきゃとは、思っていたの。あの頃のわたしは、わがままで壮太に甘え過ぎていた。ごめんなさい…こわくて…なかなか言い出せなくて…また、壮太がわたしの前からいなくなってしまうのが怖くて…だから…」
…
「ごめんな、オレが…こんなオレのために…こんなに頑張ってくれてさ。あ、でも身長も伸ばせるんだね?」
「身長は、かわってないよ?」
「え、でも…シルエットとか全然違うし…背、高くなったよね?」
「姿勢かも。今は、すごく姿勢良くするために心がけてるし」
⁉︎
それでそんなに⁉︎
「…すごい頑張ってくれたんだね、ありがとう。瑞希、改めてさ…こんなオレだけど結婚してください。」
「許してくれるの?」
「もちろん」
「ありがとう」
瑞希は、涙をいっぱいためてオレのプロポーズを受け入れてくれた。
食の好みが一緒なのではなく、瑞希は一生懸命オレにあわせてくれていたんだ。
「瑞希、今日はお祝いだ。ケーキ食べ放題行こっか」
「えっ⁉︎わたしの大好物…おぼえてくれていたの?」
「うん、もちろん。あー、でも…由妃さんは、ケーキよりラーメンって言ってたな。やっぱりラーメンにしようかなぁ」
「いいよ、それでも。壮太が隣にいてくれるなら、全然ラーメンでもいい」
…
瑞希…やっぱりめっちゃかわったな。
前なら、はあ?ムリなんだけど⁉︎って怒って帰っちゃってたのに。
「うそだよ、ごめん瑞希。ケーキ行こう!」
「うん‼︎」
オレたちは、手を繋いで食べ放題へと向かった。
これからたくさんケンカするだろうけど、でもお互い理解し合って、いっぱい瑞希の笑顔をみていきたい。幸せにしたいって気持ちでいっぱいだ。
「あー、お腹いっぱい」
って幸せそうにする瑞希をみているだけで、オレは幸せだ。
「オレもいっぱいだわー」
幸せで♡
おしまい♡




