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日本史上最大のミステリー魏志倭人伝の完全解読に挑む  作者: ひだまりのねこ


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第二十四話 ミッシングリンク 神話の正体


 さて、魏志倭人伝の解読という趣旨から離れてしまっているように感じてらっしゃる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。結論を書くだけならすぐに終わらせることも出来ますが、私は結論が書きたいのではなく、少しでも私と同じ景色を見て欲しいからこのエッセイを書いているのです。


 だから遠回りに思えるかもしれませんが、もう少しだけ古代の旅にお付き合いくださいね。


 さて、いよいよ日向に入ってきたんですが、ここから先は神話の領域となります。この先、旅を続けるには歴史を学ぶだけでは足りません、想像力やロマンだけでも届きません。歴史学、民俗学、神話学、地政学、考古学……etc これまでもそうでしたが、あらゆるものを駆使しながら欠片を拾い集め、輪郭を浮かび上がらせる必要があります。


 繰り返しになりますが、魏志倭人伝を解読するには神話、特に記紀神話の解読が必要になります。ある意味で魏志倭人伝よりも難易度が高いのが罠ですけれど、他に同時代の手がかりが残されていない以上、やるしかないのです。


 ところで、皆さまは神話ってどんなイメージを持っていますか?


 神話と創作ファンタジーは違います。たしかに神話にはファンタジー的な抽象化が含まれていますけれど、神話は、もともと実際にあった出来事・地形・人物・社会の記憶をもとに作られています。


 文字による記録がない社会では、出来事は口伝で伝えられます。しかし口伝は語り手の記憶や価値観に左右されるため、一般的に三代(80〜100年)ほどで細部が失われ、物語化が始まります。


 例を挙げると――


(事実)百襲姫が大和からやってきて、祭祀場を作り、港を整備し、新しい航海技術と航路を開拓した結果、街は大いに栄えた。


(百年後)巫女姫が海を越えてやってきて、その霊力と天才的な知恵で衰退していた街を救ってくれた。


 細部は失われますが、核心の出来事はむしろ強調され、語りやすい形に整えられたりします。


 そして――――二、三百年程度経過すると、抽象化され神話化します。


(三百年後)海の女神が現れて、その力は暗い夜すら昼間のように明るく照らし(航海技術の発展)地形を変える(港湾の整備)ほど凄まじかった。女神は人々を悩ませていた大蛇を退治した(荒れた海を鎮める)。


 神話化する段階で欠落した細部を補うように抽象化(ファンタジー化)で補強され、それによって物語が強化される。これが神話の正体です。


 まだ二百年経ってませんけど、


 新選組・坂本龍馬(幕末)などは英雄神話が形成されたわかりやすい典型例です。


(事実)新選組は京都の治安維持組織、坂本龍馬は仲介役として動いた人物


(神話化)新選組=超人的な剣豪集団、

     坂本龍馬=日本を一人で変えた英雄


 龍馬の実績が否定されるわけではありませんが、物語として語られるうちに“象徴的な英雄像”が形成されました。これは、小説・ドラマ・映画が“物語としての英雄像”を作り上げた結果、実像よりも象徴的な人物像が広まった典型例です。


 そしてこの“象徴化”は、現代でも同じように起こります。

むしろメディアの発達した現代では、神格化がリアルタイムで進むことすらあります。


 ●手塚治虫 = マンガの神様

 ●ジミ・ヘンドリックス=ギターの神様

 ●マイケル・ジョーダン=バスケの神様

 ●宮本茂(任天堂)=ゲームの神様

 ●スティーブ・ジョブズ=カリスマ創業者(ほぼ神格化)


 そして――――三百年も経過するとよほどの出来事(国家の滅亡、噴火、津波など)であれば核心部分だけは残りますが、物語すらほとんど残りません。


 記紀を編纂したのは七世紀です。それまで皇統や外交文書に限定されていた文字による記録が広がったのは五世紀~六世紀です。つまり、文字の記録が始まった五、六世紀の時点で物語として残っていた神話の起源は三~四世紀までしか遡れないことになります。


 もちろん、神話のベースになっている出来事はもっと古い時代のものもあるでしょうし、数百、場合によっては数千年前の出来事が原型として残っている可能性もありますが、少なくとも物語として成立している出来事は長くとも三百年以内に収まるということになるのです。


 つまり、記紀に収められている神話の大部分は、三~四世紀の出来事が神話のベースになっていると考えられます。


 たとえば神武天皇の東遷を例にとって説明すると、ベースになっているのは紀元前一世紀頃の出来事です。河内湖と難波、難波の碕の潮流の記述は紀元前でなければ成立しないと地政学的に証明されているからです。これは重要な地形や地名というのは残りやすいという古い伝承の下敷きがあったと思われます。


 しかし、詳細な行程や人名などに関しては文字による記録が無い時代に残っているとは考えにくい。つまり、詳細な物語部分は、三世紀の崇神・垂仁天皇期に行われた第二の日向~大和への移動伝承などが上書きされている可能性が非常に高いということです。


 まとめると、記紀神話の正体とは、主に三世紀に起こった出来事が、神話化され、文字による記録が始まる五世紀~六世紀に保存されたものである。


 そして三世紀といえば、まさに百襲姫が活躍し、魏志倭人伝の舞台となった空白の時代です。つまり、記紀神話を読み解くことこそが、抜けていたミッシングリンクを埋める鍵となるわけなんです。


 ですが、物事はそう簡単ではありません。神話化された物語は抽象化されていますし、古い時代の層を持つ神話は多重レイヤーのように複雑です。


 ではどうやって読み解くのか?


 その鍵は記紀に残る系譜にあります。


 この系譜の正体がわかれば古代史における謎やミステリー、多くのミッシングリンクが繋がります。どんどんハードルが上がっていますが気にしてはいけません。


 では、一緒に解いて行きましょうか。


 実はね、私このエッセイの最初の方で、もうほとんど答えを書いているんですよ。ここで答え合わせしますね。


 まず、この系譜には重大な疑問が生じます。


 そもそもの話ですが、数万年とも言われる縄文文化は母系社会です。男系継承の証である系譜という文化がまず不自然。考えられる可能性は、皇統の起源が男系の文化を持つ大陸由来であろうということ。


 そして皇統の起源は日向にあります。これは記紀も認めていることですし、魏志倭人伝に描かれる倭国は日向にあります。天孫降臨、天照大神を始めとした神々は日向で生まれています。


 紀元57年、日向国は後漢の光武帝から金印を受けています。


 私、最初に書きましたよね? 大陸で滅亡した国の王族だっただろうって。そうでなければいきなり金印を受けることの説明がつかないって。


 大陸の王族であれば身分を証明できるものを持っていたでしょうし、金印を受けたことの説明になります。大陸は男系社会ですし、系譜を残す文化も持っている。そして後漢や魏と交渉できる語学力や国際知識があることの説明、なによりもう一度大陸に名を知らしめるという強い動機を理解できますよね?


 では、その王族とはどこの国だったのか? ここが、古代史の最大の謎のひとつです。黒歴史時代の私はわりと良い線行ってました。おそらく越であろうって書きましたよね。


 でも半分当たりで半分外れです。皇統の起源は、紀元前223年に秦に滅ぼされた楚の王族である可能性が高いと今は考えています。


 楚は中国最古の王朝夏の火の神祝融の直系であることを誇りとし、天命による易姓革命を主張する周に対し、紀元前704年、楚の熊通(武王)は夏王朝の正統な後継者は自分たちであると王を称しました。


 楚は黄河文明の租、夏王朝の後継でありながら、さらに古い長江文明の後継者でもありました。紀元前223年に最後の王が倒されましたが、王族たちは長江から東シナ海へ出て東へ逃れたと言われています。


 楚の支配領域は広大で、各地での抵抗は激しく、最後の王が倒されてから統一までには数十年単位の時間がかかりました。脱出する時間は十分過ぎるほどあったと思われます。


 では楚の王族が日本へ逃れ、新たに国を興したと仮定して系図を確認してみましょう。


 初代である伊弉諾尊から百襲姫まで14代です。計算すると、一代あたり約28年となり、極めて自然な系図ということになります。ちなみに神代の年数が異常に長いのもこの仮説であれば無理なく説明できます。


 楚の王族が保持していた暦の感覚は、長江流域の豊かな季節の変化(雨季・乾季)や、稲の二期作のサイクルに基づいた、より生物学的なリズムであった可能性があります。半年一歳(二倍年暦): 「春の芽吹き(生)」と「秋の収穫(成)」をそれぞれ一年の節目とする考え方は、農耕と祭祀を一体とする文化において、極めて誠実な「時の刻み方」でした。


 楚だけでなく、周も半年一歳(二倍年暦)に近いものを使っていた可能性が高いと言われています。


 次回は、楚に関して深掘りします。面白いほど共通点が浮き彫りになりますよ。お楽しみに。

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― 新着の感想 ―
ゲノム解析で見る日本人のルーツとかも面白いですよ。大陸の人間が日向に渡って国を建てたということは、そのあたりの人間は大陸由来のゲノムを持っているはずで。もともとの縄文の日本人も、純日本人なのか、もとも…
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