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9話

「それでぇ〜タクちゃんは今回の浮気にどう言い訳してくれるのかなぁ〜?」


「いやっだから浮気とかじゃないって!」


現在俺達は真島家の一室、つまりは俺の部屋にいる。

俺は床に正座させられ俺のベッドには足組みした冬柳雫がドカっと座っている。

まるで女王様みたいだ。


「桜田さんが佐渡君を好きなのは分かったよ、でもタクちゃんが彼女と映画を見てた事実は何も変わらないよね?」


「そ…それは…」


やはり誤魔化せたりはしないか…そりゃそうだよね…


「桜田さん、かわいいよね、誰にも優しいし人をみた目とかで別けたりしないし、タクちゃんああいう子好きだよね?」


「桜田さんと最初は冬柳さんと佐渡を尾行…追っかけてたんだけど途中で見失ったんだよ…それで本来の目的の映画を見ようと思ったら桜田さんも見たいって言い出してなら一緒に見ようって話になったんだよ…だから浮気とかじゃないって!」


「だからそこでどうして一緒に映画って流れになるの?桜田さんはアニメとか興味無い筈だよね?タクちゃんが無理矢理誘ったんじゃないの?」


「そんな事しないよ!どうしたら信じでくれるんだよ!?そこまでいうならスマホのGPS機能でも使って僕を監視でもすればいいだろ!」


「そんなストーカーみたいな事はしないよ…私はただ貴方を信じたいだけ………そうだな…」



冬柳さんは口元に人さし指を当てて考える素振りを見せる。少しの間う〜ん?と何かを熟考した後、よし!と声を上げた。


「明日のショッピングにタクちゃんも着いて来てもらうね、そこで大々的にタクちゃんを私の彼氏だって皆に紹介するね!」


「え…?マジで…?」


「うん。」


佐渡に冬柳さんは自身が俺の事…つまりは真島拓真が好きだとカミングアウトしている。

この話は桜田さんも聞いている。

少なくともクラスカーストトップのこの2人が冬柳さんの想い人が僕だって知ってる訳だ。


あの2人は誠実そうだし、下手に吹聴したりはしないと思うけどそんな確証は何処にも無い。

少なくとも冬柳さんと佐渡が別れたって話は爆速で広まるだろうし、そうなればまた冬柳さんに告白したりナンパする奴が急増するのは目に見えている。

その場合…冬柳さんはどんな行動に出るだろうか?


どちらにせよ…遅かれ早かれ冬柳さんは俺の名前を出して彼が私の新しい彼氏だと紹介していたかも知れない。

彼氏がいる事を周りに認知させる事で告白やナンパ避けになるから…まぁ、僕じゃ役不足も良いところだろうけど。


どちらにして結局は僕が冬柳さんの彼氏だといつかはバレる。


既に彼女には黙っておくという考えは無いみたいだから。


「冬柳さんは最初に出した3つの条件を自分から無視していくよね?」


「なに?」


「僕達が付き合ってる事は周りに教えないって話だったのにそれも破ろうとしてるし、1週間の内に4回はお家デートするって話だったのに今週は2回だけだし…君にとっての約束ってそんなもんって事でしょ?」


「はぁ?違うでしょう?私だって約束は護りたいわ、でも仕方ないでしょ?友達連中との仲だって適当には出来ないし佐渡君との恋人関係を維持するためには彼との約束だっておざなりには出来ない…全ては貴方との仲を平和に継続する為に仕方なくだったのよ?それなのに私、何故責められてるの?おかしいじゃない!」


「僕の為?違うじゃん!全部冬柳さんに都合が良いからしてたんだろ!本当は僕の事なんてどーでもいいんだろ?」


「はぁ……」


冬柳さんが見た事もない冷たい目をして僕を睨みつける。

まるで凍る様に冷たい目だ。



「いいわ…正直に話してあげる…私は何も嘘なんて着いてない…全部全部!貴方の為…貴方を独占するため!

私はね……貴方を独占したいの…。」


「………」


「誰にも貴方を獲られたくないのよ、お家デートを4回に定めたのはそれが最低ラインだから…自分で言うのもあれだけど私は人気者だし周りに時間を割かないといけない…私が人気者になれば貴方を正式に彼氏だと周りに言っても認めさせる事が出来るから…でも貴方との時間は絶対に欲しい、だから最低ラインとしての4回を設けたの。守れなかったのは確かに私の落ち度ね…そこは謝るわ」


「…うん…」


「2人の仲を周りに秘密にしたのもね…佐渡君を彼氏にしたのも全部貴方のためなのよ?貴方が男として情けないからここまでやらないといけなかったのよ?なのに私を責めるの?お門違いでしょ?謝って欲しいくらいよ!!」


「………そっか…ごめんね…僕みたいなのが彼氏で……」


「え…そ…そんな事はないわ…そんな事ないから!ね?!」


「ねえ…僕達…別れた方が良いんじゃないかな?」












  





「え………?」



寒気がした。

なんと言えば良いのだろう。

彼女の表情は形容しがたい。

無だった。

そこには何も映し出してない。

無。


怒りとか悲しみとか…そんな当たり前の感情すら読み取れない。

 


本当の意味で何を考えているのか分からなかった。


だから怖くなって僕は自分の発言を撤回していた。

 

「じょ…冗談だよ…、」


「     …………なんだ…冗談なのね…驚いたわ。」




 未だに僕は何故彼女に告白されたのかもわからない。

彼女は僕の何処を好きになったのだろうか?

そもそも本当に彼女は僕の事が好きなのだろうか?


何もわからない。


ただ彼女の濁った目だけが怖かった。

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底知れぬ闇の一端を垣間見た。 この闇、深い!
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