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7話



「決めたわ…佐渡君」




「え……?」




「私と……別れてくれない?」










「…………、え…?」




「は……?」




「…へ?」






誰もが思考停止した。


この場にいる3人…その誰もが冬柳雫の言った言葉を理解出来ずにいた。


別れてくれない?


それはつまり恋人関係の解消を意味する。

それが意味する事。

つまり



(佐渡をふった……?)


何故この場で冬柳さんが佐渡をふる必要がある?


わからない。



「ちょ…ちょっとまってくれ!何故だ!何故いきなりそんな事を言うんだ!俺なにか君を不快にさせる様な事をしたか!納得出来ない!理由…理由を話してくれよ!」



「貴方は何も悪くないわ…ただ好きな人が出来たの…もう貴方と恋愛ごっこに興じる必要は無くなった…それだけの事よ?」


「恋愛ごっこ?」



「ちょ…ちょっと雫!アンタそれはないんじゃない!?アンタそれは酷いよ!」


「酷い?私の好きな人とこんな所でデートしておいて酷い?」


「は…?デート…?好きな人…?」


「もともと私が佐渡君とお付き合いしていたのは男子の方々からの告白を避ける為、それは彼にも言ってありましたし、その関係の解消を申し出ただけの事ですよ、私にも心から好きだと思える殿方が現れました、ならその方とお付き合いするのが真っ当ではありませんか?」


「は…?な…何言って……」


「その好きな人ってのが真島だって事なのか?」


「はい、そうですよ」


「そ……そうなのか…」



ちょ…ちょっと待てよ…なんだコレ…?

何故彼女はいきなりこんな暴露大会を一人でおっ始めやがったんだ…?

お陰様でさっきまでの楽しい空気が大無しだ…



「なら俺はもう必要ないな……さよなら」


「ちょ…佐渡君!?」



いきなりふられた佐渡は意気消沈、いつもの爽やかな笑顔は鳴りを潜めどんよりとしたオーラを纏い立ち去って行く。

あれは不味い。

下手したら自殺でもしそうな勢いだ。



「桜田さん!行って!」


「え…?で、でも!」


「佐渡が好きなんだろ!あのままじゃアイツヤバイ!良いから行って!!」


「あ……ぁ…、分かった!!その…真島も無理しないで!」


「うん」



桜田さんは佐渡を追って走っていった。

後は彼女に任せるしか無いが彼女の底抜けの明るさなら多分大丈夫だろう。


問題は…。



「やっと邪魔者は居なくなったね…タクちゃん」



この厄介メンヘラ美少女の冬柳さんか…。



「どうしていきなりあんなカミングアウトしたのさ?」


「だって仕方ないじゃない?タクちゃんが浮気しようとするんだもん、私はタクちゃんの為に付き合ってるの内緒にしてるのに桜田さんなんかとコソコソ映画なんて見て!」


「何度も言ってるけど桜田さんとは偶然会っただけで浮気とかお門違いって何度も言ってるだろ!」


「桜田さんとこんな広い所で偶然?あり得ないよ!嘘をつくならもっとマシな嘘つきなよ?」



全く信じる気がないみたいだ。

どうしたもんか…。

桜田さんには悪いけどもう正直に話さないと聞く耳を持ってくれそうにない、それに桜田さんか佐渡を好きで僕に興味が無いとしっかりと伝えた方が良さそうだ。



「…桜田さんは冬柳さん達を尾行してたんだよ」


「え…?私達を?」


「そ!冬柳さんと佐渡をね!」


「?…どうして?私に何か嫌がらせする為?」


「どうしてそうなるんだよ、違うからな!桜田さんは佐渡の事が好きなんだよ、で冬柳さんと佐渡が土曜日にここでデートするからそれを見張ってたんじゃないか?」


「………、つまり私から佐渡君を獲ろうとしてたって事?」


「獲ろうって…まぁできたらそうしたいと思ってるだろうけど桜田さんは佐渡の気持ちを尊重しようと思ってたっぽいからそんな無理矢理な事はしないと思うよ?」


「ふ~ん…なんかやけに桜田さんの事庇うね?もしかして惚れたの?」


「惚れたって……惚れたってより見直したって感じかな…1軍ギャルで美人だからもっとお高く止まってると思ってたけど結構話しやすかったし……」



「なにそれ!やっぱり浮気だ!私がいるのに!」


「だから違うって!桜田さんは佐渡が好きなんだよ!仮に俺が桜田さんを意識してた所で俺なんかが入り込む余地はないよ」


「成る程…佐渡君と桜田さんをくっつければ君が浮気する可能性はゼロになるのね」



なんか変な方向に話がまとまった。

しかし冬柳さんのこの思い込みの激しさはなんなんだろうか?

取り敢えず俺と桜田さんが一緒にいた事からは話を逸らす事は出来た。

映画を一緒に見てたのは紛れも無い事実だしそこを突かれたらやばかったかも知れない。



「なんか疲れた…今からタクちゃんの家行って良い?」


「いいけど何もないよ…?」


「別に何もいらないよ〜つまらない映画見たせいで眠いの〜私寝たいの〜タクちゃん抱き枕になってよ〜」


「はあ?抱き枕?」


「ほら行くよ〜」


ふらふらと歩き去っていく冬柳さん。

なんてマイペースな人なんだ。


ふと頭の片隅で桜田さんの方は上手くいったのだろうか?と気にはなったが今は冬柳さんだ、彼女の事に集中しないと。


ショッピングモールから出た僕は彼女と駐輪場に向かう。自転車の後ろに乗ってもらい2人乗りの状態で我が家に向けて自転車を走らせる。


青春物の恋愛アニメとかでたまにみるシチュエーションだ。

何気に彼女出来たらやってみたかった事が地味に叶った瞬間だったが浮かれられる余裕は僕には無かった。。









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