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6話

僕は今、映画館で映画を見ている。

元来、インドア派の僕は映画なんてレンタルが開始されたらネットで見れば良いと考えるタイプの人間だけど時として映画館に足を運んでまで見たいと思える映画だってある。  


シリーズ物や、続編とかがそうだ。

今回僕はとあるシリーズ異能力者バトル物のアニメ映画を見たいと思って来ていた。

新規層獲得の為に既存の設定を用いながら全く新しい世界観でリバイバルされたソレは作品としては古参からある程度のアンチコメントを貰いながらも多くのユーザーから評価され、新規層も大幅に取り込む事に成功していた。

 

そんな前情報はあったが中身のネタバレは極力避け、見るのを楽しみにしていたが正直心の何処かでそこまで面白くは無いとおもっていた。


既存の設定を使っていても原作とはかけ離れた世界観、元々の原作ファンだった僕が素直に受け入れられるかはまた別問題だと思っていたんだけど…普通に面白かった。  


そしてそんな風に感じてくれたのはどうやら僕だけではなかったらしい。



「いや、おもしろっ!このアニメ、超面白くね?」


「え?桜田さん的に面白かったの?」


「いや、逆に面白くない要素ある?ユウキとメイの互いに助け合いながら進展してく恋愛模様とかキュンキュンくるし、キャラの動きとか読めなくて色々先が気になり過ぎる!ちょ〜おもろかったし!」


「おぉう、マジか」


「いや〜アンタセンスあるね!こんなオモロイアニメ知ってるなんて!他にもあるの、こーゆーの?教えてよ!」



こ…これがオタクに優しいギャルってやつか?


ギャルはオタクを無自覚に見下しているって先入観を間近で粉砕する程の攻撃力だぞ?これは!?  


映画を見終わり俺達は券売機や飲食スペース等がある広いスペースに移動して来ていた。

そこでも興奮冷めやらぬ勢いの桜田さんはキラキラした目で映画の感想を話している。

余程面白かったのだろう。

ここまで反応が良いと作品を紹介した俺の気持ちも高ぶって来る。



「このアニメ、実は派生作品でさ?原作があるんだよ、そっちも人き…」


「マジで!?見る見る!!今からアンタの家に言って良い?見たい見たい!!」


「おおう…マジかよ…凄いなギャルの行動力」



そんな感じで桜田さんの前のめりな攻撃力に若干押されていた時に後ろから声をかけられた。



「あら?桜田さんとたしか真島君じゃないですか?」


「え……ふ、冬柳……さん…!?」


「し…雫…」


「どうしてお二人がこんな所に?」


振り向くとそこには冬柳雫と佐渡がいた。



「え……と…」


「……し…雫にはカンケーないっしょ?」


「関係ありますよ、友達が普段関わりの無い男子と一緒にいるんですよ?心配にならない方が変です」


「そこは安心してよ、たまたま一緒になっただけだし、コイツ、アンタが思ってる様な奴じゃないよ?」


「…………………そうですか…」




いや、その間はなんだよ…

てかなんてタイミングて出てくんだよ…

てかなんか怖い…怒ってないかこの女…?



「え…と、奇遇だな真島、お前とこんな所で会うなんて凄い偶然だ!」


「え…?ああ、おう!佐渡も映画見に来てたんだな」


「ああ!サッカーを題材にした映画がやっててな!今話題のギーツ監督の話題作!」


「そうなんだ…し…知らないかな?」


「あ…そっか、まあ知らないなら仕方ねーな!」


「わっ、私は知ってるよ!佐渡君!」


「お?そうなのか!桜田!」


「う…うん!他のシリーズも全部見てるよ!」


「マジで!?どの作品が好き?」


「えっとね…私は2作目の…」



桜田と佐渡がサッカー映画について話だす。

佐渡に好意のある桜田の事だ。

事前に映画の知識もバッチリ仕入れていたんだろう。

比較的スムーズに会話か展開されている。

桜田も花が咲いたかの様な満面の笑顔で映画の話をしている。


大変良い事だ。



「少し宜しいですか?真島くん?」


「へ……?」



いや、だから顔が怖い。

能面のような無表情に笑顔を強引に張り付けた様な顔をしている。

美人の怒った顔はそれだけ解像度があがってより恐怖を後押ししている。


つまり怖い。



「え……と、冬柳…さん?」


「どうして貴方がこんな所で桜田さんなんかと一緒にいるのかしら?これは浮気って奴かな?」


「はあ!?」


「私がいるのに他の女と一緒…これを浮気と言わずしてなんなのかしら?」


「い…いやいや…さっき桜田さんも言ってただろ!偶然会って成り行きで映画を一緒に見る事になったんだよ!」


「1軍女子の桜田さんとカースト下位の真島君が?」


「仮にも彼氏をカースト下位って言うのは彼女的にどーなのさ?」


「彼女である私だからこそ許される事ってあると思わない?」


「知ってる?親しき仲にも礼儀ありって言葉」


「それで?真島君は何故こんな所にいるの?」


「無視かよ…」


「で…?」



目が全然笑ってない。

怖い…。



「……元々お家デートの日だったのにドタキャンされた可哀想な真島君はドタキャンされた悲しみを紛らわす為に暇つぶしも兼ねて映画でも観るかと近場のショッピングモールに来たらそこに桜田さんがいて、たまたま会ったからついでに一緒に見ようって流れになったんだよ!」


「ドタキャンじゃないし!!仕方ないでしょ!佐渡君とも付き合わないと恋人の証明にならないでしょ!それよりも偶然桜田さんとあって一緒に映画?あり得ないでしょ!そんなの!」


「仕方ないじゃん!あり得ちゃったんだから!」


「うぅうぅぅ゙ぅぅぅ゙ぅぅ゙ぅ゙〜あり得ないあり得ないあり得ないぃぃ〜!!」



その場で地団駄を踏んで喚き出す冬柳さん。

流石に彼女の異変に気付いたのか桜田さんと佐渡もこっちに戻って来た。


「ど…どうしたの?冬柳さん」



佐渡が心配そうに冬柳さんに話しかける

しかしそれに気付いてないのか聞こえてないのか冬柳さんは黙ってうつむきなにやらブツブツと独り言を言っていた。

しかしそれもつかの間、ガバっと顔を起こした冬柳さんは佐渡をじっと見つめる。


「え……と…冬柳さん?」


「決めたわ…佐渡君」


「え……?」


「私と……別れてくれない?」





「…………、え…?」


「は……?」


「…へ?」



誰もが思考停止した。

この場にいる3人…その誰もが冬柳雫の言った言葉を理解出来ずにいた。







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