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3話

時刻は18時過ぎ、学校から帰宅して3時間くらい経った後、彼女、冬柳雫は約束通り俺の家に来た。


今は俺のベットを我が物顔で占有している。

僕が普段使いしている枕を抱き枕代わりにして今日の事を……愚痴を話していた。




「ねぇねぇ聞いてよタクちゃん」


「どうしたの?冬柳さん」


「美代ったら酷いのよ?私が男たらしのクソ女だって裏で陰口言ってたらしいの!酷くない?」


「へえ?そりゃ酷いね」


「だよねだよね?酷いよね!」



何も間違っていない、正しく事実である。

俺と裏で付き合いながら表ではイケメンの佐渡と付き合ってるのだから十分クソ女してるよ。



「表ではズッ友とか親友とか言ってて裏で悪口いってるとか美代って性格終わってるよね〜」


「だね、終わってる」


「だよね!タクちゃんはやっぱりわかってる〜」


お前もな。

でも女子ってのはそーいう生き物なんじゃないのか?偏見バリバリで申し訳ないとは思うけど…。



「そーいや、佐渡君とデート行ったんでしょ、どうだったの?楽しかった?」


「う〜?どうだったと思う〜?」


「え…?」



いや、こっちが聞いてるんだが?



「わかるよ、わかるよぉ〜?私が佐渡君に盗られるかもって危機感感じてくれてるんだよね?でも安心して〜私タク君ガチ恋だから~」


「そ…そうなんだ…」



実の所を言うと…彼女が何故俺を本命としているのか、全く知らないし分からない。

彼女は凄い美人だしイケメン男子なんて付き合いたいと思えば選び放題だ。


しかし彼女は何故か俺を本命彼氏として側に置いてくれている。



「しょ~じき佐渡君悪い人じゃ無いんだけど一緒にいてもつまんないんだよねー、サッカーの話ばっかりだし〜ドコドコの選手のあのプレーが凄いとかあの何が凄いとかそんな話ばっかり!後、私の胸とか足をコソコソ見てくんの!ちょっとキモい〜」


「へ…へえ〜…。」


「まぁでも顔はイケてるし、彼氏としてはまぁまぁかなぁ〜」


「顔が良いだけで付き合ってるの?」


「顔が良い以上の理由なんて無いよ〜」


「ならなんで僕と隠れてまで付き合ってるの?僕…顔は平均以下だと思うけど?」


「う〜ん?タク君は癒し枠だから~」


そう言って彼女は僕の腕に抱きついてくる。

お陰で腕に2つの丸い柔らかい感触が伝わってくる。


実を言うと告白して来たのは彼女の方からだったりする。

机の中に見慣れない手紙が入っていてその指示に従い待ち合わせの場所に行くと彼女、冬柳さんがいた。


そして彼女から告白して来たのだ。



「真島君…真島拓真君…私の彼氏になってくれないかな?」



と…。



最初は嘘告白だと思った、いや、そう確信していた。


クラスで…いや、もしかしたら校内でも上位の美人である彼女が俺みたいな底辺に告白して来る理由が無いから。


彼女と仲の良いギャルの女友達がゲームを持ちかけ、そのゲームに負けた彼女に罰ゲームとして僕に嘘告白をする様に命令した、そんな所だろうとおもっていた。



当時はまだ彼女の事を見た目通りの清楚で真面目な少女と思っていたし、例え嘘でも付き合えれば僕のカスみたいな空っぽの人生にも彩りを加えられるだろうと思ってOKした。

  


「え…?わっ、分かった、つ、付き合う!」



「本当?嬉しい!じゃこれからは私達恋人同士だね!えへへ!」



(か、可愛い!)



「あ、でも付き合うなら守って欲しい事があるの!」


「守って欲しい事?」


「うん!一つはね、私達の事を誰にも言わないで欲しいの!」



そして例の3つの条件を提示された。


①恋人関係である事を秘匿する事

②お家デートは必ず1週間に4回する

③俺を本命とし、ダミーとなる偽彼氏を作る事を容認する事。



彼女の本心は全く読めないしわからないままだ。

本当は僕が偽彼氏で佐渡が本命かも知れない。

てか、そう考えるのが自然だ。


僕はありとあらゆる面で佐渡に及んでいない。

運動神経、学力、コミュ力、何をとっても大きな溝がある。


普通なら恋人に選択されるような存在にはなり得ないのだ。

しかし現実問題として僕は彼女の恋人としてのポジションを持っている。


「とおっ!」


「うんわっ!?」



いきなり冬柳さんは僕の膝の上に飛び乗る勢いで座って来た。

彼女の背中が至近距離にある、サラサラの黒髪からシャンプーのいい香りがする様な気までしてくる。

足に生温くて柔らかい感触が伝わって来る。

桃みたいな…。

何処もかしこも女の子の柔らかさに満ちた彼女の温もりは非モテ高校男子の俺には刺激が強すぎる。


「ほら?タク君、ギュぅーってして?」


「え?う…うん」


彼女のお腹に手を回して両手でギュっと抱きしめる。

少し腕をあげれば大きな2つの柔らかい双丘に届いてしまうので全力で気を付ける。

もし触れてしまったら大変だから。



彼女はほぼ毎回このスキンシップを求めて来る。

僕としては有り難い事だが何を考えてるのか分からないとこう言ったスキンシップも嬉しさよりも不気味さが勝つ。

僕のそんな不安を感じ取ったのか彼女はポツポツと語り出した。



「私ねぇ、これまで沢山の彼氏に告られたし、付き合って来たの、でもみ〜んなカス男だった、私の事、顔や胸しか価値無いって思ってる奴ばっかりだったの、口を開けばキスさせろエッチさせろってそればっかり…断ったらキレて暴れてもう訳わかんないの」


「それは…つらいね」


「そう、辛いの、でも彼氏いないと寂しいし辛い、だから彼氏作って…でもまた裏切られる…それの繰り返しだった…、」


「寂しいから彼氏作ってるの?」


「それもあるけど1番は女友達への見栄かな?」


「見栄?」


「うん、私、モテるでしょ?モテるクセに彼氏作らなかったら私達への当て付けかってキレてくる女子が結構いるの、あとは軽い気持ちで告ってくる男共への牽制かな?」


「成る程…なら佐渡は男避けなのか…」


「実はね、佐渡君にはこの話はしてあるんだよ」


「え!?マジで……?」


「うん…あっ、タク君のことは黙ってるから心配しないで良いよ?」


「え…そうなんだ…」


「うん、男避けにね、私と偽の恋愛して欲しいって話したの…そしたら彼ね…OKしてくれたの、優しいでしょ?」



「……そうだね、」



その佐渡を利用してサッカーの話つまらないとかディスってんのか…流石だよ…冬柳さん。

でもそれって佐渡は冬柳さんの事をガチで狙ってるってことなのかな…。


「タク君はね、私の理想の彼氏なの」


「え…?なんで?俺イケメンじゃないし、頭も良くないし運動も苦手だよ?」


自分でここまで自分落とししてるのも中々悲しくなるがそれはそれとしてこれは率直な疑問だ。


「もうね、イケメンとか成績とかどーでも良いんだよ…私はね私の事を大事にしてくれるならそんなのどーでも良いの…タク君は今までの彼氏達と違うの…私知ってるよ…?」


「そ……そうなんだ…」



知ってるよ…そう言う彼女は何を知ってると言うのか俺にはてんでわからない。

 ただその目は怪しく光ってる、そんな気がした。




 



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