1話
大変有り難い話だが、なんと僕には彼女がいる。
彼女いない歴イコール年齢で成績も中の下な冴えない僕に彼女が出来るなんて奇跡みたいな話だし、彼女と巡り合わせてくれた運命様に感謝の言葉を声高らかに贈りたいくらいだ。
しかも僕には勿体ないくらいの美人過ぎて恐縮してしまうくらいだ。
黒髪で落ち着いた物腰の大人びた子で清楚なんて二次元でしか聞かない言葉がしっくり来る印象を人に与える。
オマケに巨乳でスタイルも良い。
包容力のある見た目で社会の荒波にもみくちゃにされた社会人だったら一発でママぁって抱き着きたくなる見た目をしている。
僕みたいなぱっとしない凡人にはマジで勿体ない彼女だ。
本当に出会えて良かった………
………と、付き合うまでは思っていた。
いや、別に別れたいとかは思ってないし今も好きなままだ。
ただ…これからも付き合い続けて行っても良いのか解らなくなった。
え?贅沢な話だなって?
そう思うのは勝手だけどまずは僕の話を最後まで聞いて欲しい。
彼女は僕と付き合う上でいくつかの条件を出して来た。
その一つが付き合っている事を学校では誰にも話さない事。
何故かと問いかけると僕の為だと彼女は言った。
彼女は学校内では人気者だ。
女子の友達も多いし男子からの告白も何度もされている
。
彼女を狙う男子の妬みや嫉妬に巻き込まれて僕が傷つくのを考慮してくれたからと話してくれた。
なるほど、最もな理由だ。
しかし僕は本当の理由を知っている。
クラスメイトや友達に僕みたいなレベルの低い奴を恋人に選んだ事を知られたくないからだと僕は思ってる。
まぁ何の根拠もないのだが彼女の性格を思えば十分あり得るのだ。
他にも出された条件がある。
「君が私の本命よ?だから信じて欲しいの」
そんな前置きを置いて彼女はこう言った。
「表向きの彼氏を作ろうと思うの、勿論本命は君だから浮気とかじゃないよ?だから安心して」
いやいや、何を安心しろと?
僕なんかよりハイスペックな彼氏が欲しくなっただけにしか思えない。
それでも僕が本命なら……僕を優先してくれるならと……今にして思えばなかなか狂った考え方だったなと反省する。
ふられるのを恐れて理由のわからない条件を飲んだ自分を叱責したい気分だ。
そして最後の条件。
「お家デートは必ず1週間に4回する、これは絶対よ?」
お家デート。
すなわち互いに何方かの家で1週間の内4回は絶対に一緒にいるというものだ。
土日は必ず彼女と一緒にいれる事がほぼ確約されたも同然でしかも学校帰りまで一緒にいられる、これは僕にとっても願ったりなナイス条件だった。
まさか彼女の方からこんな僕にとっても都合の良い条件を出してくるなんて…男なら自分の部屋で彼女と一緒にいれるなんてとても嬉しいだろう?
ただ個人的にとても意外なのはこんな条件を彼女の方から出した事だろうな。
ただこれもすぐに理由が分かった。
大人びた清楚なイメージとは裏腹に彼女の性根は所謂メスガキでメンタルもクソ雑魚である。
友達に何か言われると直ぐに病むし、親に成績で怒られて病む。いろんな男子からの告白を断ったら病む。
そもそも清楚キャラをやってるのが精神的に疲れて病む。
ちょっとした事で直ぐに病んで拗らせてしまう。
僕の役目はそんな彼女のメンタルクリニックだったというわけだ。
ここで大事なのは下手に助言とか僕の考えを口にしない事。
聞くに徹するってのがコツだ。
助言とかそう言うのは彼女が求めて来た時にだけ言う。
助言を言う場合も細心の注意が必要だ。
求めている以上の事を言うと突然キレて暴れ出すからマジで注意が必要だ。
甘えて来てくれるのは必要とされているようで嬉しいが時折……いや、最近は明確に面倒くさいと思う様になった。
そんな感じで僕は彼女とこれからも上手くやっていけるのかとても不安である。
別れたいとは思わない。
僕みたいなレベルの低い男子が見た目だけならUR級の女子と付き合えてる奇跡を手放したく無いってのが僕の本音だから。