表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/27

まだ始まってもいない


 

 カイトス領に帰ってからも、その“何か”が私を悩ませた。

 

 

 フォルキーナ王女のことがスッキリしたと思ったら、今度はアルフェラッツ様のことで胃が重い。

 

 

 考えるって何をよ。

 時間ってどのくらいよ。

 

 ああ、もう分かんない…。

 

 

「エルラ。シェリラのお土産の紅茶を飲もう。変わった風味だぞ」

 

「お菓子も作ったのよ。旅先のお菓子屋さんで働いて、作り方を教えてもらったの。あ、ルキオも呼んできて」

 

 

 お父様は、お母様が帰ってきてからご機嫌。なんだかんだ言ってこのふたり、仲いいのよね。

 

 

「ねえ、お父様、お母様」

 

「ん? 」

 

「どうして、お父様とお母様はご結婚されたの? 」

 

「えっ…。な、なんだ急に」

 

「お父様は、お母様が旅にばっかり出ていて、不満はないの? 」

 

 

 突然の質問に、ふたりともちょっとポカンとした。

 

 

「そうだな、まあその、シェリラがいないのは寂しいが、旅先から持ってきてくれる紅茶やお菓子は楽しみだし、それが領地の名産になったりもする。何より、そうやって旅ばかりしてるのが、シェリラなんだし、なぁ」

 


「まあ、あなた…。私も、あなたや子どもたちが待っていてくれると思うから、安心して旅ができるのよ。帰る場所があるっていうのは、本当に有難いことだわ」

 

 

 あー、はいはい。

 

 

「そうなのね…。お父様とお母様は、お互いに分かり合って、信頼しあってるってわけね…」

 

 

 はぁー…、と大きなため息が出た。それを見て、お母様が続けた。

 

 

「信頼し合っているというか、色々あってお互いにやっと、こういう心境になれたって感じかしら」

 

 

「色々って? 」

 

 

「それはまあ…、色々よ。話せば長くなるけど。夫婦や家族なんて、どこもそれなりに問題や悩みを抱えているものよ」

 

 

「そうだな。つい、自分たちばかり、自分だけが不幸なように感じてしまうが、その人それぞれに、何かあるものだ」

 

 

「それを、一緒に乗り超えていける人たちもいれば、残念ながら道が分かれてしまう人もいるわね。そうと割り切りながら一緒に居続ける人たちもいるし」

 

 

「問題や不満なんて、探せばいくらでも見つかるもんだ。同じ出来事でも、人によって捉え方が違うようにね」


 

「そうね。同じように、幸せだって、探せばいくらでも見つかるものなのよね」

 

 

「うむ。私だって言ってみれば、シェリラが旅なんて行かずに、もっと領地にいて、ここの仕事をしてくれたらいいのに、って思うこともあるさ」

 

 

「あら、そうなの?! 」

 

 

「えっ、いや、まあ、そりゃ、そうだろう。私とルキオが頑張っている時に、お前はどこかの空の下でのんびりしてるわけだからな」

 

 

「のんびりって何? 旅なんて実際、そんな優雅なものじゃないんですからね。その中で私は、カイトス領のためになるようなものを探し歩いているんですから」

 

 

 これはちょっと、雲行きが怪しくなってきた…。

 

 

「まあまあ…、どちらもそれなりの苦労があるということ、なのよね…? 」

 

 

「ええ、まあ、そういうこと! 時にはこうして本音をぶつけ合ったりしてね。ただね、エルラ…」

 

 

 お母様は立ち上がり、私の隣に座った。

 

 

「相手を想いやることは確かに素晴らしいけど、あまりに相手の気持ちばかりを優先すると、自分の気持ちが見えなくなってしまうこともあるわ。

 自分の気持ちを無視したら、その時点で自分の人生を放棄したことになる。相手や周りにも、それぞれ想いはあるけれど、いつでも人生の中心は自分なのよ」

 

 

 私の頭には、アルフェラッツさまの顔が浮かんだ。

 

 

「それに、この先どんな問題や悩みがあるかなんて、始まってみなくちゃわからないものよ。あなたたちなんて、まだ始まってもいないんじゃない? 」

 

 

 私ははっとしてお母様の顔を見た。お母さまはにこにこして私を見ていた。

 

 

「私、ちょっと行ってくる! 」

 

 私は館を飛び出して厩舎へ行き、馬に飛び乗った。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ