すれ違い
私はアルフェラッツ様に、別室に連れていかれた。
「どうぞ。座って」
言われるままにソファに腰かけた。
「さて、エルラ。君には驚かせられっぱなしだよ。夜会の日は急に帰ってしまうし、危険な場面に剣を持って現れるし…」
「ごめんなさい…。でも、アルフェラッツ様だって…」
「僕が、なにか? 」
「フォルキーナ王女のことです…」
「そのことは、さっき話したように、秘密裏に動いていたからね。話すわけにはいかなかったんだ」
「そうじゃなくて…、王女とは幼馴染だったって、それでおふたりは、その…」
「ああ、そうだったのか。誰かが君に話したんだね」
アルフェラッツ様は、私の隣に腰かけた。
「王女とは長年、会っていなかった。王女がわが国に来たのは、本当に国同士の単なる交流で、王女は使者としてやってきたんだよ。
でも、クピアス王子の計画を知ることになり、王女にも協力してもらったんだ。計画にかまけて、君に手紙も書けなくてすまなかった」
お手紙がなかったのは、そういうわけだったんだ。
「でも、おふたりがご結婚されれば、国同士の利益になりますよね」
「まあ、それはそうだけど。でも王女にはちゃんと国に想い人がいるんだよ」
「そうなんですか…」
それを聞いて、胸のつかえがとれるように感じた。でも、私のお転婆ぶりが、今回のことでバレてしまったなぁ…。
「まだ、何かある? 」
「あの、アルフェラッツ様は、私のような者が…、その、いいのでしょうか? お側にいても」
「私のような、とは、どういうこと? 」
「女なのに剣を振り回して、おまけに田舎育ちだし」
「女剣士など、いくらでもいるし。田舎育ちでどこか悪いのか? 」
「その…、ふさわしくないのではと…」
すると、アルフェラッツ様の表情が曇った。
「それなら、僕のほうこそどうなんだ? 僕は、君に側にいてもらうことで、君を不幸にするんじゃないか? 」
「えっ? 」
「ルクバートに聞いたよ。アスメディク家にいる時に、ホームシックになったって。薬菜園で会った時に痩せてたように感じたのは、そういうわけだったんだね」
「ホームシック! 」
そっかぁ、私、ホームシックだったんだ。
それで泣きたくなったり食欲がなかったりしたんだ。どおりで、カイトスに帰ってから、元気になったわけだ。
「堅苦しい王宮で暮らすのは、君にとって幸せなのか? 」
「そんな、そんなこと…考えたことなかった…」
と、思わず言ってしまった。だって本当にそんなこと、考えたことなかったんだもん。
アルフェラッツ様はため息をついた。
「僕たちふたりとも、ちょっと考える時間が必要かもしれないね」
その言葉に、ふたりのあいだに何か、すれ違ってしまっているものがあると感じた。でもそれが何なのかはわからない。




