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事件の裏側


 

 その場にいた馬に乗り合わせ、森の道を抜けて王宮へと向かった。

 

 王宮に着くと、先ほどの事件で連れてこられた王子や賊などのために騒がしかった。

 

 

「王太子様、クピアス王子と賊は、司法宮へ移送いたしました」

 

「わかった。王子の扱いには、くれぐれも気をつけるように申し伝えよ」

 

「はい」

 

 

 私と母、そしてカイトスから来た者たちは、王宮の一室へ通された。

 

 部屋にいた3,4人の人のなかに、ルクバート様がいた。

 

 

「エルラ!? どうしてここに? それに、その恰好は…? 」

 

「ルクバート様こそ、どうしてここに? 」

 

「まあ、とにかく座ろう」

 

 

 アルフェラッツ様がその場にいる人たちに促した。

 

 

「先ほど計画通りに、クピアス王子と賊を取り押さえることができた。みなのお陰だ」

 

 

 カイトスの者たちには、さっぱり分からない。アルフェラッツ様が説明してくれた。

 

 

「実は、あの遠国のクピアス王子は、フォルキーナ王女と結婚して、王女の国の支配権を得ようとしていたんだ。だが、フォルキーナ王女にまったくその気はない。だから賊を雇い、王女を襲わせたところを、クピアス王子が助け、恩を売ろうとしていた」

 

 

「クピアス王子と賊は、グルだったんですね」

 

 

「そう。それに王女が滞在しているこの国で、王女が危険な目にあったとなれば、わが国も責任を問われることになる。王子がお伴に紛れていることは、分かっていたんだ」

 

 

「なるほど。しかし、私が得た情報とは少し違うようです」

 

 お母さまが言った。

 

 

「それはもしかして、王女を誘拐しようという計画のことではありませんか? 」

 

 

「そうです。あの賊たちは、国をまたにかけた悪行を行っていました。王族を脅したり、国同士の同盟に亀裂を入れたり。今回も、ただ王女を襲うのではなく、誘拐しようとしたと聞いています」

 

 アルフェラッツ様は、頷いた。

 

 

「はじめ、あの賊たちはクピアス王子に、王女を襲うために雇われました。しかしそれを利用して、賊は王女を誘拐しようと、計画を勝手に変更したのです」

 

 

「では誘拐のことは、クピアス王子は知らなかったと? 」

 

 

「おそらく、そうでしょう。そして、今回捉えた賊は下っ端で、親玉がどこかにいるはずです。その親玉をつきとめるために、アスケラが王女に変装したのです」

 

 

「じゃあ、アスケラ様は王女として誘拐されるはずだったのですか…? 」

 

「まあ、そのつもりではありましたが…」

 

 

 カイトスの者たちがやってきて、邪魔してしまったってわけなのね。ああ、ごめんなさい。

 

 

「ところで、エルラの母上は、亡くなったとばかり思っていました」

 

 

「いえ、母は、紅茶好きが高じて、各地のおいしいお茶を求める旅に出ているんです。時々、ふらっと帰ってきては、珍しいお茶や苗木を持ってきてくれたりします」

 

 

「しかも、女剣士であられるのか? 」

 

 

「はい。母の父、私の祖父が剣士で、私も小さいころから剣術や護身術などを教わりました」

 

 

「なーるほど。それで初めのころ、やけにダンスのキレが良かったんだな」

 

 ルクバート様が納得というように頷いた。

 

 

「それは、言わないでください…」

 

 もう、恥ずかしいなぁ。

 

 

「エルラの母上…、シェリラ殿は、どこで賊の情報を入手されたのですか? 」

 

 

「あちこち旅をしていると、危険な目にあうこともあり、その方面にも鼻が利くようになります。クピアス王子の国は、王族に関して良からぬ噂があります。それに関しては王太子殿下もご存知かと」

 

 

「ああ、聞いている。偽金を作って流通させたり、商人ギルドと手を組んで利益を吸い上げているなど」

 

 

「はい。それに加えまして、賊と契約を結び、国同士の貿易や派閥争いなどに関与しているといった噂もあります」

 

 

「それも知っている」

 

 

「恐れ入ります。そういった良からぬ情報に詳しい者たちもおりますので、恥ずかしながら、旅するうちに顔見知りになることもございました。今回は、賊が王女を狙っているというものでした」

 

 

「そうだったのか。それで私たちを心配して駆けつけてきてくれたのだな」

 

 

「はい。しかし王太子殿下のお話をお聞きしましたら、この事件はもっと奥が深いように思えました」

 

 

「そうなのだ。私たちも、それを調べているところだ」

 

 

「あのー、ところでどうしてルクバート様がいらっしゃるのですか? 」

 

 さっきから気になっていた私は、思いきって聞いてみた。

 

 

「俺は放浪癖のおかげで、あちこちに知り合いがいる。その人脈を、時々こうやって国のために使ってることもあるんだよ。ただヒマしてるわけじゃないんだ」

 

「そうなんですね…」

 

 思ってたことを見透かされたみたいでギクリとした。

 

 

「しかし、シェリラ殿には、亡くなったなどとご無礼をお許しください。しかも、かなり剣の腕がたつようにお見受けしました」

 

 

「いえ、旅にばかり出て子どもを放っておく不届き者にすぎません。王太子殿下こそ、あれほどの腕前をお持ちで、感服いたしました」

 

 

 ほんと、アルフェラッツ様の剣の腕は見事だった。素質もあるのだろうけど、努力されたんだろうな。

 

 

「それにしても、エルラ。まさか君が剣術を嗜んでいるとはね」

 

「は、はい…」

 

 あーあ、淑女らしくないって、あきれられたかな。

 

 

 そこへアスケラ様が入ってきた。

 

 

「アスケラ、ご苦労だった」

 

「いえ…」

 

 

 アスケラ様を見たら、先ほどの女装…いや変装された姿を思い出してしまった。

 

 

「この事件に関しては、一旦決着がついた。ここにいる皆をねぎらわせてくれ」

 

 

 部屋には次々と、食べ物や飲み物が運ばれてきた。休みたい人は別間で休んだり、汗を流したりもできる。

 

 

「エルラ。私たちはカイトスへ帰りましょう。お父様やルキオが心配しているわ」

 

「はい。お母さま」

 

「失礼、シェリラ殿。少し、エルラ嬢をお貸しいただけるか? 」

 

 アルフェラッツ様が言うと、お母様はふっと表情をやわらげた。

 

 

「もちろんでございます。王太子殿下」


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