ささやかなお別れ会
お后教育もひと段落したことだし、私は一度、カイトス領へ帰ることにした。
ケペティ女子とギエナ様が、プチお別れ会を兼ねたお茶会を開いてくれた。
「まだまだ、夜会やお茶会などの実践を交えながらの、さらなる上達の道がありますのよ。ここで終わられるのはもったいないですわ。必ず戻ってきてくださいね」
優雅にお茶を飲みながら、ケペティ女史は、まだまだやる気満々な気持ちを伝えてきた。
「なんだか残念…いえ、張り合いがありませんわね。私、エルラ様がいらっしゃらないあいだに、ますますお后にふさわしくなってしまいますわ」
ギエナ様も一応は寂しがってくれているのかな?
私はギエナ様に小声で尋ねた。
「あの、ギエナ様は本当に、王太子様とご結婚なさりたいのですか?」
「もちろんですわ。なぜ? 」
「どうしてギエナ様は、お后になりたいのですか? 」
「だってお后といえば、貴族の娘なら誰でも憧れるものではありませんか?
それに、私がお后になれば、ルクバートお兄様が喜んでくれますもの。私はお兄様のお役に立つために、アスメディク家にいるのですから」
「そっかあ…。あのさ、ギエナ様は、ルクバート様のことをどう思ってらっしゃるの? 」
「えっ? どう? どうって、もちろん私は、小さいころからお兄様のことが大好きで…」
自分が言った言葉を聞いたことで、ギエナ様はハッとされた。
そして、両手で口元を抑えるようにして考え込んでいるうちに、みるみるギエナ様の頬が赤くなってきた。
その時、ドアがコツコツとノックされ、噂のルクバート様が入ってきた。
「やあやあ。エルラ嬢がカイトスへお帰りになると聞いてね」
「まあ、私、ルクバート様や旦那様たちには、あらためてご挨拶に伺うつもりでおりましたのに」
「たまたま通りかかったからね。失礼しても? ケペティ女史」
「もちろんですわ。ルクバート様」
ルクバート様は空いている席に座り、控えていた侍女がお茶を淹れた。
「ギエナ? ぼーっとしているようだけど、どうした? 」
ルクバート様がギエナ様に声をかけた。
「い、いえ、なんでもありませんわ」
ギエナ様はルクバート様から顔をそむけるようにして、紅茶を飲んだ。
「ところでエルラ嬢は、いつごろ戻ってくる予定なんだ? ケペティ女史も楽しみにしていることだし」
「ええ! 本当に」
ケペティ女史は力強く相槌を打った。なんか恐いな…。
「えっと、それはまだ、いつになるかははっきりと決めてはいないので…」
「そうか。あんまり遅くなると、俺のほうからカイトス領へ行くかもな。臨時にでも雇ってもらいに…?」
また、ルークになって?! ルクバート様ならやりかねない…。
「…気が休まらないから、やめてください」
ハハッと笑いながら、ルクバート様は続けた。
「俺も、エルラ嬢は一度、帰ったほうがいいと思ってたんだ。特に今はね…。まあ、ゆっくり休んできなよ」
「はあ…? 」
何だろう? なにか含みのあるような言い方。
「どうしてですか? 何かあるんでしょうか」
「いや、なんでもない。ただ、そういう時期なんじゃないか、ってことだよ」




