王宮の薬草園にて①
うーん、最近どうも変なんだよね。私。
食事は食べる気がしないし、なんとなくやる気が出ない…。
淑女教育を受けてても、今ひとつ身がはいらない。
かといって、休んでると、なんだか悲しくなっちゃう。
元気を出そうと紅茶を飲むと、かえって涙があふれてきちゃう。
どこか体が悪いってわけでもないし、疲れてるのかな…。
「エルラ様、最近どうなさったの? 」
さすがのギエナ様も聞いてきた。
「お疲れなんじゃありませんの? やはりエルラ様にはお后教育は、無理ではないのでしょうか?
でもご心配なさらないで。私が立派なお后候補になってみせますわ。アスメディク家の誇りにかけて」
「はあ…」
なんだか答える気にもならない。それにギエナ様が頑張ってるのってさぁ…。
「なんだか張り合いがございませんわ! エルラ様お得意の植物学だって上の空じゃありませんか」
「そうそう、植物といえば」
相変わらず暇なのか、一緒に部屋にいて本を読んでいたルクバート様が話にはいってきた。
「エルラ嬢、王宮の薬菜園への許可が下りたよ」
「薬菜園…? 」
「ピクニックに行ったとき、話しただろ? 」
ああ、そうだっけ。
「王宮御用達のハーブや野菜が盛沢山だよ」
ハーブや野菜が盛沢山…。
「それって、いつですか? 」
「今度の休日だよ。俺が一緒に行くから」
今度の休日! ぱぁ~っと胸が軽くなった。薬菜園に行ける!
「楽しみです! ありがとうございます、ルクバート様! 」
思わず足取りも軽くなっちゃう。薬菜園かあ、楽しみだな。そうだ、アルフェラッツ様にもお手紙でお知らせしよう。
「ギエナは行けないだろう? その日はボティス家に帰る日だから」
「そうなんですけど、でも、お兄様がいらっしゃるなら…」
「無理しなくていいよ。また今度行けばいい」
「そ、そうですわね」
ちょっとガッカリのギエナちゃん。可愛いなあ。
ルクバート様は気づいてるのか、いないのか…。
しかしその日から、薬菜園へ行く楽しさから食欲も出てきて、気持ちにも張り合いが出て、夜もよく眠れるようになった。
なんて単純なワタシ…。ああ、休日が待ち遠しい。
*********
いよいよ休日が来て、私とルクバート様は馬車に乗って王宮へと向かった。
「ギエナ様はご一緒じゃなくて、よろしかったのですか? 」
「ギエナはああいうところ、あまり好きじゃないだろう」
ルクバート様はにっこりと答えた。そうなのかな?
「あ、王宮が見えてきた。久しぶりだな~」
あのお茶会以来だ。アルフェラツ様はいらっしゃるのかな。
しかし馬車は王宮を通り過ぎていく。
「あのー、どこへ行くんでしょうか? 」
「薬菜園は、王宮の敷地外にあるんだよ。結構な広さだからね」
ああ、そうなんだ。
王宮を通り過ぎしばらく行き、見えてきた格子の柵沿いに進んでいく。柵はずいぶん長く続いている。
「あのー、もしかして、この柵は…」
「そう。これが薬菜園の柵だよ」
こんなに広いの!
ようやく入り口の門をくぐり抜け、馬車置き場で馬車を降りた。
そこには、私たちのほかにも馬車が置いてあった。
「エルラ」
えっ、この声は。




