お妃教育?
「これは間違いないよ。姉さま」
「うむ、私もそう思う」
ルキオとお父様がふたり揃って頷いている。
何を、というと、アルフェラッツ様のこと。
「私もそう思います」
いつのまにかナシーラまで加わってる。
「わざわざこんな田舎まで、姉さまに会いに来るなんてさ。それも王太子殿下自ら! 」
「まさか私の娘が、后になろうとは…。生きてて良かった…」
「長年お仕えしたお嬢様がお后になられるなんて、誉れです」
みんな口々に喜びを称えてるけどさ…
「ま、まあ、アルフェラッツ様がどういうつもりかは分からないけど。たとえば本当に、私が后になれると思う?
こんな田舎で育って、お后教育だって受けてないのに」
「あ…」
「そうだったな」
「ですね」
お后になるには、それなりの知識や教養、マナーや礼儀が必要。国を統べるトップのひとりだし、国の代表でもある。
「父上、姉さまのお后教育をどなたかに頼みますか? 」
「うーむ、しかし費用がなぁ…」
「いいわよ。私がお后にならなければいいんだから。私は身分も教養も、自分に合った人と結婚するわ…」
「良ければ、アスメディク家を紹介しましょうか? 」
いつのまにかルクバート様、いや、ルークがいた。
「失礼しました。通りかかったらお話が聞こえてしまったので。元奉公人として、お話を通すことはできますよ。領主さま、いかがでしょう」
「あの三大公爵家のアスメディク家が、ご承知くださるだろうか? それに、タダというわけにはいかん」
「アスメディク家にはご令嬢はいらっしゃらないので、親戚のご令嬢をおひとりお預かりして、お后教育をされています。
そのご令嬢には同じ年頃の友人がいないので、エルラ様がご一緒にお后教育を受けられれば、お喜びになると思いますよ」
「うむ…。まあ、それはそれとして、費用のほうは…」
「公爵家ともあろう家柄が、ケチなことは申しませんよ」
「いや、対価は払わねばならない。金銭でなければ別のもので…」
「父上、うちから出せるものといったら…」
そう。紅茶くらいのものだ。
*********
「これは、どういうことだ、本当なのか…?」
アルフェラッツ様はエルラからの手紙を握りしめていた。
エルラ嬢がアスメディク家で淑女教育を受けるなんて…。
ルクバートが仕組んだのか?
「どうされました? アルフェラッツ様」
側近のアスケラがちょうど部屋に入ってきて、アルフェラッツの様子に声をかけた。
「いや、その…」
アスケラはアルフェラッツの手にある手紙を見て取った。
「紅茶侍女が、どうかされましたか? 」
「彼女はもう侍女ではない。エルラ嬢と呼べ。彼女が…、いや、なんでもない…」
「左様ですか」
アスケラは黙々と書類を見ながら整理している。
「アスケラ…」
「はい? 」
「最近、アスメディク家で、変わったことはないか? 」
「変わったこととは? 」
「たとえば、ほら、客人が来るとか…」
「エルラ・カイトス嬢のお后教育のことですか? 」
「知ってたのか!? しかも、お后教育ってなんだ? 淑女教育ではないのか? 」
「エルラ嬢は、淑女教育と書かれたのですね。まあどちらにしても、エルラ嬢はもう17歳。辺境領とはいえ、将来を見据え、貴族として当然のことではないでしょうか」
「それにしても、どうしてアスメディク家なんだ? 」
「以前アスメディク家に仕えていた者が、カイトス家の知り合いで、口利きをしたと聞いております」
絶対、ルクバートの仕業だ。エルラをどうするつもりなんだ。
「まあ、よろしかったではないですか」
「えっ、なぜ? 」
「三大公爵家のアスメディク家でお后…淑女教育を受けているとなれば、王宮や公爵家の催しにも出席し、お披露目するでしょう」
「そうか…! 」
会える機会が増えるということか。




