第2話:奇妙な校則と山奥SEOの掟!ビッグキーワード厳禁?
翌朝、レンは始業前に校内をひとまわりしてみることにした。
ところが、廊下のいたるところに貼ってある張り紙が想像以上に“ニッチ”を強調しているのに驚く。
「検索ボリューム0~100のキーワード大募集!」
「ビッグキーワードを使うな! ライバルだらけの戦場は捨てろ!」
「ニッチを制する者が世界を制す!—」
レン「うわぁ……ちょっと極端すぎるな。これが山奥SEO学園の考え方ってことか」
すると、ちょうど通りかかった同級生の吉野が声をかけてきた。
メガネをかけ、小柄でおとなしい雰囲気の男子だが、ここではそれなりに馴染んでいるようだ。
吉野「日向くんだよね? 昨日転校してきたと聞いたよ。慣れた?」
レン「いやぁ、ビッグキーワード禁止なんて初めて聞いたよ。普通はどんなジャンルでも検索数が多いところを狙うだろ?」
吉野「そこをあえて狙わないのが‘山奥SEO’。ビッグワードは大手サイトや企業メディアがこぞって攻めてくるから、個人じゃ分が悪いんだよ。ここでは ‘競合の少ないところでトップを取る’ のが基本方針なんだ」
レン「なるほど……確かに競合相手がいなければ、上位表示もそう難しくないかもしれない」
吉野「そうそう。月間検索ボリュームが数十とか、下手すると0ってキーワードでも、必要としてる人は確実にいるわけでね。そこを狙えば少ないアクセス数でも濃いユーザーが集まってくる。結果としてCVR(コンバージョン率)が高まることもあるし、一次情報ならE-E-A-T対策にもなるってわけ」
その語り口には、深山SEO学園の教えをしっかり吸収している雰囲気があった。
レンは少し感心しつつ、同時に気持ちが高まるのを感じる。
レン「そうか……ビッグワードで一発大きく狙うより、地味でも確実に求める人に届くってことか。面白そうだな」
吉野「うん! ここじゃ ‘大衆にウケるより、一部の人にめちゃくちゃ刺さるほうが価値がある’ って考え方が徹底されてるんだ。
もし何か困ったらいつでも声かけてよ」
ひとしきり話を聞いて納得しかけた矢先、廊下の向こうから篝ショウの怒声が聞こえてくる。
篝ショウ「オイ、オメーら! ビッグワード系の記事を書こうとしてんじゃねぇだろうな!—」
どうやら別の生徒が「メジャーな話題」の記事を作ろうとしていたらしい。
篝ショウの目の色が変わっている。
レンは「ここじゃ本気でビッグキーワードを嫌っているんだな……」と思いつつも、その強烈なポリシーに、なぜかゾクゾクする感覚を覚えていた。