第1話:深山SEO学園へようこそ!山奥SEOはじめの一歩
朝もやの立ちこめる山道を、背中にボストンバッグを背負ったひとりの少年が歩いていた。
名前は日向レン。
彼が向かう先は地図の端に小さく記された「深山SEO学園」だという。
バスも通わない山奥、携帯の電波もおぼつかないという噂の僻地に、なぜそんな学園があるのか。
レンは小さく息を吐きながら、その古びた門扉をくぐった。
レン「ここが深山SEO学園……想像以上に山の中だな。生徒なんているのか?」
辺りを見回しても、誰の姿もない。
かろうじて校庭には野良猫が1匹うろうろしているだけだ。
校舎は古びた木造部分とコンクリート部分が混在しており、どこか独特の雰囲気を醸し出している。
と、そのとき——
「オイ、新入りか?」
背後から凄みのある声。
振り返ると、学ランの背中に「SEO番長」と大きく刺繍を入れた男が立っていた。
金髪をリーゼントに固めたその男は、まさに“ヤンキー”という形容がぴったりだ。
彼の名は篝ショウ。
この学園の自称“番長”だという。
篝ショウ「悪いがここじゃビッグキーワードなんざ禁止だ。オレたちは ‘山奥SEO’ を極める学園。生半可な気持ちで入ってもらっちゃ困るぜ」
レン「山奥SEO? 何だそれ、検索ボリュームがすごく少ないキーワードを狙うって話か?」
篝ショウ「お、ちょっとは知ってるようだな。ま、実際は奥が深ぇんだよ。ここは検索ボリューム0~100のニッチを極める場所。ビッグワードなんか目じゃねぇ、ライバルがいないところを攻めるのがオレたちの流儀さ」
いきなり濃い話をされて戸惑うレン。
とはいえ、転校の手続きは済んでいる。
引き返すわけにもいかない。
すると、玄関口から顔を出した初老の教師が手を振っている。
教師「やあ、キミが日向レンくんだね。ボクはこの学園で先生をしている堀内だ。深山SEO学園の指導担当をしている。まずは校内を案内しよう。ここでは“山奥SEO”を基本として教えているから、最初は戸惑うかもしれないけど、じきに慣れるよ」
レンはまだ理解が追いつかないが、そのまま先生に連れられて校舎に入る。
廊下には「ビッグキーワード禁止」「検索ボリューム0~100大歓迎」と書かれた張り紙がいたるところに貼ってある。
どうやらここは、世間の常識とはひと味もふた味も違う場所らしい。
レン「検索ボリュームが少ないワードをあえて狙うなんて、正気の沙汰とは思えないけど……。何か理由があるのか?」
堀内先生「もちろんさ。ここでは ‘ライバル不在のニッチ領域こそ宝の山’ という考えなんだ。いずれ授業や実践でわかるはずだよ」
こうしてレンの転校初日は幕を開ける。
ビッグワードが当たり前の世の中で、敢えて“山奥SEO”を貫くこの学園。
その真意は何なのか? そして番長を名乗る篝ショウとは何者なのか?
レンの胸には期待と戸惑いが入り混じった、不思議な感覚が芽生えていた。