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前世は武神、今世は無職と呼ばれた俺は冒険者人生を謳歌してみた  作者: ネイン


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第11話 前世で武神と呼ばれた男、樽を運ぶ

 『寵愛の儀』を終えた俺達三人は今晩泊まる宿へと向かった。明日にはすぐに村に帰る予定だ。


 ハッカもソリスも稀有な職業を与えられたので傭兵団や貴族の人達から誘われていたが丁重にお断りしたらしい。二人は他にやりたいことでもあるのだろうか。


 そして、宿屋で泊まる部屋を確保したあと、俺は外に出ようとするとハッカに話しかけられる。ちなみにソリスは別室に泊まっている。


「どこ行くんだよ、もう夕方じゃん」


「町に来る機会はないから、この目に焼き付けておこうと思ったんだ。あと、ヒルダとへロルフみたいなやつに絡まれて決闘する機会があるかもしれないから絡まれてくる」


「相変わらずどうかしてるな」


 ハッカは目を細めていた。


「今回は俺に対する認識を改めさせよう」


「そんなことできるのかよ」


「例えばだ、街を歩いていたら香ばしいローストチキンが口元に飛んできら嬉しいはずだ」


「そんなことあるわけないが、喜んで食べると思う」


「だろ、ローストチキンが口に飛んでくるのと町を歩いてたら知らない貴族に決闘を挑まれるのが同じぐらい嬉しいということだ。この気持ち分かるだろ」


「何言ってるか意味分からねえよ! やっぱオマエどうかしてるよ、なんで自信満々に語ってんだ」


 ハッカを納得させられなかったことを悔しく思いながら俺は街に出た。


 そして外に出て歩いていると、尾行されてることに気付いた。


 視界には尾行者はいないものの、俺は『自然エネルギー』を感知することで直径一〇キロ以内ならば人の姿形を認識できる。『自然エネルギー』は大気中に無数にあり、この時代の人はその存在にすら気付かず感知する術もない。そしてその『自然エネルギー』は人の表皮を流れるように流動しているので、感知することさえできれば人の姿形を認識できる。


 尾行してるのはへロルフだ。


 『体内エネルギー』で聴力を強化しながらヘロルフの独り言を聞くことにした。


「姉上が許しても俺は許さん……適当な罪で因縁をつけてやる」


 ドロップキックされたが相当、嫌だったらしい。


 彼のことは別に気する必要ないと思うが一応、意識しとこう。


「あらら」


 歩いていると思わず口走ってしまった。


 俺の前方にある街路には荷車があり樽を積んであったのだが、積み方が悪く、街路に樽が散らばってしまい、荷車を引いていた若者が中年男性に怒られていた。


「なにやってんだ! また一から積み直しじゃねえか!」


「す、すんません! 積み方が悪くて落ちました……」


「分かってんならやるな!」


 中年男性と若者の関係は上司と部下に違いない。


 そんなことよりこの樽重そうだな!


 俺は横たわった樽の底で右手を滑らせて、片手で樽を持つ。なぜか樽を片手で持つと通行人が顔を青ざめさせていた。


 これは酒樽だ。一樽四〇キロぐらいあると思う。これが辺りに一〇個散らばってる。


 いいことを思いついた! これを全部運べば人助けができるうえにトレーニングもできるぞ。


 持っている樽を宙に投げて回転させ、樽を縦の状態して右手に乗せた。


「よいしょ! よいしょ! よいしょ! よいしょおおおお! いやぁ! 良い重さだ!」


 それから、俺は散らばった樽を左手で救い上げて、右手に乗っている樽の上にじゃんじゃん乗せていった。


 すると、中年男性と若者が目を見開いていた。


「す、すげぇな兄ちゃん……あ、拾ってくれてありがとうな!」


「な、なんか凄いスキル持ちの職業なんすかね……」


「だからって片手で樽を一〇個も持てるかよ……全部で四〇〇キロあるぞ」


 通行人も足を止めて俺の方を見ていた。


「これ、どこまで運ぶんですか? 持っていきますよ」


「お、おう助かる……この街路をまっすぐ進んで突き当りの道を右に曲がって五〇〇メートル直進すると酒屋があるんだが、そこに運んでくれると助かる」


 中年男性の言葉に従い俺は二人を連れ、酒屋へと向かった。


 しばらく、歩いていると尾行者がぽつりと喋った。


「な、なんだあの馬鹿力は……」


 へロルフはいつまで付いてきてるんだ。


 俺は人々に奇異の目で見られながら酒屋に到着すると、


 ――そのまま、酒屋をスルーして街路を歩いた。


「ちょ、ちょ、ちょ! 待て待て!」


 背後から中年男性が慌てる声が聞こえた。


「なんでしょう」


 俺は肩越しに振り返る。

 

「なんでしょうかじゃねえよ! どこ行くんだ」


「せっかくなんでこのまま町を一周してきます。ほな」


 俺は樽を持ったまま駆け出した。四〇〇キロのオモリを持って走る機会を逃すわけにはいかない!


 それに左手にも樽を持たせないとバランスが悪い。たまに持ち替えないと!


「ほなって!? は、早い! なんだあいつ!?」


「へ、変な奴っすね……」


 遙か背後から慌てる中年男性と呆れる若者の声が聞こえた。


「いやあ、いいトレーニング日和だ」


 俺が呟いたあと、息を切らしながら追いかけているへロルフが口を開いた。


「はぁ……はぁ……! へ、変な奴だ……」


 さっき会った若者と同じことを言っていた。


 それから、せっかくなので街をもう一〇週し、無事、酒屋に樽を運んだ。

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