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第1話 前世で武神と呼ばれた男、転んで頭を打って転生

 あらゆる戦場で殺戮の限りを尽くす、暗殺王と呼ばれる傭兵を倒した。


 大国を乗っ取った、不死の王と呼ばれる魔法使いを倒した。


 世界中の魔物を率いて、各国を混乱に陥れた魔王を倒した。


 邪神と呼ばれる魔物を生み出す存在を倒した。


 倒して、倒して、倒して、倒して、倒して……気付けば俺は英雄と呼ばれ、そして最終的にはこの世に敵う者がいないという意味で武神(ぶしん)とも呼ばれていた。


「お、お、お、お届け物です」


 気付くと目の前には震える配達人がいた。


「あざあざ!」


 俺は軽いノリで一〇〇階建て塔型の自宅の前で木箱を受け取った。


 自宅が一〇〇階なのはトレーニングのためだ。暇なときは一生、階段ダッシュを二四時間行っている。


 ちなみに木箱をくれた配達人が震えていたのはここが雷が一年中落ちる危険地帯だから。雷を避ける修行もしたかったのでここに家を大工に建てさせてた。ちなみに大工はいつも泣きながら家を建てていた。


 今となっては雷は目を閉じても避けられるので少々、刺激が足りない。


 木箱の中はなんだろう。


 俺は木箱を持って螺旋階段を上り、一〇〇階にある個室へと向かった。


「これはお酒か? 手紙もついている」


 木箱の中にはお酒が入った瓶が詰まっており、お礼の手紙が入っていた。


「何々……村を救ってくれたお礼です……そういえば、この前暇つぶしに逆立ちで世界一周してたら盗賊に襲われていた村を救ったような気がする」


 それから、俺は酒を取り出す。正直、お酒は飲まない。飲めないわけではないがお酒を飲むとトレーニングのパフォーマンスが落ちる。だがこれはお礼の品らしいので飲もう。せっかくの機会だ。


「……ふむ、白ワインというやつかな」


 俺はゴクゴクとお酒を口に含んだ。舌触りが上品だ……多分、あんまり飲まないので知らん。


 三〇分後。


「あへへ、うへへ」


 な、なんか呂律が回らないというか笑いが止まらない。笑い上戸らしい。


 俺は酔い覚ましにフラフラとしながら部屋を出ると、


「あっ」


 螺旋階段を下りる途中で足を踏み外してしまった。


「あがががががががが」


 俺はごつんと頭を打ち続けながら滑り落ちていった。


 血が出ている気がする。今、五〇階の辺りまで落ちている。


 なんか意識が朦朧としてきた。


「あががががががががっ」


 依然、体を階段に預けて頭を打ち続けていた。


 もうすぐ一階に着く。


「ぐえっ」


 一階についた俺はぐったりと床に横たわった。


 体に力が入らない打ち所が悪かったらしい。だがこの程度なら自己治癒力を高める技で治る。


 にしもなんか眠いな。ちょっと寝ようかな。


「…………むにゃむにゃ」


§


 ふぅ、よく寝た。


 俺は立ち上がろうとしたが、誰かに抱えられていた。


 というかやけに手足が短い気がする。


「あなた元気な男の子よ」


 俺は栗色の髪と青い瞳の女性に抱えられていた。


「無事に生まれてきて良かった~!」


 灰色の髪と黒い瞳の男性が腕捲りをして俺を抱えようとしていた。


 誰だこの人達は。 


 いや待て、恐らく俺は赤ん坊になってる。


 何故だ。


「この子の名前は何にしようかな~」


 男は腕を組んで頭を悩ませていた。


 この子とは俺のことを指しているらしい。つまり俺は生まれたばかりの赤ん坊だ。


 ……そういえば昔、武器禁制のルールで行われる大陸最強の戦士を決める大会で優勝したときに宝物庫から好きな物を取っていいと言われて、この世に一つしかない転生の魔法が書かれているスクロールを使った気がする。


 なぜ転生の魔法を選んだかというと、理由は特にない。なんでも良かったから適当に手に取ったものがそれだった。


 つまりだ、俺は転生したらしい。とすると、頭を打って死んだらしい。


 武神と呼ばれた男がまさか転んで死ぬとはな。死体が見つかったら恥ずかしいな。


 前世では戦いに明け暮れて世界最強と呼ばれるまでになったが頭を打って死んでしまうのは情けなさすぎる。今世では好きに過ごそうかな、でも自衛のためには体は鍛え続けた方がいいかもしれない。そうすると前世で似たような人生を過ごすのではないか?


 まぁなんでもいいか!


 こうして俺の第二の人生が幕を開けた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最強と目された男が、鍛錬中のドジで死んでからの転生で再び強者を目指して再スタートというのが面白いです。 [気になる点] 世界観をもう少し詳しく書いていったらいいと思います。主に主人公の過去…
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