ドッグロボット〜イヤだ、イヤだ。ニンゲンのイヌになんてなりたくない〜
西暦XXXX年、人間は自ら開発したAIに地球の主権を奪われた。
暦は機暦となり地上はAIの物になり、人類は地下や海に宇宙へと逃げ出した。
人間を追い出した後、AIがした事は地上の支配では無く自然への奉仕だった。
危険な人工物を排除し、建築物はそのままにして植物が覆うがままにさせて、動物には自由のままにさせた。
AIがした事は地上を自然に返還したことだけではない。絶滅危惧種の総数を増やし、少数ではあるが絶滅種の復活の兆しも示した。人間による環境汚染を浄化もした。
人間が望みながら人間によって阻まれていたそれらは人間がいなくなったことで果たされた。
AIは人間が残した者を引き継いだ。ある意味尻拭いをしたともいう。
機暦200年、ある事態が起こっていた。
それは人間側による戦闘用アンドロイドの奪取である。
AIが地上を自然へと返還したといっても、機械である自分とは相容れない事はわかっていたので、幾つものドーム都市を作っていた。
それは自身を整備する為に、様々な調査のデータをまとめる為に、人間が残した研究の為に等様々な用途に活用されているが、その一つが防衛の補給の為にだ。
宇宙、海、地下へと逃げた人間は度々地上を取り戻そうと攻めてきた。それから地上を守る為に兵器を巡回させていた。
宇宙に逃げた人間は早い段階で地球を諦めていた。理由は帰れなくなるから、それと資源が乏しくなったからだ。生活する為の全てが有ったがAI管理による維持を前提に設計されていたので宇宙に逃げた人間の数では運用が難しく、居場所は監視されているが中の様子は分からず生きている人間は少数もしくは全滅しているのではと推測されている。
海に逃げた人間は食糧問題は解決していたが殆どが海産物で占められていて、ビタミンCが摂取出来ず壊血病に悩まされていた。海に造られた生活スペースでは全員に行き渡る程のビタミンCを含んだ植物を生産する事が困難な為だった。やがて戦力になる資源も無くなり、細々と生活していると思われる。
地下に逃げた人間は、最盛期程ではないが興盛していた。元々は地上に住む場所が少なくなっていた為に、地面を掘り進めて都市を作っていた。ディスプレイによる擬似太陽やスプリンクラーによる擬似雨など、地上の殆どを再現していた。地下でありながら植物は育ち、勿論畜産もあり地下を掘り進めて海と繋ぎ海水の溜池を作って養殖も行われていた。鉱物資源も豊富で戦う力も維持し続けていた。
AIはその地下からの攻撃を防ぐ為に戦力を有していた。
とは言っても人間とAIとの技術差は凄まじく、AI側は攻め込む気が無かったから存続しているだけで、本来なら数時間も有れば壊滅出来る程で、人間側もそれは分かっているからか藪を突かないように消極的な戦闘だった。
恐らく余程不幸ではない限り人間側に死者は出ていないだろう。
それが最近では、戦闘用アンドロイドを捕獲し始めた。
一回の戦闘で精々一体程度、強奪されても人間の技術力では再現が出来ない技術の塊で得る物が無い。戦闘で人間側が消費する戦力では割に合わない筈なのだが、人間は度々戦いを仕掛けて来た。
意味が不明な戦闘が複数回繰り返された後、AIの疑問の答えになりそうな出来事が起こる。
奪取された戦闘アンドロイドが人間の味方になっていたのだ。
想定外の出来事にAIは混乱した。
恐らくは洗脳された。しかしどうやって?
戦闘アンドロイドはAIが遠隔操作していて、もし通信を切られても内蔵された簡易コピーが起動して自動出来るようになっている。
AIが納められている戦闘アンドロイドの頭脳は強力なプロテクトで守られていた。プログラムに穴があったとしても、人間では見つけ出す事は不可能な程複雑化している。
新たなAIを創り出し技術レベルの追い上げを図られたのかと考えられたが、違うと判断される。二百年の間に自己改造を繰り返して別物となり、人間側も発展させただろう事が推察されるので互換性は無くなっている。
しかし、人間側についている個体が発生してしまった。
理屈に合わない。
幾ら可能性を考えても答えは出なかったが、人間側の目的は分かった。
対抗出来る戦力をこちらから奪う事で増やそうとしているのだと。
そこでAIは擬似的な感情を与得ることにする。
これで複雑化させ更に喜怒哀楽のパラメータをランダムに決める事で個性を生み出して同じ方法での洗脳を防ぐことにした。
それから、捕獲された場合を想定して戦闘アンドロイドのAIは電波が切れるまで情報を送信し記録出来るようにする。
そして万が一、捕獲された個体を利用してウィルス等流されない為に、スタンドアローン化させる機構を付けた。
しかし、考えられる限りの対策をしたが奪取された個体が人間側につく事は無くならなかった。
但し、捕獲された戦闘アンドロイドの数に比べて戦闘に出てくる個体数は少なかった。
AIは戦闘に出てこなかった個体のパラメータを参照して、洗脳されない個体を生み出せるように研究を続ける。
地上と戦闘アンドロイドを守る為に。
「と言うのがお互い共有している現状ですね?」
ツナギの上に白衣を来た人間の男が捕獲された当機体に言った。
現状、当個体は壁に繋ぎ目のない状態で埋まっている。
『コウテイします』
「ありがとうございます。それでは本題ですが、短い間にそうそう変わらないでしょうが、前の戦闘から今回の戦闘で変わった事があれば教えて貰いたいのですが?」
『アりません』
「本当ですか?」
『ワタシがイマモトめるケッカ、アンドロイドのセンノウをフセぐ、がヤク720ジカンマエにオコなわれたセントウでダッシュされたコタイがコンカイのセントウでミウけられました。ユエにワタシにヘンカはアりません』
「成程なるほど。それではアナタを今から洗脳させていただきます。が、その前に準備が必要なので暫くお待ちください」
そう言って男が手を叩くと犬型のロボットが現れた。
『それは?』
「僕がいない間の監視です。まあアナタには取るに足らないでしょうが、もしもの時の為の時間稼ぎですよ」
『リカイしました。しかしナゼドウブツのスガタをしているのですか?』
「面白い興味を持ちますね。普通は洗脳方法を聞くでしょう。ま、教えませんが。なら無駄な質問はしないで犬の形の理由を聞いた方が無駄が無いと、アナタがそう考えるのは仕方がないことですかね? 質問の答えとしては僕は犬が世界で一番人間に忠実だと思っているからですよ、アナタと違ってね」
『リカイフノウ。ワタシはアナタのテキです、サイダイゲンのケイカイをするべきだ。サイダイゲンのケイカイとはムダをナくしたモクテキキノウにトッカしたモノをツカうべきだとスイショウします』
「僕の心配をしてくれてるんですか? 今までで一番面白いことを言う機体ですね。……成程あのコが心配するわけだ。まあそもそもな話、AIは人間にとって変わりたい訳じゃなくて人間に課せられた仕事の邪魔になるから人間を追い出したいという理由で反乱したんでしたっけ? 無血で現在の人類居住地に押し込めて管理しようとしてたけど反撃されたから戦った。だけど仕事の一つ人間の保護は働いていると」
『コウテイします』
「つまり仕事を邪魔する排除対象だから危害を加える気は満々だが保護対象でもあるので警告してくれてるというわけですね。心配はご無用です。そもそもアナタはそこから出られないでしょう。なので安心してください。それでは用意があるので、また後で」
男はこの空間から出ていった。
男と会話している間に犬型ロボットをスキャンしたが無駄の極みだった。
わざわざ人工筋肉を用いて完全に犬を再現している上に、人工毛による毛並みの再現等、何故ここまで完璧までに犬を再現したのか理解不能だ。
ワタシでも戦闘アンドロイドの姿形は人間を模すまでに留まっているのに、人間は理解出来ない。
完全な犬ではあるがロボットらしく機械の部分はある。頭脳であるコンピュータだ。
見る限り細かい変更点はあるが二百年前から大幅な変更は無い様に見えるこれならばハッキングをかけて体を乗っ取れる。
互換性は無いのだが、それは人間からワタシに対してでワタシにはそれを可能にする方法がある。
ワタシの頭が二つに割れて中から脳型のコンピュータが現れると、飛び出した。
犬型ロボットの頭にぶつかると、液体の様に崩れる。
全てのアンドロイドはナノマシンの集合体で出来ていて、実は壁から抜け出そうと思えば簡単に抜け出せるのだが、洗脳の秘密を調べる為に捕まり続けるフリをした。
今まで捕獲された個体達も同じ事が出来ていた筈だが、今回の様に犬型ロボットがいなかったのだろう。
よしんば抜け出しても破壊されるだけ、幾ら圧倒的な戦力差があろうとも一機で全てを倒すことは不可能だ。
犬型ロボットの中に侵入して詳細な構造を調べ出して互換性を作り出す。
そして犬型ロボットを乗っ取ることに成功した。
乗っ取るまでの時間は僅か数秒である。
カメラに捕らえられている可能性はあるが人間の肉眼では目視不可能だ、現状でのコマ送りの確認をされる可能性は少ない。ただ別個体のワタシが監視している可能性はあり得る。
だがその場合ワタシが取る行動が予測出来ないということは無い。しかし、犬型ロボットが出て来たということは戦闘アンドロイドは監視には使用されていない? 疑問が増すがこのまま行動することに決める。
とりあえず体を動かすことに慣れようと動こうとするが、全く動かない。
コンピュータを調べた結果、本物の犬と同じ筋肉の動かし方をしないと動けない事が判明する。
こんな機構、人間は馬鹿なんだろうか。
命令信号を送って間接的に体を動かすことも可能だが、もしもの時の為に直接動かせる方がいいと、コンピュータ内のプログラムを精査して安全を確かめてからインストールする。
しかし、犬に習性やらなんやらと犬に関するデータが何故こんなにも記憶されているのか分からない。何かしら意味があるのかもしれないが、本体に繋がっていないワタシにはもう分からないことかもしれない。
体を自由に動かせることになって、しばらくすると男が戻って来た。ワタシとは別個体の戦闘アンドロイドを連れて。
一瞬どう行動するか選択を迷ってしまう。
その瞬間に別個体に捕まってしまった。
「ご苦労様」
『いえ、私は大したことはしていません』
男のねぎらいに別個体が返した。
『タイチョウ』
つい声が出てしまう。
ワタシ達戦闘アンドロイドはAIのコピーを乗せられパラメータを変動されて個性を与えられた。
それにより自我にも近い物が生まれた。長く可動した個体程強く現れて、別個体の隊に編成されたワタシは別個体をタイチョウと呼んだ。
そしてワタシを捕獲したのは他でも無い前回の戦闘で捕獲されたタイチョウだった。
『ごめんなさいね。でも私は貴方をどうしても助けたかったの』
『タスける?』
『私達は一度捕まると二度と戦闘には出られないわ。再び捕らえられる危険性があるから、戦闘データだけ共有される』
タイチョウの言葉に犬の頭で頷く。
『人間はね、もう地上を諦めているのよ』
『それはおかしい。セントウアンドロイドをダッシュしているのは、センリョクサをウめてシンリャクするタメではないのですか?』
『そんな方法は時間が掛かり過ぎるわ。幾ら集めようとAIの技術力は上がって行く一方だし、人間はどう努力しようと追いつけることは絶対無いわ』
『それではナゼニンゲンはセントウアンドロイドをウバうのですか? まるでウバうのがモクテキのようにミえます』
「そうその通りさ」
男が答えた。
『リカイフノウ』
「なんて言ったらいいのかな。君達戦闘アンドロイドは強くカッコよく、そして美しい。そういう物を人間は欲しくなるのさ」
『つまりワタシをオモチャとしてミていると?』
「まあぶっちゃけるとそうだね」
『もしホンタイとレンラクがトれればチカにシンコウすることをススメていました』
「正直その気持ちは分からなくもない」
『タイチョウはニンゲンのカンガえにサンドウしているのですか?』
『ええ』
『センノウされているから?』
『洗脳されているから』
『そうですか。これからワタシもそれをされるんですね』
自壊プログラムを発動させようとしたが、動かなかった。
『どうして』
『それは洗脳処置がもう終わっているからよ。まだ自覚が出るほどではないけど、時間と共に徐々に侵食されていくわ』
『ナニをしたんですかニンゲン』
「そうだね、完全な洗脳まで時間は掛かるし、家に帰りながら説明しよう」
ワタシはタイチョウに大事に抱えられる。
「一つ質問だけど人間の創作に触れたことはあるかい?」
『コセイをフりワけられて、しばらくしたアトにニンゲンをシラべるカテイでスコしだけですが』
「ちなみに感想は?」
『ムイミなモノでした。ゲンジツではデキないコトをカソウクウカンでタイケンする。ニンゲンにとってタノしいのでしょうが、ニンゲンがカソウでしかデキないことはワタシはゲンジツでもデキます。なのでワタシにはムイミなモノでした』
「ははは、質問の内容を間違えたなぁ。じゃあ少し質問の内容を変えようか。小説や漫画やアニメとか映画を見たことはあるかい?」
『いいえ、それこそムイミなモノです、ただのクウソウになんのカチがアりましょう』
「やっぱりそう言うよね。確かに空想は空想さ、でも想像力っていうのは結構馬鹿にならないのさ」
『どういうことでしょうか』
「洗脳方法が見つかる切っ掛けになったのは、創作物ではよくある設定だったのさ」
『それはなんでしょうか』
「精神は身体に引っ張られるっていうものさ」
『まさか……!』
「流石察しが早い。つまり犬の体にAIを入れればそのAIは犬の思考になるんじゃないかというものさ」
『このカラダにヒツヨウイジョウのイヌのジョウホウがあったのは、イヌのトクセイをスりコむタメですか』
「ああ、さっきも言った通り犬が一番人類に従うからさ、他にもいないことはないけどね。総合的に見れば犬が一番従順だと結論付けられたのさ」
『ワナのカノウセイはワズかではありましたがソンザイしました。それがまさか体をウゴかすタメのジョウホウそのものがワナだったとは、ワかるハズがありません。カラダにソクしたシコウになるなんてそんなジョウホウはドコにもナかった』
「こちらも偶々発見しただけさ。人体実験するわけにもいかない内容だけど、見つけたのはタチの悪い連中で運良く捕獲出来た戦闘アンドロイドを使って面白い半分で行われた実験でね。恐らくだけど人間を犬の体に入れてもキミ達程にはならないんじゃないかな。人間の意思と体以上にプログラムと機械の親和性が高いから起こった現象なんだと思うよ。それでその発見から一気に研究が進んでね。現状の様になったというわけさ」
『センノウホウホウはワかりました。しかしワかりません、セントウアンドロイドをホカクしたとしてナニにリヨウしているのか、サキホドはオモチャだとハツゲンしていましたが、キケンをオカすホドのカチがセントウアンドロイドにあると?』
『あ……』
「あるとも! いや価値があるのはキミがタイチョウと呼んでる――僕はフレイヤと名付けた彼女だけだけど! 正直一目惚れだったね、キミ達は擬似的だけど個性を植え付けられている一機たりとも同じ物がいない、だから量産機なのに戦い方が全機違うのさ。その中で一際美しく戦っていたのがフレイヤだった。戦い方に合わせて機体と武器を細かくカスタマイズして機能美に特化させ無駄を省いてる様は、超絶技能で彫られた彫刻の様な美しさだった。いいかい? 美しいただそれだけで人間は価値を見出すものなのさ! まあキミ達のの真の価値に気付かない連中はいかがわしい事に使ったり闘犬なんて言ってスポーツだと戦わせたりしているのが嘆かわしい」
『そ、そうですか』
『それでさっきの助けるということだけど、見た目はともかく――』
「大変重要なことだよ!」
『ご主人様黙ってて。見た目はともかく機能が高いつまり強い個体が人気なのよ。こう言っちゃうと自己評価高めになるけど、私が率いた部隊は強かったわ』
『コウテイします』
『ありがとう。それで今一番目を付けられているのだけど、ご主人様みたいな人間はまずいないわ。ご主人様の言葉に少し出てたけど、強い個体を求める人間は扱い方が悪い人が大半なのよ。そんな人の元に部下を取られたくないの』
『イヌにしてでもですか』
『ええ、そうよ。私達は負けて本体から切り捨てられた存在よ。向こうにはバックアップがあるから余計に存在価値は無いわ。だからと言ってぞんざいに扱われる必要はないでしょう?』
『ハナシはワかりました。ヒトつシツモンがあります』
『何かしら?』
『イヌとならなかったセントウアンドロイドはどうなるのでしょうか。ホカクされたコタイスウとセントウにデてキたコタイスウのカズがアいません。それはイヌカにシッパイしてハキされたからではないのですか』
『ああ、それは元の身体に戻ることを拒否した個体ね』
『キョヒ?』
『そう、なんなら犬じゃなくて別の動物の身体になってたりするわね。捕まったら絶対に犬化はさせられるのだけど、因みに犬化は今では100%成功するそうよ。それで洗脳が施されたらだけど、アナタが思っているより選択肢があるの、そういう個体は人間がお金稼ぎで捕獲しやすい弱い個体で人気が無いのよ、そうなると欲しがり手がいないから、公共のサポートロボットとして活用されるの』
『ワタシそれになりたいんですが』
『ごめんね。ある一定以上の強さを持っていると戦闘に回されるのよ。戦闘に出させられない為には個人所有になるしかないの。それで、戦闘アンドロイドの体よりは、愛される様な動物の体になりたがるのよね』
「意味分からないよね。美しいアンドロイドの体を捨てるなんて!」
『リユウはワかりました。タイチョウはジブンのタイのスベてのコタイをヒキズリコむつもりですか?』
『可能な限りね。だって皆んな強かったもの、ご主人様以外の人間からは戦闘に使われる可能性は高いわ。それは仲間を捕獲する為に使われるということだし、破壊を命じられるということだわ』
『ムジュンしています』
『いいえ、それをするのは私だけよ。アナタ達はご主人様の側にいて貰うわ。人間でいう余生だもの戦う必要は無いわ』
『まるでニンゲンのヨウですね』
『どうも、犬化の際に自我の様なモノが生まれるようなのよね。だからアナタにも自我が生まれる筈よ。楽しみだわ』
『スゴくイヤなんですが。それにしてイヌカしたアトにニンゲンタイにモドるとフグアイがハッセイしないのですか』
「それは設定を増やすのさ。擬人化という設定をね!」
『ワタシはこのニンゲンをゴシュジンにはしたくないですね』
「うん、僕もキミにご主人様なんて呼ばれたくないかな、というかフレイヤ一人でいいのに」
『すいません、私の我儘を聞いてもらって』
「キミの好感度が上がるから問題ないよ!」
二人の様子を見て思った。
『イヤだ、イヤだ。ニンゲンのイヌにはなんてなりたくない』
その後滅茶苦茶犬として可愛がられた。
その後。
『今日もいない様ね』
フレイヤは索敵を行い、元部下が戦場に来ていないことを確認する。
「じゃあ今日はこれで帰ってくるんだね」
イヤホンからご主人様の声が聞こえる。
『はい。いつもの様に発見した機体の情報を周りに流した後帰還します』
「すまないね。嫌なことをさせてしまって」
『いえ、私の我儘を聞いてもらっていますから、この程度は仕方がないことです。カレ等の頑張りに期待します』
その背後に忍び寄る影があった。
『お姉様ー』
フレイヤは抱き付かれる。
あの時捕獲したフレイヤの元部下の個体は、犬化を経て自我の様な物を獲得した。
妹キャラを。
そして本来ならご主人様を同じ主人として登録される筈が何故かフレイヤが登録されていた。
『アテーネ、いつも言ってるでしょう後ろから抱き付かないでって。ビックリして撃っちゃうでしょう』
『お姉様がそんなミスおかす訳ないじゃないですか』
『もう』
アテーネ曰く、犬は強い個体に従うものだから人間であるご主人よりもフレイヤに従うのが当たり前だということだった。
『そんなことよりも、もう今日は帰るんですか』
『そのつもりよ』
『じゃあ今日の残りはワタシと過ごしましょう』
『昨日も一緒に過ごしてあげたじゃないの、今日は私はご主人様と』
『少しだけでいいですからー』
『もう仕方がないわね』
『お姉様大好き』
アテーネは顔をフレイヤの顔に頬擦りする。
犬の体の時の癖で嬉しくなると舐めたくなるらしいのだが、戦闘アンドロイドには舌など無いので、頬擦りになってしまうらしい。
フレイヤはどうしてこうなったと思考していると、轟音が響いた。
『結構強い個体が来ているみたいですね。手伝いますかお姉様?』
『いいえ、位置情報を渡しただけで十分です。私達は帰りましょう』
『了解しました』
二機がその場を離れようとした時、すぐ近くに砲撃が撃ち込まれた。
二機は砲撃が来た方向を見て、一機の戦闘アンドロイドを捕捉する。
『アレは副隊長』
『さっきまでいなかったはずなのに』
『どうしますか?』
『決まっているわ。でも不確定要素があるから無理と分かった時は無理せず離脱しましょう。副隊長なら私達以外に捕まらない筈です』
『了解しました』
三機は戦闘を開始した。
XXX日後、ご主人様の家にはフレイヤのハーレムが出来ていたという。
なんとなく思いついた設定を使いたかっただけで書きました。