これはただの始まりの物語
初心者ですがどうしても昔から考えていたファンタジー物の復讐劇を書きたくて投稿しました。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
ゼイオン大陸の最北端に死の森と呼ばれる大森林がある
大森林と言っても本当に緑の木々があるわけでは無く代わりここでしかお目にかかれない謎の紫色をした木?のような物が生えている。
御伽噺によれば遠い遠い昔は緑豊かで平和は森だったそうだが遠い昔あたりに「氷神の使い」はたまた「コキュートスの魔王」などと畏怖された魔王級の魔獣が出現(理由もどこから出現したかも不明)し一瞬で死の森へと変わったらしい。
冷気を操るその魔獣に世界が滅ぼされると思われたが当時いた大魔術師と呼ばれるクラスの魔術師達の多くの命と引き換えに封印に成功したらしい。
だが封印されてもなお封印から漏れ出す僅かな魔力がこの北の森を常に-40度以下かつ吹雪がやまない死の森たらしめてるそうだ。
まぁよくある御伽噺である。
俺はそんな森に一番近い街「ギリアン」に滞在していた。
紹介がまだだったが俺の名はハル。
両親と妹の仇を探し出し必ず殺す事だけを目的として世界中を旅しているただの冒険者だ。
この冒険者でも余程のバカか恐ろしい程の実力者くらいしか立ち寄らない街に来ている理由は他でも無い、復讐対象である「奴」らしき情報を得たからだった。
辿り着いてすぐに酒場宿で情報を集めると案外あっさりと「奴」の情報は手に入った。
どうやらここ数か月の間に週に1度はこの酒場に顔を出しているようだった。
だが実の所、その話を聞いた時点で今回もハズレだと感じていた。
というのも「奴」がごくごく普通に酒場に顔を出し飲み食いして帰って行くというのが想像できなかったからだ。
「奴」の名は知らないが会ったのは7年前。
肩に黄金の竜の刺繍の目立つ赤いローブを着て俺の村に来た「奴」。
ただ歩いてるだけで心臓が握り潰されるような異様で圧倒的な魔力を隠そうともせず絶望的ともいえる恐怖を振りまき…そして俺の両親と妹を含む村人全員を殺した。
俺以外誰も助からなかった俺が殺されなかった理由は分からない。
だが最後にじっと俺を見下ろしてた金色の瞳を俺は忘れない。
そして生き残った俺は師匠と出会い…と危ない危ないクッソ長い回想に入る所だった。
気をとりなおして現状は他に情報は無く、急ぐ理由も無いためにそいつが来るのを待っていた。
そしてこの街に到着して5日目にしてようやくそいつはここに来た。
ローブ姿のそいつは目深にフードを被っていて顔は見えなかった。
が、情報通りごくごく普通に店主に酒とステーキを注文しフードは取らないまま食事を楽しんでいるようだった。
その雰囲気からして間違い無く「奴」では無かったのだがローブの肩にある黄金の竜の刺繍を見た瞬間、「奴」と無関係では無いと確信した。
食事を済まし休んでいる所を見計らって声をかけた。
人間満腹かつ酒まで飲んでいるとあれば口も軽くなるものだ。
「やぁ魔術師さん、あんた何やら高尚そうな文様のローブを着ているけど有名な魔術師様なのかい?」
男は30代前半くらいの痩せ方で神経質そうな顔をしていた。
「馴れ馴れしいな何だお前は?確かに私は一流の魔術師を自負しているが冒険者風情が気安く声をかけてくるな」
少しイライラしたように男は吐き捨てた。
「お、いいね俺が冒険者だとピタリと見抜く良い観察眼だ。確かに気安かったのは詫びるけど俺は今まで一流所の魔術師に会った事が無いからついつい話かけちまった。でももしよければあんたの武勇伝や所属してる魔術師協会の話を聞かせてくれないかな?奢るからさ
」
すると男は少し気分を良くしたのか
「ふん、まぁいいだろう。俺は魔術師協会「竜の使途」所属のジョイス=アランドールだ。」
そうしてペラペラと武勇伝を語りはじめた。
大半は自慢話ばかりで参考にならなかったが2年前に西のセイントールという小国で突如として大量の魔族が出現し滅亡した事件の現場にいながら生き残ったという話からも実力の方は本物のようだった。
ただ余程の恐怖を味わったのかその話をした時の彼の顔は一瞬ではあったが疲れた老人のように見えるほどだった。
そして俺にとっての本題である「竜の使途」魔術協会の事を語りはじめた。
酔いが回ったのか話の途中で脱線しまくり協会の話が終わる頃にはもうすっかり日をまたいでいた。
彼から聞き出した情報の概要だけでいえば「竜の使途」は比較的新興の魔術師協会であまり世間に知られていない事。
主な活動は彼曰く、「遠い昔に人間と共存し、その偉大なる知識と力を与えてくれていた竜の神の復活のため世界中の聖遺物の回収をしている」との事だった。
また協会のトップは「赤の聖者」と呼ばれていて一度だけ話した事はあるが本名は不明だという事がわかった。
「赤の聖者」について語る時だけ恍惚とした表情だったのが印象的だった。
更に活動拠点についてはこの世界には無いという意味がわからない回答が返ってきた。
ひとしきり話を聞いた後、本人はそのまま寝てしまったので情報料として食事代と宿代を店主に渡し、自分の部屋に戻ってその日はそのまま眠りについた。
拠点がこの世に無いという話がどうにも引っかかったので翌朝店主にジョイスの事を聞いたが少し目を離したら姿を消していて分からないという答えが返って来た。
仕方ないので街の人々に聞くとジョイスらしき人物が朝早く死の森方面に歩いて行ったという情報を得る事ができた…しかも少女を伴っていたという。
幾ら腕のたつ魔術師でもあの森にたった子供連れで入るなど正気だとは思えない。
しかし入って行ったからには何か理由があるのだろうし何かが気になった。
俺の勘がヤバいから絶対に追ってはならないと全力で告げて来たが無視して追う事にした。
ヤバくても追わなければ必ず後悔する…そんな気がした。